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6次化やりますか?やりませんか?

6次化の波

農業を始めてからいろいろな機会で6次化というワードに出くわす。

6次化とは簡単に言うと一次産業(農業・漁業など)従事者が二次産業(加工・製造)と三次産業(流通)までを行うという考え方だ。

1次×2次×3次=6次産業 というわけだ。

6次化を行うことで、一次産業従事者のさらなる収入の増加を促し、魅力のある産業にしようということだろう。県で主催するこの手のセミナーも多い。

皆さんも、地方のお土産店や高速PA、言わずもがなネット販売で農家、農園の作る商品を一度は見たことがあるだろう。私の体感としては、今はりんご農家のシードルが流行りのようで、投資して醸造所までつくっている農園もあるというからすごい。シードル、飲みやすくておいしいですもんね。

6次化のメリット

農家が自分で商品をつくることのメリットを考えてみよう。

①新たな収益の機会

②自社ブランドの構築、ファンの獲得

③規格外品の有効活用

ぱっと考えるとこのようなところだろうか。早速①から例示していこう。商品を新しく作ることは今までの農産物だけの収入だけでなく収入を得るチャンスとなる。しかも農産物であれば、出荷の時期しか収入が得られないが加工品を持つことで農閑期にも収入を得ることが出来るようになる。農業という産業において1年間安定した収入を得ることができるということはとてつもないメリットなのである。例えば、米専業の農家であれば、収穫期に台風が来て収量が半分とか、夏場の冷害で終了4割減などというケースはありうる話だ。そのような際に別に収入源を持っているというのは大きなメリットとなる。②は、加工品をもつことで農園のブランドを作り、そのファンを作りの助けになる。ちょっと寄ったお土産屋で5kg3000円のリンゴは買えないが、1ビン500円のりんごジャムなら買えるというケースもあるだろう。おしゃれなビンに入ったこだわりジャムはお客をひきつけ、一番売りたいりんごへと誘導することに有効だろう。③は、農産物生産においてどうしても一定の割合で出る、規格外品の加工だ。傷物として売れば大した値段はつかないが、加工する手間を加えることでその何倍もの付加価値を与えることができる。農家が六次化にチャレンジするのはこの部分が大きいように思う。

6次化のデメリット

反対にデメリットはなんだろうか?

生産・販売・在庫の管理

正直、デメリットはこれに尽きる気がする。というより、これがめちゃくちゃ大変なのである。まず、生産をするのに自分でやるのか、どこかに外注するのか考える必要がある。自分で製造するにも生産設備の準備、ラベル、容器の企画、製品表示などなど初めてやるにはさすがにハードルが高い。賞味期限の設定などまずできない。外注するにもどこに頼めばよいのか、会社探しからする必要があり、生産ロット、製造価格の商談などをする必要がある。続いて販売先の確保であるが、商品を作ってから売り先を考えるということがあるが、これはなるべき避けたい。あらかじめ売り場の確保をしておく必要がある作ったが最後、売らなければすべて赤字となるのだ。また、在庫の管理も大変だ。賞味期限を意識しながら販売先に商品を出しつつ、常に在庫を確保しておかなければならない。規模の大きな小売りになるほど賞味期限のルール(賞味期限の近いものは出せない)などが厳しくなるため注意が必要だ。また、在庫が切れそうになった時に、常に原料が確保できるか、外注であればすぐに製造ラインに乗せてもらえるかなども考えないといけない。直売所レベルであれば欠品もゆるさるかもしれないが、大きな流通になるほど欠品は許されない。大手小売りの場合はペナルティーも発生する。欠品は販売チャンスを捨てるようなものなのだ。

とはいえ、すでに自分の販売チャネル、固定客を持っている人は売り先は確保しているわけだし、身近な人が製品を作ってノウハウを知っているかもしれない。新しいことにチャレンジすることは必要なことだと思う。(偉そうにごめんなさい!笑)

私は花農家なので食品などの加工品は無縁ですが、花を使った製品は常に考えている。…がそうはいっても難しい。涙

6次化のポイント

デメリットを読んでこりゃ無理だ…とビビった方。確かに大変ですが、チャレンジする意味と意義は大いにあるはず。製品を作る際に考えるべきポイントとやり方を書いていきます。

まずは、どんな商品が作りたいかを考えよう。

商品の形態としては以下が挙げられる。

①冷凍 ②冷蔵 ③常温

この3温度帯について説明すると、

①冷凍製品は加工たものを冷凍処理して冷凍した状態で販売する。メリットは素材の風味を生かしやすいこと、色がよいこと。近年、冷凍技術の向上により冷凍製品の味は格段に良くなってきている。素材のおいしさ、色味の良さをアピールするには冷凍製品にするといいかもしれない。デメリットとしては少しコストがかかることと、輸送、扱いが冷凍温度帯になるために商品の取り扱い先が対応できるかどうかを確認する必要がある。6次化製品づくりには少しハードルが高いかもしれない

冷蔵製品は素材の触感、風味、味がしっかりと残せるのが特徴冷凍製品よりも加工度が低いためより本来の味わいを伝えやすい。デメリットとしては賞味期限が短くなること、冷凍と同じように流通段階の温度管理が手間になるといころだろう。私の感覚ではいきなり冷蔵製品は賞味期限が早く商品の回転を速くしなければいけないため最初からチャレンジするには少し難しいと思う。

常温温度帯は一番取り扱いがしやすいため、まずはここから製品を作ってみることをお勧めしたい。形態としては、ビン、レトルト、ビニールパウチ、ドライなどが考えられる。これらは、加工度が高く賞味期限を長く設定できるのでとにかく商品管理がしやすい。また流通でも取り扱いがしやすい。デメリットとしては、加工度が上がるために風味、味わい、色味が失われがちになること

自分がどんな商品を作りたいのか、少しイメージすることができただろうか?まずは近くの直売所、お土産店、地元のスーパーなどに足を運んでみよう、いいヒントがあるはずだ。

外注先の探し方

では実際に製品を作ろうと考えた時に、商品を作ってくれるところをどうやって探せばいいのか。もちろんググってみるのもよいかもしれない。が、地方の小さな食品製造メーカーなどはHPをもっていないような会社も多く情報が集めにくいという部分がある。なのでまず初めに先述の通り、近くの直売所、お土産店、地元のスーパーに行って自分が作りたいと思っているのに近い商品を探してみよう。スーパーであればだれもが知る大手メーカーのブランドNB(ナショナルブランド)があって地元のメーカーの作る商品が置いてる。お土産店や、直売所にすでに置いてある似たようなライバル品の裏のラベルを見てみよう、そこには製造者が必ず書いてあるはずだ。まさにそこがあなたの求める外注先のメーカーとなる。もしかしたら、その一角にある製品はほとんど同じメーカーが作った商品の並ぶコーナーがあるかもしれない。初めて商品を作る場合、いきなり大手のメーカーはまず請け負ってくれないので、地元のメーカーさんとタッグを組むのが現実的だ。小さい会社のほうが、小回りも聞くし、製造ロット(1回で生産する量)が小さいのでいきなり大量の在庫を抱えるなんてこともなく済む。もしいくつかそのような会社が見つけられれば、1社でなく、いくつかの会社に相談してみよう。企業によって得意なところ、製造コストは違ってくるのでしっかりと自分により合った企業にお願いできるように商談することが必要だ。

お願いする会社が決まれば、あとはあなたの要望をしっかりと伝え、開発担当者とコミュニケーションをとりながら話を進めよう。価格、製造ロット、ラベルデザイン、など決める事はたくさんある。賞味期限や、裏面のラベルなどは製造先が作ってくれるのでこちらで何かをやるということはない。あとはできるだけ製品の売り先を増やしておくことだ。また、製品をつくるための原料が一定の時期にしか準備できないのであれば、あらかじめこの時期にお願いすることになると伝えておいたほうが、万が一欠品などになった時にお互い素早く対応できるだろう。

最後に

少し長くなりましたが、いかがだったでしょうか?6次化はとりあえずみんながやっているから作ってみようとか、これなら売れるだろうというだけでは売れないと思います。あなたの農園・会社とお客様との接点を増やしたり、ブランドの価値を上げるためのものだと思います。まずは小さくできることから始めてみよう。少しでも助けになれば幸いです。それではまた!

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