次世代への継承の秘訣〜陶器師から学んだ“柔軟さ”
読谷村にある、やちむんの里 北窯 にて、伝統的な焼物職人さんから、お仕事流儀をお伺いしました。
特に印象に残っている2つのことと、番外編をレポートします。
1.こだわりと柔軟性
沖縄観光ガイドブックにも掲載される「やちむん(焼物)。」
その魅力に惹かれて手に取る方もいれば、単に、かわいいからとか、せっかくだからと、とくに深い理由もなく購入する方もいます。
私も、やちむんにとても詳しいとは言えませんが、後者の方々を目にすると、
ワールドカップ中の「サッカーのルールはよく知らないけど、ブームに乗っかって、かっこいい顔の選手を応援する "にわかファン"」を見ているようで、少し切ない感覚になっちゃうんですよね。
(ちょっと毒吐きました。すみません。)
やちむんに限らず、"伝統工芸"は特に、長い歴史の中で職人さんたちの手で守られてきたもの。
だから、その作品を手にするなら、"にわか" であってはいけない… 。
…と、思っていたのは私だけでした。
__ きっかけはどんな理由でもいい。
そのことばは、私にはとても衝撃的で、感動的でした。
一応私も、ものづくり(服)をしている人間としては、特にオーダーメイドでかつ手仕事でつくり上げたものを、そんな簡単に手放して欲しくないというのが本音です。 (^^;
ブームだからと買ったはいいけど、ブームが過ぎたら手放す… ブームが去っても手放さないでねと願いながら作っていました。
だから、まして伝統工芸であれば尚更、一過性の盛り上がりで作品を買ってはいけない。…と、思ってたんですよね。
でもまさか、制作するご本人から「興味をもって貰えるなら、その理由は何でもいい」ということばを聴くとは…
驚きでした。
興味をもって貰えなければ、手に取ってもらえなければ、伝統を次世代へ継承することはできない。
だから入り口は広くていい。自分のつくりたいものよりも、人が望んでいるものをつくる。
__ 伝統を守るって、昔のことを大事にし続けることだと思っていたけど、実は今を生きる人たちにいかに寄り添うか… 伝統が守られ続けてきた秘訣は、意外にもこの柔軟さだったことに、はじめて気づきました。
__ ものづくりにおいてはこだわる。
柔軟さが伝統を守る… とは言っても、何でもありなわけではなく、そのつくる工程においてはやはりこだわり続けています。
土を掘るところから、焼き上がりに至るまで、その「技法」や「環境」にぬかりはなく、その独特な技法、持ち味… それらは決して「今風」に変わることはありません。
伝統は、昔の人が当時を生き抜いた「知恵」そのものです。
当時その地域で起こった“ある問題”を乗り越えるために、生み出された先人の知恵です。
今を乗り越える術を知るために、生き抜く術を知るために、伝統は守り続ける必要はあります。
2.弟子育成への柔軟さ
北窯には、全国から沖縄へ移住し、修行を積むお弟子さんたちがたくさんいます。
沖縄の伝統工芸だから、沖縄の人だけで繋いでいく…というわけではありません。そこにもまた柔軟性を感じるのですが、皆が同じように、こだわり抜かれた "沖縄の" 伝統技法を学びます。
その地の伝統はその地の人だけで守る、というのものまた、伝統を失うことに繋がるのかもしれいない…
そう気づかされました。
一人前になる目安は10年。はじめは土づくりや薪割りの日々…。ろくろを回すまでには何年もかかります。
途中でやめてしまう人ももちろんいるそうです…。
でも、入り口は広い。このことは、誰にでも本物をつくるチャンスはあって、学ぶチャンスはあることを教えてくれます。
次世代へ残したいものを、繋ぐために。
歴史の中で受け継がれてきたもの。失いかけそうな危機も乗り越えて受け継がれてきたもの。
それらは尊いもので、無くしてはいけないもの。
ゆえにいつしか、
簡単には触れてはいけない。
徹底的に学ばなければならない。
選ばれた者だけが扱わなければならない。
と、大切にしすぎている自分、こだわりではなく強情になっている自分に気づかされました。
伝統工芸という世界に触れ、教えられたこと。
それは、次世代への継承のためには、こだわりと柔軟さのバランスをもって、多くの人が触れることのできる機会を与えることです。
__道はすべての人に開かれています。
Let your gentleness be known to all men. The Lord is at hand. Philippians4:5
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