utoida

小説家を夢見るサラリーマン。ときどきいろいろ投稿しようかと。

utoida

小説家を夢見るサラリーマン。ときどきいろいろ投稿しようかと。

最近の記事

バッティングセンター

ッティングセンター 近ごろバッティングセンター(以下、BC)に通っている。といってもここ一週間くらいか。休みに家にいることの苦痛に耐えられず、何かできることを見つけようとした結果、昔よく行っていたBCに行き着いた。 そこは昔ながらのBCで、ピッチャーの形をした機械がボールを受けるための腕の部分を不自然に動かす。途中まではゆっくり、ボールを持った瞬間に素早く。そこでタイミングをとって打つことになる。最初に200円でコインを買い、それで18球打つことができる。前は20球打てた

    • 秋雨

      細い雨が降っている。 秋雨はいつもこうだ。朝の4時、ベランダに出てその音を聞く。家々の屋根に当たる音、アスファルトの道にたまった水たまりに波紋を立てる音、排水溝からはひっきりなしに水が流れている。 こうなることが分かっていたから昨日紫蘇の実を摘んだ。あらかた花が落ち、フレッシュグリーンを残した実をハサミで採り、一本ずつ指でこそぎ落とす。おかげで人差し指と親指には茶色い色が付着した。 ひと晩水につけてアクを抜き、天日干しして乾燥させてから醤油につける。一週間もすれば食べごろにな

      • 少しだけ

        雨の日の帰りの地下鉄、かすかにバターの匂いがする。自分のムッとする体臭と湿気を多分に含んだサラリーマンや学生の体臭をかすめて、微かに漂ってくる。どこからかは分からない。しかし、それを持っている人の仄かな幸せを思うと、自分も幸せになる。少しだけ。少しだけ。

        • パンパンパン

          久々に飲んだ。 上司が異動するので送別会を開いたが、3人だけの小さいものだった。 ひさびさに深夜の電車に乗った。 いろんな匂いがする。アジアンなお香の匂い、腋にたまったムッとする匂い、化粧と汗の入り混じった匂い。 隣で男女が仕事の話をしている。 男が先輩で女が後輩のようだ。 話は尽きない。何を話しているか分からないが、女は時折、手を叩く。 ベージュのマニキュアが映える。 女は話しながら爪が男に見えるようにする。そういう癖なのか、意図しているのか。 細く、美しい指をして

        バッティングセンター

          今日の体重(体操おじさん)#58

          84.3kg 通勤途中に駐車場があって、そこで毎日体操をしてるおじさんがいる。 股下ほどの高さのポールの上を片足で立ちながら上げている足の腿下を通るようにグルグル回している。5回ほどするとキツいようで、ああぁーっ、と言いながら足をつく。 駐車所と歩道を分かつ横断防止柵に手をかけて腕立て伏せをしている。近づくと、これみよがしにああぁーっと言いながら苦悶の表情を浮かべる。 必死の形相で腿上げをしている。 バットで素振りをする。 防止柵の上に下腹部を支点にして海老反りにな

          今日の体重(体操おじさん)#58

          今日の体重(空を超えて)#57

          84.8kg 朝起きるとアラームの3分前だった。 結構シャキッと起きれたのだが、体が冷たかったので布団をかぶって二度寝モードに入った。 おそらく、すぐに寝入ったのだろう。夢の中で鉄腕アトムの歌をうたっていた。 タタタタ、タタタタ、 伴奏から入る。 空を超えて ラララ アラームが鳴った。 もう少し歌わせてくれてもいいのに。

          今日の体重(空を超えて)#57

          今日の体重(ケータイをしまい、外を見よう)#56

          84.9kg 長い通勤時間を利用して本を読むのが日課になってきたが、こないだの帰りはその気持ち湧かないくらい体調が悪かった。 風邪とか体の疲れとかいうことではなく、なんのやる気も起きないような状態に陥り、とうとうTwitterも閉じて携帯を握りしめて外を見始めた。 なんの変哲もないというか、高層ビルはないが、工場が立ち並んでいるので殺風景で夕陽があたってオレンジ色に輝いているのにあたたかみを感じない。 何か考えなきゃと、おもしろそうな看板や変な人を探すも、まったく集中

          今日の体重(ケータイをしまい、外を見よう)#56

          今日の体重(スマホの整理)#55

          86.2kg ぼくはiPhoneをずっと使用しているが、アプリが消しても消してもなかなか減らない。 まずは、ゲームだった。 初期のころはあまりゲームをやらなかったが、段々と深みにはまっていった。 黒猫のウィズがいちばんはまったと思う。足掛け5年くらいプレイして、いまは放置状態になっている。 ほかにもパズルやら数独やらダウンロードしては、時間の無駄遣いに嫌気がさして削除した。 SNS以外でいちばん長く利用しているのは青空文庫だろう。これは宝の山だと思う。とか言いながら

          今日の体重(スマホの整理)#55

          今日の体重(異様さの正体)#54

          84.9kg 電車に乗ると、マスクをしていない人がひとりだけいた。 中年の女性で吊革を持って静かに立っていた。車両にマスクをしていない人は他にいないようだった。 数人がチラッと見やって、苦虫を噛み潰したような顔をした。 ぼくらは、人と違うことに違和感を覚える。 紺碧の海に赤褐色の屋根、白い壁の家々が立ち並ぶアドリア海の街に、緑色の屋根を持つ家があったら異様さを覚えるだろう。 一軒家が立ち並ぶ日本の田舎町に緑色の屋根を持つ家は珍しくない。この例は、条例などで色を規制

          今日の体重(異様さの正体)#54

          今日の体重(父方の祖母〜おてんとさま)#53

          84.5kg 祖母の学力は、日常生活のレベルでは十分すぎるほどあった。商売をしていたので数字には強く、文字も書けるし、漢字も分かる。読解力もあったし、農業に従事するようになると、スケジュール管理も肥料の配合も、とにかく生きることや生活することに必要な能力は十分備えていた。 しかし、祖母の口癖は、わたしはガクがないから、であった。 小さいときのぼくは、ガクというものは、学校のテストでいい点をとるものであり、それができない人はガクがない人という短絡的な方程式のなかで生きてい

          今日の体重(父方の祖母〜おてんとさま)#53

          今日の体重(母方の祖父〜早朝の小鳥)#52

          86.1kg ぼくは生まれたときにすでにお得な家庭にいた。父は車で1時間くらいでいける田舎に実家があり、お風呂は釜で炊き、祖父は畑で野菜を育てていた。 母は北海道に実家があり、冬はスキー三昧で夏は涼しい夕方からBBQをよくしていた。 すでに4人の祖父母は他界しているが、今でも家は残っているので遊びに行くこともある。 北海道の祖父は優しい人だった。母から言わせると、かなりこっぴどく躾けられたようで、孫への態度の変わりようにびっくりしていたようだった。 ぼくの父も負けず

          今日の体重(母方の祖父〜早朝の小鳥)#52

          今日の体重(紗幕の車窓から)#51

          84.6kg 通勤ルートを少し変えたら、途中から座れる幸運を得た。 スマホで本を読んでいたが、ふと、外を見ると、西側なのに紗幕がかかっている。 どうも、JR東日本では、側カーテンと呼んでいるらしい。 紗幕に近づきすぎると外は見えづらくなる。 紗幕から少し離れるとまた見えなくなる。 朝の柔らかな光が紗幕によってさらに優しくなり、このままずっと乗っていたくなる。 どこかに行きたいと願うよりも、この平和な光景を見ていたいと思う。 電車はぼくをある地点からある地点まで運ん

          今日の体重(紗幕の車窓から)#51

          今日の体重(はちじゅう)#50

          86.2kg 少し残業をした。まだその時間に帰ることに慣れていないので、帰り支度をして会社を出るまで、次の電車が何時間わからなかった。 調べてみると、13分後に新快速がくるようだった。 会社から駅までは普通に歩いて15分、ほとんど信号はないが、少し余裕を持っていきたい。 こんなとき、ぼくは数をかぞえながら歩く。 だいたい100を数えて指を折り、次は1から始めて200に至るともう一本指を折る。 この100はどれくらい正確かというと、だいたい90〜110くらいである。

          今日の体重(はちじゅう)#50

          今日の体重(戦後と歴史のはじまり)#49

          88.1kg 小さいころ、昔の人は白黒テレビやモノクロ写真のように世界が殺風景に見えていたと思っていた。カラーテレビの出現は相当画期的なことだったのだと。 まあ、そうすると、たしかにすごい革新である。たかが電化製品が人間の知覚を決定づけるというこれ以上ない発明だ。 同様に、歴史は戦後から始まったと思っていた。江戸時代や卑弥呼などの単語は知っていたが、それは恐竜時代のもので、生きとし生けるものすべてが死に絶えた日本において、戦後まもなく人が住み着き、田畑を耕し、製鉄所を作

          今日の体重(戦後と歴史のはじまり)#49

          今日の体重(ふたりだけの放課)#48

          86.3kg 小さいころ、家から少し離れたところにある保育園に通っていた。姉がそこに通っていたからで、生まれて数ヶ月で通い始めた。 小学校は地元のところに通ったため、友だちがほとんどいなかった。唯一、A子が保育園からの友だちだった。 A子はいつも鼻をたらしていて、よく泣くし、人見知りなところがあった。同じ団地に住んでいたから、そういう意味でもぼくらは近しい存在だった。 ぼくは小学校に入りたてのころ、放課の時間(名古屋特有の言い方らしいですね、授業と授業の合間のことです

          今日の体重(ふたりだけの放課)#48

          今日の体重(手すりを磨く)#47

          85.2kg 初老の男性が電車のドアの前に立っている。スーツ姿ではなく、フランネルのカッターシャツにスラックス、ウィンドブレーカーを羽織っている。 ドア横に着いた縦型の手すりを執拗に指で擦っていた。 手すりは、ドア枠に接地している部分からドア方向に45度傾けて5cmほど突っ張っている。そこから下方向に細く曲がり、太い円柱が伸びて手すりとしての機能を果たしている。 彼は下方向に曲がったフラットな部分を執拗に擦っていた。 分かる、と思った。 ほぼ無意識なのだが、その部

          今日の体重(手すりを磨く)#47