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私 心の内
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【詩】十二月の瞬き

暖かさ香る イルミネーションに ほのかに心が振り向いて 離せない目に 寒さが積もる 瞬き始めた十二月 時の速さに引かれる手 自分で進んだ時間なら 自分で灯せたはずなのに 今はただ賑わう街を 眺めるだけ そっと静かに 眺めるだけ 掌に乗るくらいのツリーでも いつか自分の光で灯せたなら

【詩】絵の中

一面彩る秋色の中 少しひと息つきたくて 道から離れ そっと絵の中に入り込む ここからは あちら側はあわただしくて ゆるりと舞う落ち葉さえ 振り向かれずに 秋を降らす 歩き疲れたら そっとこちらで 休んでみる すぐに見つかってしまうけれど 時は中々待ってはくれないけれど

【詩】今日の朝

空が朝の寒さを吸い込んで 筆の跡さえ見えそうな 澄んだ青で染まっている 小さな私の窓からは 小さな私の心では 見渡すには 大空は広すぎて 青空は無垢すぎて 心の鍵さえ見つかれば 窓を開けることもできるかな 私が私らしさを見つければ 窓を大きく出来るかな 今日の重さを持て余しつつ カバンを手に取り家を出る

【詩】花

揺らめく蝶に誘われて 小さな花に挨拶をする 一人で咲き 一人で散りゆく その清々しさに 私を好きになれたなら 今が愛しくなるのかな 私を分かってあげられたなら 今が幸せと思えるのかな 道脇で誇る花のように 私は私でいいと 潔く思いたい

【詩】坂道

不安げにうつろう足跡は 私の心の揺れの跡 坂道に残るため息が 振り向く私を眺めている 心の通りに歩くには 笑顔だけでは進めない 我慢だけでも進めない それでも続く明日なら 今日までの私を 涙の雨で流して消して 明日は 坂の向こうの空を見上げて

【詩】紫陽花通り

雨が弾けて滲んだ 紫陽花の 色とりどりの慎ましさ しっとり映える雨空に 濡れて増す美しさに 濡れて増す寂しさが 羨んでは降り続く 傘は一人を思い知る 雨音がすべてを遠ざけて 傘は自分を思い知る 涙声だけ心に響く 紫陽花通りを抜けていく 今日も一人抜けていく

【詩】言い訳

止んだ雨の静けさに 鳥の声が明るく響く 街の動き出す気配が 私を取り残していく 時間を 持て余している時は 心を 持て余している時 それでも 少し重い気持ちも 少し疲れた心も 全て私のものだから 置いていはけないものだから 雨の言い訳ももう終わり

【詩】そんなふうに

初夏の風が 私を通り抜けていく 新緑の香りを残して 心の中を過ぎて行く 両手を上げて 背伸びして 心も一緒にほぐしては ため息をそっと放り出す 私を私のために過ごすこと 簡単そうで難しい 私を私が思うこと 出来そうで難しい 騒がしい日々の中 せめて休日くらいは そんなふうな私でありたい

【詩】心の隙間

肌に絡まる湿っぽさ 明日の雨を予感する 昼間の暑さが溜まったまま 風の声も無く 動かぬ空気が 静けさばかり連れてくる 心の声が響いては 心の隙の寂しさを 飲み込み飲み込み 沈め行く 胸が詰まるこんな夜 過ごすごとに強くなる 過ごすごとに弱くなる 私と向き合えない私が 灯りの下でただ一人

【詩】スカート

風に彷徨う雨粒が 足元に絡まって スカートの裾を 冷たくする 濡れると 知っていながらも 濡れた心で 過ごす今日を せめて お気に入りで着飾って 心も笑顔で着飾って 一日を立ち続けられたなら きっと明日は今日よりも 私を好きになれそうで

【詩】輪郭

木陰に集う風の中 佇めば涼やに なびく枝葉が 心に風を伝えていく 軽くなっていく息遣い やわらかくなる笑顔 久しぶりに会う私 自分でいることの自然さと そうでないことの不自然さ 騒がしい日々が 私を曖昧にしていく 見失わないように 時々こうして 私の輪郭を取り戻す

【詩】今の私は

ふいに出会った景色が あの頃を映し出す 誘われるままに立ち尽くす 昔色が込み上げて 懐かし色の衝動が 私を覆い染めていく 過ぎた思い出に 焦がれているのか あの頃の私に戻って やり直したいのか 流れ出した涙の意味は どちらの思いなのでしょう

【詩】陽だまり

廊下に浮かぶ陽だまりが 樹々の影に揺らめいて 瞬く光をなびかせている やわらかい陽の色が 昔色にいざなわれ 誘われるまま目を閉じる 無邪気を無垢とよび 全てから守られていた 夢が夢であった頃 私が私であった頃 今はもう心の中にしかない 幼い頃の情景に 心が一瞬旅をした

【詩】今日の終わり

終る今日の切なさを 静かに夕日が燃やしている 染まる色は 過ぎ行く時を映し出す あの空のように 精一杯 今日を私は生きただろうか あの陽のように 戻らない時を 今日に刻めただろうか いつか思い出せるほど 今日を大切に出来ただろうか