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夕暮れ~夜

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夕暮れ~夜 思いにふける
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【詩】片想い

静かな夜は長い夜 部屋に漂う沈黙が 隠したはずの 小さな声を拾っては 想いを形にしてしまう 届けられない温もりに 零れた涙が流れ込み 想いを溶かそうとするけれど 夜はまだまだ続くばかり 一晩中 尽きない時間と 尽きない想いに 私が私に驚くばかり 募る想いに 驚くばかり

【詩】月の涙

みぞれに空が滲んでいる 白い雪を濡らすのは 照るはずだったの月の涙 冷たさよりも切なさが 私を忘れた私を覆う 泣いていいのだと 泣いて見せる 涙は心が詰まったもの 流れて初めて重さに気付く 軽くなった心から 感情が流れ出す 私が溢れ出す もうしばらく月に濡れていたい

【詩】夜の雲

夜の雲が 街明かりに照らされて 空を白く描いている 一つ二つと数えては 想いが連なり夜に舞う 一つ二つと流れては 届かぬ想いが夜に揺れる 今日も長い夜だとしても 私が私を見つめれば 迷い道には迷わない 想う自由は私のもの そっと心に力を入れて 目を瞑る

【詩】星空

夕暮れに 浮かび始める街並みは 化粧をしたように華やかで 眩しさを少しずつ 受け取りながら すり抜けるような 帰り道 陽が落ちたら 夜空の時間 集めた光を心に灯し ここに居るよと上を向く 目が合う星を探してみる 私らしく瞬けば 誰かがきっと気付いてくれる 私が私を信じれば 誰かがきっと見つけてくれる 空は広く 星は数多に

【詩】見上げる夜景

小さな空にかかる靄 夜空を白く浮かばせて 誰かの皆の溜息のよう 探す月は 遮るビル達のその向こう それでも 目を細めるほどに 瞬く灯り それだけ 誰かが今日を生きてる灯り だから 見上げる夜景は切なくて 心震えるほどに暖かい

【詩】月の場所

優しさが降ってくる 見上げれば 月の光が流れ込む 心にそっと流れ込む きっと 月は知っている 今日の影も 明日の不安も 何もない 今日と明日の間の場所 きっと 月だけが知っている 今日の私も 明日の私も 何処にもいない 私だけの私の場所 せめて満月の夜だけでも 溢れる光に酔いしれて ふと願ってしまうそんなこと

【詩】長い夜

静けさの中 灯りの僅かな揺らぎに 進み往く夜を知る 心と気持ちが向かい合い 狭間で私は流れるばかり どちらも私 長い夜 折り合いに背を押され 朝を始めるまでは 私の声を聞いてみる 私の思いを聞いてみる そんな夜があってもいい

【詩】車窓

紫の空色が 陽の終わりを見送りながら 静かに夜に紛れていく 流れる景色に 過ぎる時を見るような 揺れ始める街の灯が 手に取れそうに暖かいのは 潤むように眩しいのは 心が灯しているからと 生きているひかりだからと 自分にもあるのだろうか 車窓に重なる私の顔が 羨ましそうに眺めている

【詩】街

見知らぬ街で 見つけた夕陽が 街並をやさしく覆い 静かに今日の終わりを告げている 見とれる中に湧く心細さは 帰るべき街への慕情からか そっと暮らしているだけの 有るような無いような そんな心許ない居場所でも いつしかあそこが私の街 まだ僅かな軌跡でも 私の足跡が残る街 帰ろう

【詩】秋の夕暮れ

秋の陽が 黄昏色に傾いて 駆け足で 今日一日が閉じていく 良いことだけを持ち出して 良い一日だったと見送るも こっそりと付いてきた 私色の淋しさが 空を心を染め上げていく 良い日だったと見送るも 佇む涙を 拭うことも出来ぬまま

【詩】月明り

潤む月が眩しくて 目を閉じれば溢れ来る 涙の粒を持て余す 無数に瞬く人の灯を 必死に瞬く人の灯を 見ている月の切なさが 月明りの美しさ 今日も人恋しさに月を見る

【詩】秋のはじまり

夜の足音が早くなり 背中に駆け寄る帰り道 肌を抜ける涼しさも 心に届くと寒くなる 見上げた月の静けさが さらに心に降り積もる 長い夜に途方に暮れる いつもの秋の始まりに たじろぎながらも ただいまと 暗い部屋に笑いかける すぐに慣れると 笑いかける

【詩】満月

陽の落ちるのが早くなり 残暑の中を三日月が 駆け足の夏を見送っている 時に月の形を忘れるように 見えないものを見ることもなく 本当の私を誰も知らない 本当のあなたを私は知らない 満月があるように 私のすべてを照らしてくれる そんな誰がどこかにいると 心で丸い月を見ている

【詩】お疲れ様を

とぎれとぎれの夕焼けが ビルの間を染め上げて 今日の終わりを告げて行く 一日を 背負い終わった後ろ姿が 波のように流れ出す ここにはない 私にはもう見えない そんな背中を探しては 二度と言えないお疲れ様を 真っ赤な空に燃やすだけ せめてあなたの夕暮れを 少しでも彩るようにと