見出し画像

能登で暮らしたはなし ④能登の生活 休日編

自分の能登体験を発信することで、能登の関係人口を増やし、間接的に能登の復興を手助けすることを目指しています。

最初のはなしはこちら。

マガジンにまとめています。

インターンは週休5日制。
土日は基本的にお休みだったので、初めて足を踏み入れた「能登」という場所を自分なりに楽しんで過ごしました。
七尾周辺のおすすめスポットを中心に紹介します。

尺が長くなってしまったので、目次をみて読みたいところだけ読んでいただければ。

のと里山里海ミュージアム

七尾で暮らし始めて1ヵ月ほどたった頃だろうか。
確か御祓川の社員の方と夕飯を食べにいった際、行った先の店で近所に住んでいるというお姉さま(マダム)に遭遇した。
自己紹介をすると、
「来たばっかりやったら『のと里山里海ミュージアム』知らんやろ?連れてったる!
日曜日の10時にうちに来たらええわ。あっちゃんが場所知っとるから!」
と、突然のお誘いをいただいた。

ずいぶんとお酒をお飲みになっている様子だったため、初対面の相手をそんなふうに誘うなんて、酔った勢いかしら?と思いつつ、帰ってあっちゃんに伝えると、あっけからんと言われた。
「○○さんな!ええなぁ、うちも行くわ!」
私が知っている「お出かけの約束」の取り付け方とは大分違ったが、七尾ではこれでいいらしい。
いや、七尾全土がこれでオーケーかは保証できないが、とりあえず御祓川界隈ではこんな感じのアポイントが多かった。

約束通り日曜の10時にご自宅を訪ねると、
「はいはーい。少々お待ちくださいね。」
お酒を召し上がっていたときと大分雰囲気が違うように感じたが、約束は覚えていたらしい。
あっちゃんもろとも車に乗せて、ミュージアムに連れて行ってくれた。

ミュージアムは立派だった。
能登の里山里海の循環システムや、能登の方々が大切にする祭りの文化、伝統技術など、わかりやすく展示されていて、予備知識のほとんどなかった私にはとても興味深い内容だった。

目玉の展示は、国指定重要無形民俗文化財とユネスコ無形文化遺産に登録されている七尾の「青柏祭」。
地域ごとに、高さ20メートル、重さ20トンにもなる「でか山」をひき、七尾の町中を歩く。
車輪の大きさだけでも私の背丈よりも大きい。

インターン当時の写真。若い…

これを手作業で作り、何台も何台も連なって町中を練り歩くわけだけだから、その様子は圧巻らしい。
能登の人たちはとにかく祭り好きだ。春から夏にかけた祭りの時期になると、いつもどこかから祭囃子が聞こえてくるという。

とりわけ青柏祭は格別だ。
七尾の人たちは、青柏祭に命をかけているといっても過言ではないくらい、1年中青柏祭の話をするのだ。
青柏祭は毎年5月に開催されるため、9~12月がインターン期間だった私は体験できないものだったが、展示をみて、「必ずもう一度七尾に来よう」と心に決めた。

震災後、七尾でお世話になった方々の間で「今年も青柏祭を決行しよう」という活動があった。
大変な状況だからこそ、七尾の誇る青柏祭で元気になろう、立ち向かおうと。
しかし、でか山順路の道路状況や組立時・開催時の余震による事故のリスクなどを踏まえ、令和6年度の青柏祭は中止が決まった。

私はまだ青柏祭を経験していない。
もう一度でか山が曳かれる日には、七尾に行きたい。

一本杉通り

七尾駅前通りを歩き、御祓川に架かる赤い橋を渡るとそこは「一本杉通り」。
「花嫁のれん館」や「高澤ろうそく店」、「一本杉 川嶋」など、七尾が誇る名店が軒を連ねる。七尾の一大観光名所。

株式会社御祓川が運営する「御祓川大学」のメインキャンパスである「banco」は、一本杉の入り口に位置する。
コワーキングスペースとしての機能もあり、能登留学生のデスクワークの場にもなっている。
そんなわけだから、能登留学生にとって一本杉通りは庭のようなもの。
一本杉の店の方々も、時期ごとに来るたくさんの能登留学生を歓迎して受け入れてくれ、いつも温かい雰囲気が漂っている通りだった。

一本杉通りには古い建物が多かったこともあり、震災によって壊滅的な被害を受けた。
震災直後の一本杉通りを映した映像を見たときには涙が止まらなかった。

被災した一本杉通り。
「一本杉 川嶋」さんのFacebookより

通りの店舗はほとんどが取り壊しになる予定だけど、別の仮店舗で営業を再開し始めたお店も増えてきた様子。
月に一回、被災した店舗の前にテントを張り、一本松復興マルシェも開催しているそう。

手と手を取り合い、頑張っている様子が感じられる。能登留学OBも中心メンバーで活躍しているらしい。

能登食祭市場

七尾駅の通りをずーーっとまっすぐ進むと海に出る。
その海際にあるのが「能登食祭市場」。

能登の里海で獲れた新鮮な魚がたくさん売っている。
お惣菜屋さんもあり、bancoでデスクワークの日にはよく散歩がてら買いに行って、海を眺めながらお昼を食べた。

七尾湾。海の向こうに見えるのは能登島。野生のイルカが住む海。

能登で驚いたのは、店に並ぶ海産物が本当に新鮮ということ!
イカなどは、表面が虹色に輝き、目がキラキラしたままパックされて売っている。何なら足がちょっと動いている。
お店で刺身になっていても、色は透明。
能登の人は、イカの色のイメージは白じゃなくて透明らしい。

自家焙煎珈琲と鉄板焼きホットケーキの店 中央茶廊

インターン中、毎日のように人に会っていた。
人に会うことは好きだ。いろんな人との出会いや会話の中で自分で形作られていくような感覚が好き。
だけどやっぱり1人も好き。1人の時間、絶対必要。めんどくさい人間なのだ。

週末、1人の時間が欲しくなると私はよく「中央茶廊」に足を運んだ。
カウンターのステンドグラスのライトがきれいな、昭和レトロな雰囲気の喫茶店。
「君は放課後インソムニア」の聖地にもなっている。

マスターこだわりの自家焙煎珈琲は香り高く、少し薄暗い店内でほっと落ち着くことができた。考え事をするにも最高の雰囲気。
(知り合いにばったり遭遇することもままあったけど、まあそれも良し。)
鉄板焼きホットケーキが売りらしいけど食べたことはない。甘いものはそこまで得意ではない。
だけど、そんな私でも「ちょっと食べてみようかな…」と思えるビジュアルだったことは覚えている。

ここも地震による被害が大きく、いまだに店舗での再開の目途はたっていないそう。
心配していた場所の一つなんだけど、ニュースで震災後の七尾の屋台村の様子が放映されていて、そこに出店しているのがうつっていた。奇跡的に焙煎機が無事だったらしい。変わらずに珈琲を淹れていた。
個性的な書体で書かれた「中央茶廊」の文字が懐かしくて、胸がギュッとなった。

その他のオススメスポット

和倉温泉 ブロッサム

JR七尾線の終点でもある「和倉温泉」にお店を構える「レストラン ブロッサム」。
和倉で代々経営している由緒あるレストランで、地元住民からもとても愛されている。
御祓川の社員の方々も、「美味しいものを食べたい!」といって足を運ぶ。私もいろいろな方に何度も連れて行ってもらった。

何を食べても美味しかったという記憶しかない。
特に、「香箱カニのフラン」はほっぺたが落っこちた。知り合いにオススメされて一度食べてから病みつきになり、行くたびに頼んでいたとおもう。
たしか季節限定で、わたしが七尾にいた秋~冬の時期だけのメニューだったから本当にラッキーだった。

富山 雨晴海岸

石川から離れるが、七尾滞在中に1人で高岡に1泊旅行に行ったことがある。
七尾から高岡まではバスで一本。
富山湾沿いをずっと走っていくんだけど、バスの車窓から見える富山湾の景色に私は目を奪われっぱなしだった。
とにかく透明度が高くて、バスの窓からも海底までくっきり見えた。

その中で特に「雨晴海岸」は情景地として名高い。奥の細道が詠まれた場所でもあるらしい。
絶景スポットの近くに道の駅があり、そこからの景色はいつまででも見ていられた。

番外編

ここで紹介したもののほかにも、能登で過ごした休日では、いろいろと面白い体験をさせてもらった。
書ききれないから箇条書きでご紹介。

  • 七尾入り1週間で見ず知らずのご夫婦の結婚式二次会にお呼ばれ。会場に着くなりどデカいハットの着ぐるみ(?)を着た知らない男性2人組に拉致られチップとデールの仮装をさせられる。
    予告なしの仮装パーティー(しかも9割9分初対面の方々)だった。七尾の洗礼を受けた気分だった。

  • 突然の「赤なまこ石鹸」CM出演オファー。
    和倉温泉で足をチャプチャプ、「わ〜赤なまこのおかげで肌がスベスベ!(棒)」とド素人がセリフを読み上げる様子が撮影される。その映像が金沢駅のお土産コーナーで放映されているところに遭遇し、恥ずかしさからモニターを壊しそうになる。

  • 珍しくシェアハウスの住人全員がオフの日、朝から晩まで水炊き鶏鍋を突きながらネトフリで「民王」と全話一気見。
    ダイアナさんが日本のドラマに衝撃を受け「ワ〜〜オ…」を連発する。

などなど。
あと行きたかった場所は能登島。行きそびれてしまった。


七尾のことを思い出しながら文字を打っていたら、ついつい長く書きすぎてしまった。
七尾で過ごした日々は本当に濃密だったし、たくさんの人に会ってたくさんの場所に行った。

いま、震災があり多くの場所は休業を余儀なくされている。
もう一度七尾のまちが輝くその日には、もう一度思い出の場所を巡りたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?