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親友のはなし

能登の話はまたお休み。今日は親友の話を。

私が親友と思っている人は2人いる。

1人は幼馴染。
幼馴染自体は2人いて、そのうち1人は男性でもう1人は女性。
性別で判断しているわけではないけれど、そのうち女性の1人が私にとっての「親友」。
もちろん2人のことは同じように大事に思っているんだけど、あえて名前を付けるとしたら、彼女が「親友」になる。もう1人の彼には名前を付けられないけれど、同じくらい大切な存在。

で、もう1人の親友は、高校時代にであった「ウミ」。
いつも日焼けをしているテニス部で、背が高くて、優しくて、笑い方が快活。

高校2年の秋くらいの話。
ミニスカートをはいた私は、昼休みになるとクラスの数人の女子と机をくっつけてお弁当を食べていた。普通に心地よくて普通に楽しかった。
だけどある日、「もういいかな。」と思った。

お弁当の誘いを断り、教科書を持って図書館に向かった。
その時の気持ちはあんまり覚えていない。
教室のなかで常に人と過ごすことが疲れたのかもしれないし、着々と迫っている受験に焦りを感じていたのかもしれない(私はかなり成績が悪かった)。

一緒にお弁当を食べていた友達に、急に混ざらなくなった私を悪く言うような人はいなかったけど、ちょっと微妙な雰囲気が流れていたのは確か。
だけどあんまり気にしなかった。自分の時間が持ちたかったのかな、たぶん。

そんな風に昼休みを過ごし始めて2週間くらいたった頃、いつも通り図書館へ向かう私の後ろから、1人の友人がついてきた。
「私も行く。」とほほ笑んだ彼女がウミ。
「いいよー。」1人が嫌だったわけではないんだけど、なんだか心があったかくなったことを覚えている。
その日から受験を終える日まで、私たちは同じ空間で勉強をしていた。たくさん話すわけではなく、ただただ2人並んで。

そんな風にして冬を2回こえて、卒業するころには私はウミを「親友」だと思っていた。
確認したことがないから彼女がどう思っているかは知らないが、少なくとも私はそうだった。

大学は別々のところに進学した。
2人で京都に行ったり、お互いの家に泊まったりしたこともあったけど、そこまで交流が多かったわけではない。
もともと私たちの間に会話が多いわけではないから、距離が離れればそれぞれがそれぞれだったのかもしれない。

ウミは大学卒業後福島で働いていた。
1月に福島に帰ってきたとき、私は無性にウミに会いたくなって、久しぶりに顔を合わせた。

帰ってきた理由とか何も話すつもりはなかったんだけど、なんとなく聞いてもらいたくなってちょっと話した。
暗くならないように、軽い感じで、ちょっと笑いながら。
コーヒーの表面を見つめながら、ちょっと早口で、しんどかった結婚生活をかいつまんで話した。
怖くてウミの顔は見られなかった。

「でももう大丈夫なんだけどね。」
そう言いながらやっと目を上げることができたとき、私は初めてウミが泣いていることに気が付いた。
私だって泣いてないのに、ウミが泣いていた。

「なんでウミが泣くの」
つられて泣かないように歯を食いしばりながら私は笑う。そんな私を見てまたウミが泣く。

ひとしきり涙を流した後に、涙を拭いたウミが言った。
「帰ってきてくれてうれしい。」
その言葉で私は泣いた。

おしゃれなカフェで、お互いの顔が涙でべとべとになったのを見て、27歳の私たちは笑った。



ウミは私の自宅の近くの病院に勤めている。
たまに午後休の日があり、そんな日は2人でランチにいく。そのまま私の家にやってきて、ごろごろして、気づいたら寝てる。
寝ているウミの隣で私は仕事をする。

やっぱり私たちにたくさんの会話は必要ない。
同じ空間にならんで、それぞれがそれぞれであればいい。
話したいときに話したいことを話せばいい。
それに対する返答は多くなくてもいい。ただお互いを思う気持ちがあることは、私たちが一番わかっている。

やっぱりウミは私の親友だ。

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