見出し画像

2024年4月施行 改正DV保護法

4月1日に施行される法律はさまざまある。
今年も、民法に始まり、障害者差別解消法や商標法、民事訴訟法などが改正され、2024年4月1日から施行となった。
そのなかで、わたしは「DV防止法」の改正について注目している。

DV防止法とは

DV防止法とは、正式名称を「配偶者暴力防止法」といい、名前のとおり配偶者からの暴力被害を防止するための法律である。
この場合の配偶者とは、
①法律婚の相手方
②事実婚の相手方
③生活の本拠を共にする交際相手
が該当し、同性パートナーも対象だ。

この法律に基づき、各都道府県にはDV相談センターが設置され、カウンセリングや一時保護などがおこなわれている。
また、警察署で相談をすることで、相手方への注意喚起や被害の発生防止のための援助を受けることができる。

要するに、パートナーからの暴力に苦しむ人を減らし、被害者を保護しましょうという法律なのだが、そのうちの大きな柱の一つ「保護命令制度」が今年度より改正された。

保護命令制度とは

保護命令制度とは、DV保護法に基づき、裁判所がDV被害者に対する保護命令を発令できる制度だ。
この制度を利用すると、相手方による被害者への物理的および、電話やSNSなどを含む各種手段での接近を法的に禁止することができる。

違反すると2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処されることになるから、その法律的拘束力は大きいといえるだろう。

改正の内容

改正内容は、端的に言えば「DV被害」の対象が、それまでの「身体的DV」に加えて「精神的DV」も含まれたという内容。
そのほか、接近禁止命令の期間の延長や罰則の強化などが含まれるが、1番大きなポイントといえばこのDV被害範囲の拡大といえるだろう。

それまでの法律では、精神的DVは相談の対象ではあったが、保護の対象にはなっていなかった。
そのため、モラハラや生命存続に関わらない暴言に耐えかねて逃げた方を守る方法がなかったのだ。

その他、保護命令に準ずる制度として、DV被害を警察あるいは相談センターに相談することで、住民票に閲覧制限をかけるものがある。
いわゆる「支援措置」といわれるものだ。

これをすると、たとえ配偶者であっても、被害者の住民票を閲覧することができなくなり、現住所の特定が困難になる。
また、離婚調停の際には申立書に住所の記載欄があるが、この住所の秘匿請求(相手方に住所を公開しないための請求)のためには、支援措置決定通知書が必要不可欠になる。そのため、住所を隠したい方にとっては支援措置を受けられるかどうかというのは大切なポイントでもあった。

この支援措置についても、今までは身体的DV被害者が対象で、精神的DVによる被害者は支援措置対象から外れていた。

今回の改正により、身体に及ばない精神的なDVを受けて来た方であっても、保護命令の発令や支援措置の対象となり、心身を守れる可能性が高くなったといえる。

思うこと

いわゆるモラハラなどの精神的DVは目に見えにくい。
また、日常化することで「これが普通なんだ」「自分が我慢すればいいんだ」などといった思考になってしまうこともよくある。

身体に暴力を加えられれば、命の危機を感じるかもしれない。
心への暴力は、知らず知らずのうちに心が死んでいく。

まずは今回の法改正が、パートナーとの生活のなかで精神的被害を被っている方の目に留まることが大切だと思う。
なかには自分が被害を受けているという自覚がない方もいる(むしろそのほうが多い)から、この法律改正で「自分は法律によって守られるべき状況にある」ということを認識することが第一歩でもある。

わたし自身も別居後、支援措置を受けている。
夫に接近されることを避けるため、別居当初から実家には帰らなかった。
姉の家に身を寄せ、支援措置の決定後にさらに引越して住所の特定をとても困難なものとした。

この方法をとって本当に良かったと思っている。
引っ越す前の姉の家の場所も特定される可能性は低かったのだが、姉の住所を書いたものを一点自宅に残して来たことが不安材料だった。
なるべく家にいないようにし、私や子どもたちの洗濯物は絶対に干さないようにしていたが、それでも不安でよく窓の外を確認したものだ。

今は引越した自宅で、心から安心して過ごすことができている。
置かれている状況の割に毎日幸せに生きているのは、この安心感があるからだと思う。

懸念点としては、精神的な被害の証拠として医師による診断書を求めている点がある。
通院レベルの精神状況でも、病院に行くことを許してもらえない、行く時間を作れないなどの理由で受診できない方も大勢いるだろう。
このあたりはもっと柔軟に対応してもらえるようになることを願う。

それでも、この法律改正をきっかけとし、1人でも多くの方が安心して暮らせるようになれば良いと思う。

おわりに

つらつらと書いてしまったが、本当はこんな法律がなくてすむくらい、幸せなパートナーが増えてほしい。

円満な結婚生活を送るためには努力は不可欠という。
賛成だ。他人同士が家族になるためにはたくさんの努力が必要だ。
でも、暴力に耐える努力は必要ない。
心を殺して頑張る必要なんてない。

身体への暴力はもちろんのこと、心への暴力、言葉での暴力がなくなるように。
また、わたし自身も無自覚の暴力を振るうことのないように、心に留めて、未来を願う。


この記事が参加している募集

最近の学び

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?