最近読んだ本について

数年に一度あるかないかくらいのとてつもない読書欲に支配された…!
ここ最近の1ヶ月で読んだ本について、軽く感想をまとめておこうと思いやす。

・上遠野浩平「恥知らずのパープルヘイズ」
 「ジョジョの奇妙な冒険」第5部のスピンオフ小説。主人公チームの「離脱者」ミンナノッタ・ボート パンナコッタ・フーゴが主人公となり、激しいスタンドバトルに身を投じていく。
 実はジョジョにハマったのはつい数ヶ月前からのこと。特に好きなキャラはカーズ様と吉良吉影、そしてフーゴ。第5部が面白すぎて3日ほどで一気見したんですが、その後調べたらなんと!フーゴのスピンオフ物語があるじゃあないか!ということでこちらも一気読みしました。
 久しぶりにライトノベル的な小説を読んだなぁ。漫画のスピンオフ小説というものをこの歳になって楽しく読む日が来るとは。嬉しい驚きだ。

・荒木飛呂彦「荒木飛呂彦の漫画術」
 引き続きジョジョの世界、ひいては作者の荒木先生の世界を知りたくなり購入。漫画製作、ひいては全ての「ものづくり」に通じる荒木先生の哲学を知ることができる一冊。
 面白い漫画や映画に出会ったときに、その面白さの内容について自分なりに分析する。分析した上で、自分が感じる面白さについて解像度を高めていく。そして次の自分のものづくりに活かす。何か物事を始めるための「地図」の作り方のようなものを学べる素晴らしい内容だった。近々「恐怖」をテーマに戯曲を書いてみようと考えているので、参考に頑張るぞ。

・井口淳子「送別の餃子(ジャオズ) 中国・都市と農村肖像画」
 一瞬だけ餃子狂いになった瞬間がありまして。無性に餃子が食べたい、知りたい。そんな衝動に駆られ、Youtubeで餃子の作り方とか歴史を見漁るようなことをしていました。
 そんな時期からしばらく経ち、偶然見つけた一冊。井口さんが実際に中国の農村部にフィールドワークに赴き、そこで出会った人々・価値観・そして餃子について描かれている。
 餃子についてさらに詳しくなれるかしら、と軽い気持ちで手にとった一冊でしたが、中国と一言ではいえない様々な環境に暮らす様々な人々の生活を非常にリアルに描き出した文章にガツンと衝撃を受けました。
 特に印象に残ったのは、「人間」という言葉についての話。「人」はその字の通り「私」や「あなた」、生物としての人のことを指す。「人間」というは人々の間で生きる、つまり「社会」のことを指す。えーと、つまり何が言いたいかというと。
 上手く言えないけど、社会とどう折り合いをつけたらいいんだと悩むことの多い自分なのですが、そんな自分も含めて「人間」という社会は構成されている。だから、折り合いをつけるも何も、社会と自分に距離というものはないんじゃないかと、あんまり深く考えずに生活するのがちょうどいいんじゃないかと思えたのでした。

・養老孟司「死の壁」
 私の大好きな音楽家・星野源さんがダ・ヴィンチで紹介されており、その後対談もされていた解剖学者・養老さん。
 移ろいやすい「常識的観点」というヤツとは一線を隠した、養老さん独自の、しかし不変という言えるだろう確固たる視点から語られる人間論・死生論は、刺激的で面白いけど、とっても難しい(それでもこの本は優しく書いてある部類だそうです)。
 うんうん唸りながらなんとか読破しましたが、頭の体操になって非常に気持ちがいい。私は死体とどう向き合うか。いずれ必ずやってくるけど、よくわからない存在「死」について、「わかる」ためではなく、「なにがわからないか」を知るための力を与えてくれます。

・柿内正午「会社員の哲学」
 社会人になると、起きてる時間の半分くらいは仕事をしているか、仕事について考えているわけです。
 そうなってくると、「職場で自分の能力を発揮できているか」とか「仕事を通して自分は成長できているか」とか「やりがい」とか「自己実現」とかそんなことを考えちまいます。で、自分はもっぱらそんなことができていないので、よく悩んでいました。
 そんな自分に、「いや、仕事はただの仕事じゃね?」「やりがいとか生きがいは仕事以外の時間で見つけて、仕事はあくまでも生きていくのに必要なお金を稼ぐための手段でしかなくね?」という価値観を与えてくれる一冊でした。最高。ありがとう。
 この本は何回も読み直して、自分の価値観の重心を鍛えたいと思っています。

・野口理恵 編「USO」「USO 2 特集YOU」
 嘘を愛する、嘘に惹かれる人に超スーパーウルトラおすすめのシリーズです。様々な人の「嘘」にまつわる話が読める、最高に気分が悪くなる最高の本ですぜ。2には私の大好きな「あなたのための短歌集」の作者、歌人・木下龍也さんお話もあって嬉しかった。
 読むとかなりしんどくなったりするかもしれないからよ、読後に何か自分にとって気分を上げれるもの、例えばバキ堂チャンネルの動画とか、何か用意しておいてくれよな!関係ないけど、バキ堂チャンネルのフィリピン旅シリーズ最高ですね。

・朝井リョウ「正欲」
 主にエッセイとか新書とかを読むのが好きなんですが、久々に小説を読みました。
 「正しい欲」と書いて「正欲」。「自分が欲情するモノ・コトは正しい」と思いますか?こう聞かれたら、おそらくはほとんどの人が「そんな風に思ったことないなぁ」と答えるんじゃないでしょうか。例えば、「自分が欲情することに正しいかどうかなんか考えたことないし、わかんないよ。てか皆そうなんじゃないの?」と答えるかも。例えば、「そんなの、正しくないに決まってるよ。皆を見てたらわかる。俺は正しくないモノに欲情している」と思っている人もいるかも。
 自分にとって、本とか演劇とか、エンタメとして作られたものに対しての評価点は「面白さ」なんですね。それは笑えるものとか、不思議なものだけじゃなくて、悲劇だろうがなんだろうが、心が動かされた作品は「面白いなぁ」と思うんです。今まで出会った全ての作品は、「つまらない」か「面白い」かの判断ができていました。
 しかしこの作品は、面白くなかった。でもつまらないなんてことは決してない。微塵もない。なんだこの気持ちは。心は激しく動いたから、面白かったはず…なんだけど、いや、心は動いていないかも。正確にいうと、動けなくなってしまったかも。その場でずっとグルグル回り続けて、どこにもいけなくなってしまっている。
 慌ててバキ堂チャンネルの「ドラえもんを語る」回を観て、気持ちを立て直す。
 恐ろしい。
 この本は、正直おすすめしていいのかどうかよくわからなくなる。けど、でもやっぱりぜひ読んでみて欲しい。
 絶えず自分自身に疑いの気持ちを持つことになり、心がその場から全く動けなくなってしまうかもしれないけど。
 でも自分は、確かにこの本に出会うことができてよかった。そう思います。

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