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民間企業の研究員が転職したら、今までに無いリサーチを経験できた話

こんにちは!atama plusのはんちゃんです。
生徒の学習体験について、リサーチから設計までおこなう”学習体験プランナー”をしています。
atama plusに転職してから、気付いたら8ヶ月が経っていました... 
どれも新しい経験ばかりで、多くの学びがあったからこそ、あっという間だったんだなーと感じています。

今日はその8ヶ月で経験したことをもとに、研究職として働いている方々に伝えたいメッセージがあり、執筆してみることにしました。

研究者/科学者の中には、企業/アカデミアを問わず、こんな気持ちを感じている方々がいらっしゃるのではないでしょうか?
 ■ 自分の研究が社会の課題解決にもっと直結して欲しい...!
 ■ 自分の研究成果をもっとスピーディーに顧客へ価値として届けたい...!

僕もまさにそのような気持ちを抱えて研究員として仕事をしてましたが、
現在は、
 ■ 顧客に近い形でスピーディーにプロダクトの価値を届けられる
 ■ 課題に対して「仮説→設計→実験→分析→考察→フィードバック」のサイクルを素早く回す
といった正反対の仕事ができています。

もう少し詳しく話すと、
僕自身、前職は民間企業の研究職として2年間働いていました。
前職では、最適化問題のアルゴリズム開発をおこなっておりました。
数理科学や計算科学などの分野の論文調査をしたり、チームメンバーとディスカッションしながらフィードバックをもらってアルゴリズムを改良し、最終的に良い結果が得られたら特許化して、さらに論文化していました。

研究という意味ではとても楽しいものでしたが、基礎研究に近い内容だったため、実用化レベルのモノが得られることは難しく、プロダクトに反映され顧客のもとに提供されるには、かなりの時間がかかっていました
また、社内では特許「数」や論文「数」が重要視され、「果たしていつ役に立つのだろうか?という微妙な内容の研究結果も特許化/論文化しておく」みたいなこともしており、日々モヤモヤしておりました。

そんなもどかしさを抱えながら出会ったのがatama plusの学習体験プランナーという職種でした。職種名からなかなかイメージし辛いですが、この8ヶ月の経験を通じて、「研究職の人たちは学習体験プランナーとして活躍できるし、もっと顧客に近い形でスピーディーにプロダクトの価値を届けられる!」ということを強く感じました!


学習体験プランナーとは?

自分が経験したことをベースに、どんな職種なのか、そしてなぜそれを研究職の人にお勧めするかを具体的に話したいと思います。

atama plusの学習体験プランナーの役割としては、atama plusプロダクトにあるたくさんの学習データと実際の塾現場から得られた情報をもとにして、定量&定性の両観点から学習上の課題を洗い出し、仮説検証をおこない、より良い学習体験を提供することです。
例えば、「一度学習するだけでは身につかないよね、本番のテストで正解できないよね」ということをデータをもとに定量化して、実際の生徒の様子を観察しながら、定着のための学習体験を設計したりします。
リリース後にはちゃんと効果検証をおこないます。「必要とする生徒にその学習体験が届いているのか、効果はあるのだろうか」などを様々なデータ、及び、実際に現場で使っている生徒の様子を見ながら判断し、改善をおこなっていきます。

データに基づく定量的な開発とは?

我々は、データドリブンで仮説検証することをとっても大事にしています。
様々な統計的知識や数理モデルの知識を使いながらデータ分析をおこない、メンバーと議論を重ねて真相を究明しています。これはまさに研究職のスキルを活かせている点で、めちゃくちゃ楽しいです!

もう少し具体的に伝えると、
我々は、atama+を使って学習したらちゃんと定期テストで成績が上がる!ということを目指しています。atama+でテストの出題内容がどれくらいカバーできているのかを調べたり、atama+内で何がどの程度できていればテストで点数が取れるのかを解明していきます。そのために実際の定期テストの答案1枚1枚を、そして1問1問を分析し、データ化します。このとても泥臭い作業が非常に有益なインサイトを与えてくれるのです(結果は面白いですが、もちろん企業秘密!!)。

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そして、データ化した大量のデータを扱う際には、データサイエンティストと協力し、要因分析・感度分析、機械学習の手法を用いて分析をおこないます。
得られた結果をチームメンバー全員で「あーでもない、こーでもない」と毎日繰り返し議論もしています!チーム総力戦で生徒の成績向上ファクターを捉えようと日々努力しているのです。
データドリブンで仮説検証を繰り返しながら開発するスタイルは、まさに研究職の人にうってつけなのでは?と思います!

現場情報に基づく定性的な開発とは?

学習体験のアルゴリズムを開発するには、データだけではその実情を正しく捉えることはできません。なぜならば、実際に使ってもらうのは生徒や先生であり、一人一人の行動全てをデータから正しく汲み取ることは難しいからです。

そこで我々は塾現場を訪問することも大事にしています。これは前職が研究職であった自分にとっては、本当に何が起こっているのかを直接見れるという意味でとても新鮮でした。
現場から得られる情報量はとても多いです。そこから学習体験上の課題を突き止めたり、ある種の実験として仮説検証をおこなうことは、研究職の人の鋭い洞察力/考察力が発揮されるのでは?と思います。

具体的には、生徒が使っている姿を観察してヒアリングしたり、先生にも生徒の様子をヒアリングをさせてもらったりすることで、学習体験上の課題を見つけたり、仮説を検証したりします。
また、オフィスでデータだけを見て色々悩んでいたことも、現場にいくとパッと答えが見えることがあります。

最近経験した例としては、「atama+の英単語テストに何でこんなに時間がかかっているんだろう...」という課題についてです。atama+の英単語テストでは、下図のようにキーボードを使いローマ字入力して解答します。

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我々は当初「タブレットのキーボード入力に慣れていないから時間がかかっているのでは?」という仮説を立てていました。分析コストは高くなりますが、これをデータから仮説検証することはできます。実際に「1文字あたりの文字入力に1秒」という結果(これもおもしろいけど...)がデータ分析から得られ「入力に困ってなさそうだな」という結論は見えました。

しかし...!
現場に行って生徒をちょっと観察するだけで...
「確かに、思ったよりスラスラと文字入力してるじゃん...なんなら自分が打つより速いかも...」と感じたり、
先生からも「使っていくうちにすぐに慣れていくので、そんなに困ってないですよ」と聞いたりしました。
さすがZ世代...。
それよりも「家で単語の勉強をして来なかった生徒が、その場で単語をノートに写して覚えようとしているために時間がかかっている」という事実に気付きました。
データで出すのは大変だったものが、現場にいくとすぐに答えが見える上に、思いもよらない現状にも気付けました。

他にも「問題を繰り返し解いても理解できていない生徒は、解説をちゃんと読もうとしてない」という仮説に対しても、現場にいくと「あれ、意外と解説を読もうとしてくれてるぞ...そうか、解説自体がわかりにくく、どうすることも出来なくてつまずいたままなんだな...」と新たに仮説がブラッシュアップされたりと、色々な課題がおもしろいほど見えてきます。まさに現場は「解の宝庫」です。

こういった理由からatama plusでは、学習体験プランナーだけではなく全社的に現場を大事にしています。「どのように現場情報をプロダクト改善に活かしているのか」については、ぜひ以下の記事も見てください。

このように現場で得られた定性的な情報はとても価値がありますが、それを決して鵜呑みにするわけではありません。現場で得た貴重な情報をもとにデータドリブンに仮説検証を繰り返していきます。その成果をプロダクトに瞬時に反映して、日々プロダクト改善をおこなっているのです!

EdTechの最先端技術を見据えた開発へ

最近、社内では「論文読み会」という活動をはじめました。週に1回、チームメンバーが順番になって論文を紹介します。
紹介する論文の内容は「EdTech領域」。

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チームメンバーの専門分野ではないですが、より洗練された個別最適化した学習体験を届けるために、最先端の技術をどんどん取り入れようとしています。
まずは細かい内容に踏み込まず、どんな技術があるのかなどをサーベイ的に振り返ったりして、下図のように構造化して理解しています。そこから一つずつ理解を進めようと、みんなで頑張っています!

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最近の論文読み会で学んだことを記事にしたのが以下noteです。我々がどんなことに興味をもって勉強しているのか、ぜひ見てみてください!

論文を読んで新しい知見を得ることは楽しいですし、分野は違えども論文を読み解くことは研究者/科学者の得意スキルだと思います。
それらの知見がどんどんプロダクトに反映されていくことを考えるとワクワクしてきます。将来的にはEdTech領域での論文なんかも書けたら最高だな!とも思っています。

最後にもう一度伝えたいこと

さて、ここまで自分の経験や感じたことをなるべく具体的に書いてみたつもりです。

どうでしょう?
研究職の人たちは学習体験プランナーとして活躍でき、もっと顧客に近い形でスピーディーにプロダクトの価値を届けられる!の理由が少しだけでも伝わったでしょうか?
しかも、使ってくれる顧客の顔を見ながらリサーチできるなかなか無い職種だと思いませんか?

現場で生徒がプロダクトを使っている姿を見るのはシンプルに嬉しいですし、もっと良いものに改善したい!という気持ちになります。
また、データ分析をしていても生徒の顔が浮かんできて、無機質だったデータも生き生きしてきます。
僕自身は今、良い教育を生徒に速く届けたいという気持ちで、定性と定量の両輪でリサーチしており、とても充実しています!

冒頭でも述べましたが、
 ■ 自分の研究が社会の課題解決にもっと直結して欲しい...!
 ■ 自分の研究成果をもっとスピーディーに顧客へ価値として届けたい...!
みたいな気持ちをもった研究職の人たちがatama plus で働くの楽しそう!って思ってもらえたら嬉しいです。


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