見出し画像

各駅停車

各駅停車に座ると、
電車はとたんに姿を変える。

ラッシュに押し込まれて、
最速で目的地まで運んでくれるのとは、ぜんぜん違う顔をしている。

なにをしていてもいい、というところが好きだ。

各駅停車を選ぶとき、
わたしは眠ったり本を読んだり音楽を聞いたり
特別な時間を過ごす。

今日も、すぐに返信したいメールがあったので各停を選んだ。
この記事も各駅停車の中で書いている。
誰もわたしを急かさないし、
喫茶店とも似て非なる空間だ。
移動をして目的地に向かう以上のことを何もしなくても許される感じも好きだ。

そういうものなのだ。
各駅停車のことを考えると、従兄を思い出す。
新幹線はこだま、静岡に止まる各駅停車がいい、と言った人。

高校生のときは理解ができなかった。
同じ値段なら、すぐに着いたほうがいい、とまっすぐに思っていた。

いまならわかる、
こだまで缶ビールが一本ちょうどなんだ、と言った
彼の気持ち。

そうして、
わたしたちはそういう種族なのだ、と
言い訳にも諦めにも似た感じが、またほっとする。

そうして、そういうときは
「もう終わり?」という気持ちで目的地に着く。

急行がカロリー摂取なら、
各停はアフタヌーンティーだろうな。
おいしくてしあわせで、
なんだか贅沢に思える。

スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎