おとなの読書感想文5

夏の文庫フェアのラインナップを見て、自分は結構ありきたりな読書をしているのだと気付きます。色々読んでいますが、これはいい!というのは確率的にフェアで取り扱われるような本になりやすい。良作だからこそ時を経ても読まれ続けるのでしょう。さて、久々に読書感想文を書きます。

『旅をする木』星野道夫

きわめて個人的な、社会の尺度からは最も離れたところにある人生の成否
  ―パーソナル・ディフィニッション・オブ・サクセスー

この本は20年前に書かれた本で、その中の「アラスカとの出会い」は中学か高校かどちらかの教科書に載っていたと思う。「十六歳のとき」は中高生のときに読みたかったなと思う。他人は他人、自分は自分。「幸せや成功を他人のものさしで計られたくないよね」と大学時代、仲の良かったゼミ仲間と話していた。上記の言葉はまさにそれで、外野がどう言おうと自分にとってどうなのか? それだけなのだ。しかし、自分の中にものさしを持っていないとそもそも成り立たないことだと気付くのにも時間がかかった。結局のところ他人と比較して落ち込むのは、他者や社会一般のものさしで自分を計るからで、自分の軸・ものさしを持っていないが故に振り回されるのだ。どうか昔の僕よはやく気付いてほしい。誰も君の幸せを、成功を気にしない。だから好きなように、満足するようにやったらいい、と。

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

ちょっと前に深夜で映画版が放送されていました。そして先日、高崎旅行で達磨寺に行きました。京都の達磨寺にも行ったことがあります。達磨五訓がとても好きです。「気は長く、心はまるく、腹を立てずに、吾は小さく、人は大きく」 小学校の卒業アルバムに教頭先生が書いた言葉を小学生ながらに感銘し、大学時代に京都旅行をしまくっているときにそれが達磨五訓だと気付きました。話を戻すと、どうやら僕は達磨が好きらしい。本の中でも黒髪の乙女は達磨を愛でる。なんとなくわかる。お酒がのめたらいいなぁと思う。赤玉ポートワインも偽電気ブランもその味を知らない。小説を読むとき、自然と自分の中で姿も声も想像して読む。黒髪の乙女はチャットモンチーのえっちゃんで再生していた。映画版で花澤香菜さんの声を聴いて「ブラボー!完璧だ!」と思った。映画版を見ていない人へ、安心して見てください。

『トラペジウム』/高山一実

想像以上に面白かった。アイドルが書いた本ということでかなり斜に構えていたし、期待もしてなかったが、良い意味で裏切られたしめちゃ楽しませてもらった。主人公がアイドル志望というと、朝井リョウの『武道館』も想起したが、『トラペジウム』はアイドルだからこそ描けた視点かなと思う。『武道館』は外野が思う、アイドルの世界・人生のように感じる。僕はかつてドルオタだったから想像しやすい視点だった。しかし、『トラペジウム』は違った。主人公だけが周囲から浮く。「女の子はみんなアイドルになりたいんじゃないの?」 地下アイドルを含めれば、どこかに需要があり誰でもアイドルになれてしまうような時代だ。でも、みんながみんなアイドルになりたいわけじゃない。アイドルが書いたから意外性があった、とも言えなくはない。しかし、面白い作品だということに違いはない。







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