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僕は『文武両道』だった。(写真は全然知らん甲子園球児)

少し前、今働いているところで一緒に働いている女性と空き時間に話していたら、どんな話の流れでそうなったのか忘れたけど、高校の部活の話になった。その人は自分と出身が同じでやっていた部活も同じだったことがわかった。会話の終わり際「えーじゃあ文武両道だったんですね」と言われ、お互い作業に戻った。

「文武両道」か…話し終わった後もなんとなくぼんやりその言葉を頭の中で反芻していた。確かに高校時代やっていた部活でインターハイに行ったし、勉強もクラスでは大体一位か二位か三位くらいの成績、学年では教科によってはテストの得点順位一位だったりしてた。ここまで書いておいてアレだけど、自慢がしたいわけじゃない。今みたいに文面だけ見れば良く見えるけど個人的には学生時代、特に高校と大学の頃上手くいった事なんて何一つないと本気で思っている。

三年前くらいに、小中高と同じ学校を通った友達二人(一人は男子で一人は女子)と話した時も「部活も勉強も頑張ったけど結局何一つ上手くいかなかったな〜(笑)」なんてポロッと溢すように話してたくらい当たり前に何も上手くいかなかった学生時代だと本気で思っている。

それはそうだろう。なぜなら僕が主となり部員を引っ張って行ったインターハイでもなければ、志望していた大学に掠りもしない点数差で落ち、「センター失敗しただけだから一年やれば…」と絶対の自信を持って浪人までしてもう一度失敗したからだ。
その時、話してた友達は「そうかな〜。おれは、お前は部活も勉強も常にトップ層でずっとすごかったイメージだわ」と一人は言ってくれ、それに続くかたちで「うん、私もそのイメージ」と、もう一人もフォローしてくれた。いつも些細な事で傷つき、感傷的な僕をずっと近くで見てきた二人は優しかった。
こんなに大人になってまでわかりやすく気を使わせてしまっているこの話題を終わらせたくて「いや〜まぁいろいろあるよね(笑)」とかなんとか言って今も思い出せない全然どうでもいい事を話し始めた。


 文武両道が頭の中を反芻するのは無理もない。僕は文武両道なんかじゃなかったからだ。その証拠に今だって何一つ上手くいってない。この文章の冒頭だって、『今働いているところで一緒に働いている女性』なんて周りくどい表現しかできない。だって僕はフリーターだからだ。『職場の同僚』なんて然も自分が正社員で責任感はあるが、やりがいを感じて働いていてかつ、バリバリキャリアを積み上げているような嘘みたいな表現はできない。どれだけ腐っても自分をよく見せたくて誰かを騙すような事はしたくない。だって僕は『文武両道』の学生だったから。
 『文武両道』なんて四字熟語だけで何年も前の友達との会話を思い出すなんて僕は、些細な事で傷つき、感傷的な性格なんだろう。

 あの時、気を使って僕をフォローしてくれた友達は二人とも今では結婚して進み続けている。僕だけあの頃と同じまま。立ち止まったまま。進めないまま。でも車も持ってるし、ギターのローンは今月やっと終わる。


 「そうかな〜。おれは、お前は部活も勉強も常にトップ層でずっとすごかったイメージだわ」
ヘラヘラしてた僕にアイツは真面目なトーンで言ってくれた。
あともう少し頑張ろうと思う。

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