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わかりやすい!中医学の基礎

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中医学を勉強してみたいけれど、難しそう・・・ 中医学初心者、本を読んでもよくわからない・・ そんな方に向けて、できるだけわかりやすく『中医学の基礎』を解説していきます。 中医… もっと読む
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2024年1月の記事一覧

わかりやすい!中医学の基礎 Vo.16〜腎の役割〜

腎の役割西洋医学では、『腎』は『尿を作る場所』『水分を調整する場所』と認識されていますが、中医学では生命の根本に関わるとても大切な臓と位置づけられ、『成長や発育・老化に深く関わる臓』だとされています。 体の中の水分(津液)の代謝はもちろん、呼吸によって体内に取り入れた『気』が深く体の芯まで行き渡るようにするのも腎のはたらきによるものです。 腎と関連の深い五行は水 腎は水分コントロールを行う場所であり、『水』と深い関係があります。 腎のはたらき3つ ①発育、生殖能の要

わかりやすい!中医学の基礎 Vo.18〜六淫が体内で起こる場合〜

Vo、17では、病気になる原因についてご紹介いたしました。 六淫の風邪・寒邪・暑邪・湿邪・燥邪・火邪のうち、熱中症に代表される『暑邪』が原因となる病態は、外の環境(炎天下での運動・エアコンが効いていない部屋に長時間いるなど)によるものですが、 他の5つは、からだの『気血津液』の過不足や熱を作るはたらきの不足によってからだの中に原因があることがあります。 今回は、からだの内側の原因から起こる5つの病邪についてご紹介致します。 1 『内風』 体の内側に風邪がある場合には

わかりやすい!中医学の基礎Vo.17〜病邪について〜

今回までで、『気血津液』と『五臓』についての説明が終わりました。 中医学は、その昔、今のような検査方法もなく、人体の生理機能などもわかっておらず、ウイルスや細菌などもその存在が明確にはされていなかった時代に、なぜ人が体調が悪くなったりに重い病になったりするのかを、豊な想像力で説明し、養生法、治療法を経験の中から見出してきたものです。 『気血津液』も『五臓の役割』も、そう考えるとうまくいったという積み重ねのもとに考えられたものです。 現代に生きる私たちは、西洋医学の恩恵を

わかりやすい!中医学の基礎Vo.14〜脾の役割〜

脾の役割脾の定義 中医学では、『脾』とは消化吸収し、栄養物質を全身にめぐらるはたらきをもち、西洋医学でいう胃・膵臓・小腸の一部を含めたものを指します。 脾は五行の『土』と関係が深い 五行では『土』と関連が深い臓です。 土は、自然界にあるもの全てをのせている基盤であり、全てのものに栄養を与えて生長や変化の源となるものです。 『脾臓』もからだにとっては『土』のように、成長と変化の基盤となるものなのです。 脾のはたらき3つ ●運化と昇清 飲食物を消化し、栄養や水分

わかりやすい!中医学の基礎Vo.15〜肺の定義〜

肺の定義 気を支配して呼吸を管理する臓で肺・気管支・鼻・皮膚を含めたものを指します。 関連の深い五行 金:金属は音を発するため、気をコントロールして声を出す肺は『金』との関わりが深いとされています。 肺のはたらき3つ ●呼吸によって酸素を取り入れて体内の二酸化炭素とのガス交換を行っています ●宣発(せんぱつ)と粛降(しゅくこう) 宣発:上・外に向かう肺のはたらき    例    脾から受け取った気や津液を全身に散布する    呼気により二酸化炭素を排出する 粛降

わかりやすい!中医学の基礎Vo.13〜肝の役割〜

今回は、『肝』についてです。 もうすぐ2月、2月3日の節分を境に、自然界は春に向かっての準備を始めます。 春は、肝との関わりが深く、肝の伸びやかな性質が、自然界の一部である私たちの心と体を伸びやかにし、スムーズに『気血津液』をめぐらせてくれるのです。 肝の役割 肝の定義 体に必要な『血』『気』『津液』をめぐらせ(疏泄) 『血』を貯蔵する臓(蔵血) 『疏泄』『蔵血』とは 『疏泄』 肝は、気血をスムーズに滞りなく体にめぐらせる働きがあります。 この機能を中医学の用語で

わかりやすい!中医学の基礎Vo.12〜五臓と役割〜

今回から、五行説との関連が深い、五臓の役割についてご紹介していきます。 五臓と六腑中医学では、『臓』と『腑』にはそれぞれ次のような違いがあると定義しています。 臓 臓とは、『実質的な臓器』をさし、具体的には『中身が詰まっていてからだをスムーズにはたらかせるために重要な役割をしている』臓のことです。 五臓(裏) 心・肝・脾・肺・腎 腑 『臓」とは、中身が空洞で、臓で作られてた栄養物質や気、津液が通過する器官を指します。 六腑(表) 小腸・胆・胃・大腸・膀胱・三焦

わかりやすい!中医学の基礎Vo.11〜陰陽バランスとからだの不調〜

陰陽バランスとからだの不調との関係 今回は、陰陽のバランスが私たちの体にどのように影響するのか、少し詳しくご紹介いたします。 陰陽に分類される『気血津液』の役割 陰に分類される、血・津液・津液は私たちのからだを潤し、余分な熱を冷まして体を不調のない快適な状態に保つ役割があります。 陽に分類される気は、体を温めて活動的な状態にする役割があります。 この、陰陽のバランスは、季節や環境によっても変化しますが、不調を感じないように環境に応じて常に変化しており、からだを健康な状

わかりやすい!中医学の基Vo.9

陰陽の特性 陰陽には、次にあげるような特性・特徴があるとされていて、その特性が体の体調の変化や病気の発生または治癒する過程にも影響すると考えられています この原則自体は、あ〜そんなものか・・という程度で構いませんが、この陰陽の原則が実際のからだの不調を説明するのに役立つことがあるのです。 以下に例を挙げてみますね。 例 1 陰陽の制約にトラブルが起こった場合 同じ『交感神経が亢進している症状』がある場合でも、陰陽の関係で治療法が違います。 *交感神経が亢進した

わかりやすい!中医学の基礎 Vo.10〜5行学説と五臓の関係〜

五行学説  五行学説とは、自然界の全てを木・火・土・金・水(もっかどごんすい)の5つのグループに当てはめて分類し、その関係性を解く理論・考え方です。 五行の『木』『火』『土』『金』『水』には、表のような性質があります。 五臓東洋医学では、五臓は心・肝・脾・肺・腎の5つで、それぞれ表のような役割と性質を持っているとされています。 西洋医学の心臓・肝臓・脾臓・肺・腎臓と一部重なる部分もありますが、中医学では組織というよりは機能としての臓腑に注目し、その役割を当てはめていま

わかりやすい!中医学の基礎Vo.8

それでは、中医学の思想である『陰陽・五行』について学んでいきましょう。 陰陽について 「陰陽(いんよう)」は、荘子の観念(黄帝内経が生まれた当時に活躍した思想家)として誕生しました。 陰陽の定義 陰陽の定義は 「宇宙の一切の事物や現象を、相対的に陰と陽という大きな属、対立と統一の元に説明したもの」で、中国の古い哲学思想である「陰陽論」に基づくもものです。 「陰陽」は、中国古代の思想で、天地間にあり、互いに対立し依存し合いながら万物を形成しているとされています。 陰

わかりやすい!中医学の基礎Vo.7

中医学の基本となる考え方(中医哲学論) 中医学を学ぶ上で、中医学の根幹となる考え方を知っておくことはとても大切です。 臨床上は必要はありませんが、国際中医専門員の試験には必ず出てくる概念です。 唯物論  宇宙に存在するありとあらゆるものは全て、目に見えない物質の集合体であるとする概念を「唯物論」と言います。 少し無理はありますが、現代科学的に解釈すれば分子よりもはるかに小さい素粒子が、大きな揺らぎの中で一定期間集まってできたものが目に見える「物質」として存在し、またそ

わかりやすい!中医学の基礎Vo.6

中医学の考え方の元となっている世界観について学びましょう。 この考え方は、3大古典の1つ、『黄帝内経(こうていだいけい)』に記されています。 中医学とその世界観 黄帝内経より抜粋 1)人は天地の気を受けて生まれた   中医学では、世界を陰と陽の相互作用によって生じた物質と考えており、人も物質世界の一部として捉えています。 2)形と神を分かつことはできない  肉体と精神は分けられないということ。形(肉体)があって生命があり、生命があってこそ精神活動や生理機能がある

わかりやすい!中医学の基礎Vo.5

日本で漢方薬が広まるまで 現在、日本で使われている漢方薬の起源は、古代中国にあります。 当時最先端であった中国の思想や医学を積極的に取り入れ、日本の風土、気候などにあわせて独特の医学(漢方)が生まれました。 『気』『血』『水』の概念を学んだところで、漢方薬の歴史についてふれてみましょう。 漢方薬の歴史漢方薬の歴史は古く、今から1800年ほど前に張仲景(ちょうちゅうけい)が記した「傷寒論」が、漢方薬が掲載されている書物の最も古いものとされています。 漢方薬はあまり詳しくな