恋人はとても弱い。でもその弱さも丸ごと。

 こんにちは。日が短くなってきましたね。この時期になると、毎年4限が終わったころには真っ暗になっているな、と、毎年、前年を思い出します。昨年の今頃はこんなことしてたな、あの場所で、あの授業が終わった後、あの子と歩いているときに、外が暗いなって思ったな、と。今年で最後。

 はのとです。初めまして。



 先日、部活、軽音楽部の後輩たちと飲みに行きました。テーマは最近の部活の愚痴。重たいというか激しい会になると思っていたので、選抜された人たち以外は参加させない、と言い出しっぺの後輩が張り切っていて。

 それを1個下で同じ部活の恋人に知らせると、会に参加したいというよりは私と一緒にいたいだけだったと思うんですけど、当日急遽参加することになりました。ちょっと不安だった。恋人は、優しい人だから。

 予想通り、何時間もずっと、部活をする上で抱えていた不満だったり個人に対する不満だったりが飛び交い、かなり暗い影が一生続いているみたいな時間になりました。私も私でさ、1年生が無断欠席をしたり機材を壊したりしているのを看過できないので、ひたすらそのことを話していてさ。

 途中で気づいたの。段々口数の減っていく恋人にね。対角に座っていたのでフォローを入れることもできず、ただただなんとなく空気を合わせて頷いているだけの恋人を視界の端で捕らえ続けました。


 帰宅後、「立ち上がれません」とライン。だよね、そうだよね。深夜も深夜だったけど、電話をかけました。電話越しの声は、とても弱弱しくて。

「なんかダメです。なんか、すごい疲れちゃいました。自分で行きたいって行ったのに、なんて無責任なんだ~。」

 人の負の感情に触れすぎて、心がどっと疲れてしまったんだと思います。本人はなんでこうなったのか分からないって言っていたけど、それは君が優しいから、繊細だからだよって。君といれば、私も優しくなれるような気がする。


 普段弱音を吐かない恋人が、「なんでだろう」と言いながら涙を流し、必死に自分のことを理解しようとしているのを聞いて、ああ、私はなんて無力なんだと。こんなときに話を聞くことしかできない。そばにいてあげることもできない。気の利いた言葉も出てこない。

 「HSPとか、精神的な病気とか、あるんですかね。」泣きながら、でも落ち着いた声で恋人が言いました。


 私は自律神経失調症です。今までずっと、恋人には内緒にしてきました。なぜなら、恋人は私の強さや真面目さに憧れを感じてくれているからです。それに、わざわざ言う必要がないと思ったから。強がりなんですね。

 だけど、弱さをさらけ出してくれた恋人に、「こんなこと人に話したの初めてです」って自分のことをたくさん話してくれた恋人に、私もまっすぐ向き合わないとなって。思ったわけです。


 「私ね、ずっと声出ないって言ってたと思うんだけど、それ、精神的な病気なんだ。明日医者行くって言ったけど、それも、本当は喉の医者じゃなくて心療内科なの。理由もなく涙が止まらなくなったことがあって、苦しくて辛くて何もできなくて、そしたらお母さんに心療内科連れてかれてさ、自律神経失調症って言われたの。私、精神の病気なの。」

 そこまで話して止まると、恋人は酷く驚いたような反応をしました。それもそうだと思う。それくらい、部活の後輩たちにとって、私は、強くて完璧な人だから。気付いたらそうなっていたから。

「でもね、全然信じてなくて。信じられないでしょ? あと5点で鬱って言われたんだよ。私が。信じられなかったけど、精神疾患って誰でもなるんだなって、なんとなく客観的に思ったの。だからさ、〇〇も、不安がらなくていいと思う。そういうことで悩めるって言うのはさ、君がとても優しいからなんだよ。私はそういう人になりたいって思ってるよ。」

 うん。小さく返ってきました。

「それにさ、例え何か性質とか病気とかあったとしても、私も言われたことだけど、楽しいことたくさんすれば元気になれるらしいの。だからさ、私と一緒に、楽しいこといっぱいしよ。〇〇が自分のこと嫌いならその分私が好きになるし、〇〇が自分のこと許せないなら私が全力で許すから。私、たぶんそんなに役には立たないんだけど、今日みたいに色々話してくれたら嬉しい。」

 私がそう言うと、恋人はこう返してきました。

「俺、こんなに弱いです。自分のこと全然分からないです。今日も、自分で行きたいって行ったのにこんな感情になって、なんで泣いてるかも分からないし、こんなんだからたぶん色んなことに向いてないです。俺は自分のこういうとこが嫌いです。」

「私は、あんたの弱さもまとめて好きだよ。弱いとこも含めて〇〇だし、そんなところに惹かれたの。だから、安心して弱いとこいっぱい見せて。」

「ありがとうございます。俺、はのとさんじゃなかったらダメだったと思います。はのとさんいないとダメです。気持ちすごく楽になりました。」


 翌日改めて、「昨日は本当にありがとうございました。はのとさんのこともっと好きになりました。」って連絡がきていて、安心した。本人にも言ったけど、本当に私は役に立てるようなことはほとんどない。それでも一緒にいたいし、できるだけ頼ってほしいし、恋人が自分のことを愛せない分、私が愛したいの。

 その弱さもまとめて、その人という人間なんです。その弱さは、彼の優しさから来ているものだから、私にとってはむしろ羨ましい、素敵だなと思う。それをね、ちゃんと日々伝えていきたいと思うの。肯定し続けたい。


 恋人だからさ、当然だけど私は彼のことが大好きです。だけど、それにはなかなか理由をつけることができません。明示的に表現することはちょっと難しい。

 だけどね、好きである前に、私は彼のことを人としてとても尊敬しています。彼のような人間になりたいと日々思ってます。彼は私にないものをたくさん持っている。そんな素敵な人だからこそ、好きになったんだと思うんです。具体的にここが好きっていうよりも、彼という人に惹かれました。きっと、そう。

 恋人だからさ、いいところばっかりを知っていても意味がないと思うの。ダメなところ、それこそ弱いところも理解して、そこも丸ごと、その人として認めることが大事なんじゃないかと思う。別にね、許す必要はないの。でも、受け入れるというか、そういう姿勢が必要なんじゃないかな。と、そう思います。

 まあ私は恋愛経験が乏しいので実際のところなんて分かりませんが、これは私の価値観なのでそっと眺めておいてください。私はそうありたいなと、思うわけです。


 そんで、これは一方的に思っていてもダメだと思う。価値観の一致が大事なのでね。私は、恋人っていうのはこういう関係だと思うの。と伝えて、うん、俺もそう思います、と。少なくとも、恋愛というものに対する価値観は、私たちは一致しました。ありがとう。

 ということなので、私は彼の弱さも、未熟さも、全部まとめて受け入れます。全部まとめて好きです。そこも含めて好きなんです。そこも含めて、彼に恋人でいてほしいわけです。

 そして、そんな素敵な人に似合うように、私も素敵な人間へと進化を続けたい。私はね、我が強いというか、自分を強く主張してしまうところがあります。嫌なことは嫌と、ダメなことはダメとはっきりと口にしてしまう。だからこそ、後輩からは怖がられてしまうことが多い。

 そしてそれが転じて、言わんでいいことまで口にしてしまう。お口を閉じなさいと、よく友人や同期から注意されます。これでも多少はましになりました。でも、やはり言わんでいいことを言ってしまうことはまだあります。本当によくないですね。誰かを不快にしてしまうから。

 だから、彼みたいに人に優しくありたいの。逆に彼は、部長でありながら後輩を叱ることができないかったので、私のように嫌われることをいとわずダメなことをダメとはっきり言えるところを尊敬すると言ってくれます。また、基本的に人任せで受動的な性格なので、能動的に行動するという私の性格も同じように尊敬してくれている。

 こうやって、互いに足りていない部分を尊敬、尊重し合い、それを目指しながら、そして補い合いながら生きていくことが、きっととっても大事だと思うの。そう考えると、こんなにも凹凸が重なりあっているのだから、私たちはきっと、互いにとってポジティブに作用することが多いんじゃないかな。


 ああ、すごい長くなってしまった。それだけ恋人のことを想っているという、総じて惚気であると受け取っていただいて大丈夫です。先日も久しぶりにゆっくりとした時間を過ごせて、改めて好きだなあと感じました。ずっと一緒にいたいなあ。ずっと隣にいてほしいなあ。ずっと、笑っていてほしいなあ。です。


 さて、明日も一緒に大学に行く。というか授業の後同じバンドの練習がある。そういう関わり方は、学生でいるうちしかできないから、大事に生きていきたいね。

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