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恋愛痰

 恐らくだが、僕は人間関係の構築が下手である。いや、構築は得意の部類かもしれないが、持続ができないというのが正しい。新規開拓に優れているが一発目の仕事で出禁になるみたいなところがある。

 さて、そのフィールドが恋愛になってしまえばもう手に負えない。折角なので今日は恋愛の終わる瞬間に注目してみたい。ぬらぬらと光る恋愛痰を吐き捨てていく。

 小5の時の彼女の話。あ、少し待て。キスやまぐわいをしていないくせにカウントするなと思ったお前。その考えは相当腐っている。恋愛は好きって気持ちの確認がとれたらそれでいいのだ。醜い性欲を捨てろ。

 話を戻して、Mちゃんは学校で一番背が高くて大人びていたので、クラスの男子の半数は彼女のことが好きだった。だから、臨海学校にてグリーンアップルの色ペンで書かれたラブレターをもらった時、勝ちを確信した。

 専ら連絡手段はPCメールでのやりとりだったのだが、僕は早速間違える。「好きな人と連絡とれるの嬉しい」という彼女からのメールに対して「え、好きな人いるの?」と返したのだ。いや、もちろんわかっていた。好きな人=僕だ。でも僕は「好きな人ははんぺん君だよ」というワードを引き出したくてとぼけてみせたのだ。しゃらくそ。案の定「なんでわかんないの!鈍感!無理!」と言われ、僕は鮮やかにシングルに返り咲いた。キモい駆け引きをするからだ。

 中1の時に付き合った彼女。肌が白すぎて最早ほんのり赤い女の子だった。「あんな美人、チラ見するだけで宿題捗るわ」と前髪が長いのをいいことにめちゃくちゃ見ていたら、スッとノートの切れ端を渡された。開くと連絡先が書かれていて僕は数センチ飛び上がった。ほどなくして付き合うことになったが、僕はまた速攻間違える。彼女が嫌がっているのにも気づかずに「なんかお姫様みたいだから、これから姫様って呼ぶね」とイカれ発言を繰り出し、勝手に終焉への一歩を踏み出したのだ。そして1か月が経つ頃には、僕が当時運営していたホームページの掲示板が何者かに荒らされ始める。「はんぺんの声が無理。送ってくる内容ホントキモイ。顔も見たくない」という手榴弾みたいな投稿の連鎖。何を隠そう、犯人はマイスイートプリンセスであった。あの、明日からまた教室で会うんですけど。

 中2の時にお付き合いした彼女。ちょっと家庭に不和があったけど、フレンドリーでいい人だった。僕は早速彼女の誕生日に自作のポエムを綴り、あろうことか母親が何かに使うかもと保管していたリボンをかけてプレゼントした。彼女はありがとうと言いながらその紙切れを僕に返した。

 まだ決定打ではないことに驚きを隠せないかもしれないが続きがある。その事件はディズニーランドでWデートをした夜に起きた。「今日は楽しかったね」というメッセージに対して「今までが大嫌いだったくらいに今日君のことを好きになった」という怪文書を送り返す愚か者がいた。もちろん僕だ。やっぱりだけれどうまく伝わらずに「え、私のこと嫌いだったの?」と誤解をされ、電撃解散を果たした。

 とまあ、ここまでは子どもの過ちで済みそうなものであるが、残念ながら、成人をしてからもその痛さは変わっていない。生々しいけど披露して進ぜる。

 マッチングアプリで趣味の合う友達を探していた時、とある方と仲良くなりお出かけをした。珍しいことに無限に話が弾むその人に僕は恋心を抱いた。そして、2回目のデートで告白をしてその晩にはOKをもらったものの、翌々日にやっぱりなしと言われた。恋愛クーリングオフである。その理由を聞きたくて通話をすると、「好きかどうかもわからないのに答えを出してしまった」という内容だった。彼女は本当に一生懸命僕のことを考えてくれて、言葉を慎重に選んで話した。だから僕は彼女にこれ以上思い詰めて欲しくなくて「君は悪くないよ、というかプロフには友達を探してますって書いていたのに、告白してくるなんて詐欺じゃない?そもそも最初からそういう目的だったんだよ」と本当は全然そんなことないのにめっちゃ嘘を吐いた。「俺ってやり口がきたねぇよなぁ、そう考えたら俺の方が悪くない?」「70%くらい悪いです」と彼女に言われて僕は満足した。どうかこの子には笑顔でいて欲しい。好きな子を苦しませるために告白したわけではない。けれどとてつもない悪手なのは確かだ。平気の平左で嫌われにいってしまうのは何故だ。なんでこんなやり方しかできないの、お前(俺)。「俺、全然大丈夫だから!気にしないで」と通話を切った後に僕はヤムチャの姿勢でベッドに入った。呼吸が浅くて苦しい。さらにそこから2,3日何も食べられないほどに落ち込み、自律神経が乱れまくり、一睡もできないまま仕事に行き、業務中は冷や汗が止まらなくなった。お前の大丈夫、あんまり大丈夫じゃないみたい。

 いかがでしたか。皆さんの心の痰壺が水面張力を起こしているので打ち止めとします。本当はまだエピソードはあるのだけれどもう十分だろう。簡単に言えば僕は人間関係破壊活動家である。しかも神風特攻型の。

 ここまで読んでくれた人に対しても当記事を通すことで破壊活動を実施している。なんて抜かりのないテロリストだろう。惚れ惚れしてしまう。え、誰に惚れ惚れするって?よくわからないなあ。

2023年11月9日夜 自室にて どの子の目にも絶対触れませんように、秋。


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