4月8日

 何ひとつ上手くいかない日というのが時にある。今日がそんな日だった。
 マンモグラフィでは異常なかったが、エコー検査も無料で受けられると、
先週、検診先から電話をもらった。曜日と時間限定で、今日がその最初の日。朝一で病院へ行くが、受けられなかった。昨日の緊急事態宣言の影響で、検診関係は全て断っているのだと…。
 予約本の引取りも、昨日の時点でキャンセルを余儀なくされたので、午前中の予定が皆無になった。準備していても何ひとつ達成できないと、もやもやする。必要な買い物を先に済ませようと、ドラッグストアへ行けば、平日なのに結構な人出だった。皆、することも行く所も無いのだ。
 結局、頼まれたものも合わせて1万円近く使ってしまった。使う予定だったお金を、使う機会がどんどん無くなって行ったし、それが必要な消耗品に取って代わっただけなのだから大きな問題でもないのだが、無職なのに、一度にこんなに使って大丈夫だろうか…と心配が湧き上がる。
 
 午後から面接へ…。インターホンを押した時から心がざわつく。探していた職種ではあったが、環境に関して言えば、二度と戻りたくない場所でもあった。
 応募要件も満たしていないというのに、面接に来いと言ったトップは好々爺という感じ。履歴書の上から下までを声に出して読みながら、途中から合流したトップ2に、その全てを指でなぞりながら伝える。良い人なのは見ていて分かったが、すごく無駄が多い気がした。しかも人の話、全然聞いていない。履歴書の文面も、ちゃんと読んでいない。誤解が多く、ひとつのことを説明するのに何度も訂正を要した。
 一方、人当たり良く受容的なトップに対し、トップ2はきりきりとして手厳しい。恐らく、人手が無いとはいえ、応募要件も満たしていないのに面接の機会を与えたのは、不本意だったのではないかと想像する。雇用条件等の詳しい説明もなく、仕事内容も漠然としたまま、質問はないかと訊ねられて困った。募集要項以上の情報があるなら…と求めたが、一切回答はなし。ぎこちなく面接は終了。手応えがまるで無かった。
 昨日、慌てて予約した他市の図書館では、予約本の引取りが可能になっていた。勤務先の市で登録したが、既に退職しているし、図書カードの有効期限もどうやら切れている。ダメ元で赴いたが、何と、貸出出来た。これで二週間は活字に飢えなくて済む。
 
 帰ったら、前の職場の健康保険資格喪失証明書が届いていたので、そのまま役所へ直行する。今日の面接先に就業する予想が付かなかったからだが、国民健康保険と国民年金の手続きを滞りなく済ませられて良かった。ついでに、二ヶ月先まで予約している稽古場が、緊急事態宣言の影響で休館することをたまたま知り、予約変更手続きをする。そう思えば、何ひとつ上手く行っていないわけではないのかも知れない。
 
 夕方電話が鳴り、面接先から、「暫く時短で働いてみないか」と言われた。時短=時給のアルバイト。職場の様子を知って、慣れてから正社員で…という意向らしいが、時短期間がどのくらい続くのか、ゆくゆくは本当に正社員採用してもらえるのか、まるで保証がない。辞退することで不採用となった。
 提出した履歴書をどうするか…と言われ、返送をお願いする。処分してもらっても問題ないが、不採用にされているのに個人情報を預けたままというのは気持ちが悪い。送料くらい払ってもらっても罰は当たらない気がした。
 よくよく考えて違和感を覚えた。面接での質問事項に、家族関係への質問が及び、ありのままを答えたのだが、あれって本当に必要だったのかと…。訊くことで何の意味が?と思う。調べてみると、場合によってはNGという見方がある様子。答えたところで大したことではないと思ったが、三人きょうだいで家を出ていないのは長子の私だけなので、〝下は自立してるのに、あんたはええ年してニートかよ〟との印象を与えなくもない。客観的に見れば、良いイメージの方が無い気がした。
 
 一年も前に送った原稿について、文庫本の自費出版を提案する電話が入る。買い物に行っている間に一度かかってきたらしいが、わざわざ夕方再び掛けて来たらしい。自費出版専門とは知らず、過去に何度か原稿を送ったことがあり、その度に出版を提案する見積書が送られてくる。作品に対する書評が入っていることもあったが、受話器の向こうは作品名すら口にしないので、本当に読んでいるのかどうか怪しい。応募者全員に片っ端から電話を掛け、数打ちゃ当たるの精神で食いついて来る経済的に豊かな人材を顧客にしているように思える。書くことが生業になれば良いが、現実的ではないと感じているので、形の見えない夢に投資する現状にはないことを伝える。私が書いたものが本になるのは、正社員で就業し、ボーナスももらって、満足の行く収入を得ながら、自身の道楽に投資しても良いと思えるくらい、経済的に豊かになった時だろう。自費出版なら可能…というレベルの文章は書けているとわかったので、それを実現するために今しなければならないのは、生きて行くためにまともな仕事を手に入れることだ。
 それにしても、2月末に、別の出版社から同じく費用持ちの出版話がメールで送られてきた。こちらは電子書籍。その方面にはまるで興味がなく、スルーしたままその後、音沙汰なしなのであるが、何ヶ月も前に出した原稿に対し、今頃?と思える時期にオファーが来る意味がわからない。やはり〝数打ちゃ当たる〟の一部なのであろうとしか考えられない。
 下積みとしての価値しかないと判断されたり、プロには向かないという現実…。仕事を得るってこんなに難しいのかと思ったら、生きて行くのが嫌になってくる。
 現在のところ、応募しても駄目になるパターンばかりだが、いずれも何処か妥協していた。心からしたい仕事では無かったり、待遇は良いが、通勤にえらく時間がかかるもの。希望の職種だが、給料が希望に一歩及ばず、また、望む職場環境ではない。そのせいか、ボツになってもひどく傷ついてはいないので、まだ前向きに生きている。
 就活に関し、3件ほど同時進行で応募している方が上手く行き易い…と書いてあるのを見た。しかし、同時期に3件、応募したいと思える求人が先ず無いのである。したい仕事が無い。働きたい職場が無い。必要最低限の希望条件すらクリアしてくれる求人自体、なかなか見つけることが難しいのだ。それに何故か、一カ所に応募中だったり、結果待ちをしている間、他に少しでも応募したいと思えるような求人が、まるで見つからない。3カ所同時進行神話があるというのに何故なのだろうと思うが、単に自分が応募できるような求人が少ないだけとも言える。仕事を選べないタイプの経歴でしかないのかも知れない。
 今まで努力しないことはなかったし、経験を積むことで出来ることがどんどん増えたと思っている。しかし、今日の面接では、前職に関し、理解の無い見下げた発言を受けた。上手く説明できなかった私に非があるのかも知れないが、職種への先入観や差別を直に感じ、自らの経歴に価値は皆無であるという判断を突き付けられたようにさえ感じた。
 20年、遊んできたわけではない。しかしそれを理解してくれる人や職場が、一体幾つあるのだろうと思う。
 必ず辿り着けますように…。そう願うことしか出来ない。

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