7月3日

 3回目の失業給付認定日。間もなく給付が終わるというのにまるで進展しないせいで、流石に気が重い。駐車場の入口が大渋滞で、横柄な警備員の対応にイラっとする。入る頃には感じの悪いデブ親父は背を向けて去って行く所で、駐車券対応をしてくれたのはシフトチェンジしたらしい華奢で謙虚なおじいちゃんだった。
 いくつか気になっているが決め手に欠ける求人の応募状況を聞こうと、職業紹介の順番を待つ。今日の窓口は女性が多いのでちょっと安心。男性職員より丁寧で細やかなので、質問もし易い。
 一人の対応が終わる毎に、事務処理をするようで、【只今事務作業中です】という案内表示がカウンターに置かれる。電光掲示板に自分の番号が表示されるまであと一人になったので、時間潰しで記録していた手帳を仕舞った。
 一番前に座っていたため、呼ばれるであろうカウンターに座っている職員の姿が見える。二人共女性。事務作業は終えているようなのに、何故か一向に掲示板が動かない。どちらに呼ばれるだろう…と待っていると、目の前の二人はお互いを相手に談笑を始めた。声は聞こえないが、仕事の話をしているようにはどうしても見えない。凝視するが二人は話し続ける。どうなっているのかと思った。
 話し込んでいるのを見つめていると、5分程してようやく電光掲示板が動いた。呼ばれたカウンターは、先に作業を終えているように見えた右側ではなく、何故か左側だった。
 一番気になっていた専門学校の事務職員は、一人の採用枠に対し、既に26名が応募していた。求職サイトの担当から連絡が途絶えた途端、ハローワークに掲載された求人は、就業開始が9月となっているせいか、まだ、一人も応募されていなかった。
 前者への応募は、同じことを繰り返す気がした。
 後者は、そもそも信用出来なくなっている。9月はまだ先。先走るのは、本当にしたい仕事との出合いを妨げる気がした。
 片っ端から書類選考に落ちるので、紹介状返送の際には不採用理由を書く欄があったはず…と思い、質問してみる。しかし細かい理由を記されることはほぼないとの回答。直近のもので唯一、【予想以上の応募をいただき、断腸の思いで…】といった内容の不採用理由が記されていたと聞いた。それはつい先日、求職サイトに年齢と学歴に制限を設けて求人を載せていた病院。制限を設けていなかったハローワークのものと差異があったことを話したところ、「よくあること」だとあっさりスルーされる。ひとつでも応募する気になったら、この際、履歴書や職務経歴書の添削を願い出るつもりであったが、今日は止めるようと思った。
 親切丁寧な中年の女性職員の物言いは穏やかで、帰る際にはわざわざ立ち上がって頭を下げ、見送ってくれた。
 一体何をどう信じたら良いのか判らなくなって来る。今日、応募状況を確認した中には、何ヶ月も前から出ている求人も含んでいたが、誰も応募していないわけではないのに、人を採っていない。応募条件のハードルが高いわけでもないのに、何故そこまで選考が長引くのか謎でしかなかった。
 ここへ来る前、雨の中、前回神頼みに行った神社へ就職祈願に行った。満額出ないが、あと一回、認定日がある。
『その時、もう一度祈願に来て、それでも何も変わらなければ、次は就職が決まるまで来ません』と、先にお断りする。神が聞いているかは謎だ。その後、ハローワークに行ったものの、何も変わらなかった。一通り嫌な思いをして、一応挽回はされて帰って来た気はするが、やはり何度行っても疲れる。
 帰りに図書館に寄った。雨の平日で、しかもコロナの余波で、人は殆どいない。予約の本がなかなか届かないが、活字中毒なので手ぶらで帰るわけにもいかない。興味を引くものを探すが、ろくなのが無かった。
『図書館って、こんなにつまらない本ばっかりだったっけ?』
 コロナ禍で人員を減らしているせいか、どの書架も乱雑さを極めていた。探すだけでも疲れる。
 自身が命がけで整備していた学校図書館の書架を思う。私ならもっと綺麗に出来るのに…ってそもそも、こんな時だから整理に時間を掛けられるのではないのか?人員、減らしている場合ではないだろう。行政のやることはわからない。
 結局、昼を大幅に回り、遅い食事を摂って外干ししていた洗濯物を部屋干しにし、30分も寝たら母を迎えに行く時間になった。
 ハローワークという場所はエネルギーを吸い取られる。早く、もう二度と行かなくて良い身分になりたいと、心から思った。


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