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選歌 令和6年2月号

喜びも悲しみさへも語り合ふ友の居たりてそれで十分

西原 寿美子

どちら様の狭庭荒らしの野良二匹糞処理係今朝もいそがし

橋本 俊明

こらへるといふ事もまた老いてゆくプロセスとして心に収む

広瀬 美智子

赤ん坊のあーあー泣いてる雨のバス  みんな海から生まれてきました

森崎 理加

点点と湖にか森崎 理加りがね浮くころぞ遠まはりして診察に行く

渡辺 茂子

作りおきの秋の味覚を並べ置く吾の胃袋ひとつにあらず

井手 彩朕子

悔恨の叫びの色に空を染め秋の夕陽は山に入り行く

高田 好

これからは人工的に雨までも降らすという記事パンかじりつつ読む

高橋 美香子

自分のこと僕と呼び初み六歳は紅葉の今日に脱皮をしたり

三上 眞知子

虹色のマフラー失くせりゆらゆらり松の林に掛かりてをらむか

山北 悦子

午後の紅茶  お抹茶入りのポカリです夕食前に買つた飲み物

高貝 次郎

独り居の屋敷荒草熊被害父植えし太き富有柿も伐る

田口 耕生

木の箱に鰰たっぷり輝やかせ行商人来し杳き思い出

田中 春代

熊の来るパラダイスという柿の木の里いっぱいに夕日輝く

永田 賢之助

無料塾二時間終えて帰路バイク師走の風の冷たさに耐ゆ

松下 睦子

少額でキングサイズの物探す男の鞄買い物籠に

渡辺 ちとせ

遠き日の「花摘む野べ」を思ひ出す摘みたる花を図鑑に問はむ

伊関 正太郎

米質に高温障害まざまざと白斑のつく米粒多し

佐藤 愛子

大空にクレーンするどく伸びており造船の町活気のあかし

草刈 あき子

電話なる賀状の断りながながと言葉はつづく心くだきて

才藤 榮子

一年は長きものだと思いしに今、時過ぎるは駆け足のごと

大野 雅子

免許証返納してのかち歩きゆるりと行かば風走りゆく

山口 みさ子

照柿の色へと染まりゆく空に形変えつつ椋の群れ飛ぶ

髙橋 律子

戯れに朴の落葉を思い切り踏んで確かむ秋の深まり

田村 ふみ子

数多い家事の仕事を分担す出来ないことが余りに多い

田中 章

山里の野守が庵こそあはれなれ染まりたりける木の葉ちりしく

石谷 流花

指先に花びらの香を移しつつ甘酢に和える食用の菊

上村 理恵子

白旗を掲げるように純白のハンカチ一枚小春の光

奥井 満由美

原発に異を唱うれば龍一も仕事減りたり  見えざる力(故坂本龍一氏)

鎌田 国寿

一筋の飛行機雲のつれなさや秋に心を晒し佇む

財前 順士



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