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八首抄 令和6年5月号


橋本俊明選


雪解けの進む光の畦渡る乾ける土の足に和らぐ(田口耕生)

介護中ありがとう言う夫なれば私の中にそよ風が吹く(山口みさ子)

八十九の老女を手本と医師言へりそれはわたしか笑ふほかなし(渡辺茂子)

まるまりて行き場なくしし鳥のごとただ黙しいる如月の今日(北岡礼子)

願えども世界平和は手にできぬ水に映れる月の如くに(高橋美香子)

なさけ深ききみが面影抱きつつ博多男子をのこは東へ下れり(石谷流花)

冬期なる土手の柳の静もりて街川の面鈍く昏れゆく(田中春代)

辛党でも喜んでくれたかも知れぬバレンタインの佇古麗都なら(高田香澄)


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