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八首抄 令和6年3月号

臼井良夫選 


白壁の反射眩しく恐縮をしてゐる様な一日終はる(広瀬 美智子)
 
点滴を終えたスタンドぽつねんと手持ちぶさたに病室にあり(青山 良子)
 
晩年の念いこころに刻みつつ令和五年も暮れゆかんとす(佐藤 愛子)
 
前立腺癌と闘ひをりながら一合を呑む晩酌の味(高貝 次郎)
 
暗闇に蛍光灯の紐探すこの世のわが手 犍陀多のごと(佐田 公子)
 
怒る人寡黙なる人認知症の相席にして和めるホーム(仲野 京子)
 
来てくれた七・四・二歳に囲まれて除夜の鐘聞く吾が誕生日(田中 章)
 
向日葵からひまはりまでを一匹の蜘蛛の張りたる糸が光りぬ(友成 節子)



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