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選歌 令和5年11月号

パンクしたママチャリ重く押して来る己の影も引摺りながら
臼井 良夫

静かなる傍観者の如く立ち尽くし縄文の名を負う私の大樹顔
児玉 南海子

朝より雨のち雨のひと日には老夫と久びさ語りて過ごす
今野 恵美子

青空もひと月見ればこころ萎ゆ水待ち顔の庭見ればなほ
高田 香澄

ふかふかの蒸しパンのような赤ちゃんの足に触れたしこの手は不浄
高田 好

コツコツと亡父の杖の音胸を打つ逝きたる日より七度目の夏
高橋 美香子

夜に見て明け方にまた掌を合はす次に逢ふことなけむ月
橋本 俊明

赤々と西日の照らす柿の実に明日の鋭気を満タンとする
藤田 直樹

朝々のラインの便りいつしらに待ちたる我に朝顔の碧
松下 睦子

ゆさゆさと花房ゆらす百日紅感傷淡く街並をゆく
渡辺 茂子

男の孫はうざいうざいと言ひながら親との糊しろ調節しをり
岩本 ちずる

こうべ垂れ巫女より受ける鈴祓すずはらい 水無月みそかはの輪をくぐる
鎌田 国寿

遺影なる夫は見ており子や孫ら墓参を終えて飲み食べ騒ぐを
玉尾 サツ子

両の掌に享けし祝賀の花束を明日へと生きる玄関に活く
青山 良子

止むとなき線状降水帯の只中を車走らす約束に向け
井手 彩朕子

台風は力の限りあばれては獣の如くふり向かず去り
広瀬 美智子

満開の紫陽花園をめぐりつつ究める思ひ歩くも愉し
渡辺 千歳

ウクライナ コロナも豪雨も山火事も日常と化す今を生きてる
小笠 原朝子

笑まいして「やあじいじ」の一言に手もなくやられ差し出す小遣い
財前 順士

どの家も一つ二つの影潜め月夜の下に眠らんとする
三上 眞知子

青色のとんぼに君は乗せられて光ふり撒き夏を翻る
山内 可奈子

乗り込める電車と海の出会う頃心の針の方位定むる
建部 智美

ひと息に抜いてしまったささくれの痛みもどかし猛暑日の午後
仲野 京子

気分換え白いブラウス選びたるお洒落心の僅か芽を出す
富安 秀子

どの家もどの家もみなさっぱりと剪定されて盆に向く庭
藤峰 タケ子

サイダーを零していける夏の日の瀬戸内の海青きべタ凪
本間 泰世

あれだってあれがあるからあの人は 隣の会話がジャズをしている
森崎 理加

日焼けせる青年の脚たくましくリズム乱さずわれを過ぎゆく
山北 悦子

午後三時炎暑の街を見下ろせる雲よ恵みの影を落とせよ
山口 美加代

店員の中に三人シニアありマスクの向こうの温かき皺
渡邊 富紀子



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