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【51】12月本棚ストーリーとリスト 「博士はどこから」

12月本棚X’masスペシャル
テーマ「博士はどこから?~紀元ゼロ年のX(カイロス)~」

ストーリーとリストをご紹介します!

《ストーリー》
この時期、いろんな心温まるストーリーが聞かれますが、星に導かれた「東方の博士」たちのストーリーに心ひかれます。東方とはどこでしょう。「東の方」にいる私たちからすると興味深いところ。

紀元ゼロ年前後、世界各地で、博士(ギリシア語でマゴイ)を生むような思想的興隆がありました。

博士は3人でよく描かれますが、推理小説家の名前に似た作家の『もう一人の博士』を出発点に「東方」の旅路をたどってみましょう。

といって、まず挙げるのは「西」のローマ。キケロは、カエサルとの政治的競争も興味深い「博士」です。ギリシア哲学の流れの4学派、アカデメイア派、ストア派、ペリパトス派、エピクロス派が立ち並び、キケロは4派を乗り越え、ヨーロッパ思想の基礎を築きます。

さて「博士」の有力候補は、バビロニアやぺリシアの占星術者ですが、紀元ゼロ年両帝国はすでに滅びて、あまり世界史で印象のない「パルティア」という国がありました。このゾロアスター教が西にも東にも影響を与えたとのこと。

インドではリグ・ヴェーダ以来の思想が展開され、「マハーバーラタ」「ラーマーヤナ」などの叙事詩や「マヌ法典」が成立。「バガヴァッド・ギーター」は「マハーバーラタ」の中の愛唱詩。

パルティアとも接するインド西部では、仏教から大乗仏教が生まれます。主に中国で流通した『大乗起信論』は、後にジョン・ケージやスティーブ・ジョブスに影響を与えた禅僧・鈴木大拙が英訳。同時期に中国の戊戌政変の背後にいたティモシー・リチャードも英訳しました。

そして中国。平家物語でもけなされる王莽は、同時期のカエサルよろしく、政治的権謀を繰り返し、ついに漢帝国をほろぼし、「新」皇帝の座に。
この時代、五経各派の「博士」が立ち並び、今文学派、古文学派の争いがありました。これが帝国の正当化に利用されました。精密な天文学もできました。権力闘争に失望して、「西の星」に期待をかけた「博士」もいたかもしれません

→今回は動画でも紹介しています→ https://www.youtube.com/watch?v=LWTTsEY3gK0



《リスト》
☆『もう一人の博士』ヴァン・ダイク作 岡田尚 訳 佐藤努 画 新教出版社 1983
☆『The Parallel New Testament Greek and English』1896
☆『キケロー』角田 幸彦 清水書院 2001
☆『新ゾロアスター教史』青木健 刀水書房 2019
☆『バガヴァッド・ギーター』上村勝彦 訳 岩波書店 1992
☆『大乗起信論』宇井伯寿 訳注 高崎直道 訳注 岩波書店 1994
☆『王莽―改革者の孤独』渡邉義浩 大修館書店 2012
☆『元年春之祭』陸秋槎 稲村文吾訳 早川書房 2018

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