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自転車保険に加入していないFPが軽自動車に追突してしまった自転車事故の顛末と「自転車保険義務化」の意味

全国ほとんどの都道府県は、条例により自転車保険の加入義務(もしくは努力義務)を定めています。わが熊本県でも、2021年10月1日より義務化されていますね。

さて、これから語るのは、ちょうど3年前、2020年1月にFPである私の身に実際に起こったお話しです。

自転車事故は突然に

その日は午前中に、整体の予約をしていました。予定通りに施術を受け、愛車のロードバイクで帰宅の途についたのは、大まかに11時前後だったと思います。
ご存知の方もおられるかと思いますが、ロードバイクのタイヤは通常の自転車と比べてかなり細めで、幅にして2.5cmほど。このタイヤが、走行中に道路舗装の隙間にはまり、ハンドルをコントロールできなくなってしまったのです。
また、タイミングが悪いことに前方の交差点で信号が赤に変わり、前を走っていた車両は順次信号停車。あるいは信号が青のままであれば走り抜けるスピードで体勢を立て直すことができたのかも知れませんが、その瞬間の私の状況としては、自転車で走っていたら急に目の前に壁が現れた状態でした。

次の瞬間、我に返った私は、アスファルトの上で「ここはどこ?」状態。しかしほんの数秒後には、停車中の軽自動車に追突した瞬間の映像が脳内に巻き戻り、慌てて運転席に駆け寄って、いの一番に運転手さんにお詫びを申し上げた次第です。
この時点では、車に付けてしまったキズについて賠償をさせていただく旨をお伝えし、連絡先をお尋ねしたところで帰るつもりだったのですが・・・
(だって、いい大人が公衆の面前で自転車でコケたんですよ。一秒でも早くその場を去りたいってもんじゃないですか)

自転車を起こそうと数メートル戻ったところで、ベビーカーを押しながら歩道を歩いてくる2人連れ(お子さんを合わせると4人?)のママさんが駆け寄って来るのがわかりました。
「大丈夫ですか?」
「血が出てますよ。拭いてください」
ご親切にポケットティッシュを取り出して、見知らぬ私に差し出してくださったのです。
「ありがとうございます」
親指と人差し指、2本の指でティッシュペーパーを1枚つまみ出そうとした私に、彼女は袋を引き裂いてその中身を束のままぜんぶ手渡してくれました。
「頭を打たれてます。押さえてください」
その瞬間まで、着ていたダウンコートの前面が、全面的に赤く染まっている自分の姿を私は全く把握できていませんでした。(そのまま自転車に乗って帰る気満々)
どうやら転倒した瞬間、地面に頭を打ったことで派手に流血していたみたいです。(血まみれで自転車漕いでるおばちゃんって…ホラーだよね)

そして漫画みたいな話ですが、事故現場はちょうど消防署の目の前。親切なママさんが消防署に駆け込んで救急隊員さんを連れて来てくださり、私は救急車に収容されるという流れに。さらに道路を挟んだちょうど向かい側には交番もあって、おまわりさんも駆けつけ対応してくださいました。

救急車で病院に運ばれた後、CT検査で異常のないことを確認。頭を7針縫っていただくことで処置が終了。
「頭は血が出るけんね~」
と、看護師さんの冷静な言葉通り、体には見た目ほどの痛みを残すことなく治療を終えたこの日、一番痛かったのは予定外に降り注いだ病院代7,450円の請求でした。

被害車両への賠償

前置きはここまでとして、本題の「追突事故の賠償」の件ですが、タイトルにもあります通り、当時も今も、私は自転車保険という名の保険には加入しておりません。
ということは・・・ご迷惑をおかけしてしまったお相手様への修理費用その他については預金を取り崩して?
そこはもちろん!お金のプロ、FPである私は、火災保険で賠償させていただきました。いいえ、正確には、火災保険にオプションで付帯していた個人賠償責任保険特約がその真価を発揮してくれたことになります。

個人賠償責任保険とは

個人賠償責任保険とは、その名の通り、個人が、日常生活において、法律上の賠償責任を負ってしまった場合に、その被害者に対して金銭的な補償を行うための保険です(自動車事故や業務上の賠償責任は対象外)。

守備範囲は非常に幅広く、今回のように
・自転車でぶつかって人や物に損害を与えてしまった
場合をはじめ
・ショッピング中に誤ってお店の商品を壊してしまった
・子どもが友達と遊んでいる最中、誤って相手をケガさせてしまった
・ベランダから誤って物を落下させ人や物に損害を与えてしまった
・集合住宅で水漏れを起こし階下に損害を与えてしまった
・飼い犬が散歩中に他人に吠えつき、相手が転んでけがをしてしまった
など・・・様々な損害賠償のリスクに対応できる保険です。

また、補償を受けられる対象者が幅広いことも大きな特徴で、
①記名被保険者(=保険の対象になっている人)
 だけではなく
②記名被保険者の配偶者
③記名被保険者および配偶者の同居親族(ここに子も含まれます)
④記名被保険者および配偶者の別居の未婚の子
も補償されるという一家に一契約の超お役立ち保険です。

補償額の上限を「1億円」「2億円」あたり、あるいは「無制限」に設定するのが一般的かと思いますが、保険料は非常に安価で、月50~200円程度が標準的な価格帯であると把握しています。

またこの保険は、単独で契約することも可能ではあるものの、火災保険や自動車保険、傷害保険など、他の保険にオプションとして付帯することができ、むしろその方が契約数は圧倒的に多いのではないかと思います。
実際のところ、既に加入していることを知らないまま他の保険にも付けてしまい、3つも4つも契約なさっているご家庭ともたびたびお会いします。

ちなみに、損害保険の補償は実損填補が原則です。仮に「1億円」で契約しても、それはあくまで一事故あたり補償の上限額。実際の損害額が10万円であれば補償されるのも10万円です。
では、各「1億円」の契約を2社と結んでいたら?
それぞれから10万円ずつで合計20万円・・・ではなくて、実際の損害額10万円が、2社からの按分により補償されます。
という訳で、複数契約が功奏するのは、1契約でカバーしきれないほど高額の賠償責任を負ってしまった場合のみ(一般的に億単位ですね)。
いかに保険料が安くとも、ダブり契約はただの無駄です。もし複数の契約をお持ちであれば、補償額と保険料を確認の上、最も有利なものを残し、他は解約(オプションを外す)されてはいかがでしょうか。

「自転車保険加入義務」の意味

さて、自転車保険加入の義務化が進んだ背景には、自転車による重篤な事故が度々生じている件があります。中には、裁判所から億に迫る高額の賠償命令が言い渡されたケースもいくつか。
もちろん、悲しく悲惨な事故は起こらないことが一番です。しかしながら、誰も望んでいないのに起きてしまうのが交通事故。万一のときに、せめて金銭的な責任だけは果たすことができるように備えておいてくださいね。それにより、被害者・加害者双方の痛手を和らげることができるのです。
・・・というのが義務化の主旨です。

ちなみに、熊本県の当該条例には
「自転車損害賠償保険に加入するよう努めなれけばならない」
と書かれています。
自転車保険という名の保険に加入することではなく、
自転車事故の賠償責任を果たすことができる保険に加入すること。
ここ大事!(試験には出ません)

自転車保険って?

では、自転車保険ってどんな保険なの?って話ですが、保険会社によって細かな補償に差異が見られるものの、基本的な構成は
自転車保険=交通傷害保険+個人賠償責任保険
の式で成り立ちます。

まず交通傷害保険部分ですが、交通事故を原因として、ご自身に死亡・後遺障害、入院、通院などが生じた際に補償を受けられる保険です。
自転車保険の名の通り、補償対象を「自転車事故によるケガ」に絞り込んだ商品もあるものの、「交通事故全般」とするものも数多く見受けられます。
このとき、払い込む保険料は、一般的に補償対象が幅広いものほど高く、範囲を絞り込むほど安くなります。
そして、個人賠償責任保険は先にお話しした通り。
繰り返しになってしまいますが、自転車保険とは、自分の損害について補償を受けるための交通傷害保険と、相手の損害を補償するための個人賠償責任保険がパッケージされた商品なのですね(ちなみにこのパッケージ、保険料の内訳は、交通傷害保険部分が大半を占めます)。

自転車保険義務化が求めているのはあくまで個人賠償責任保険です。これについては、火災保険や自動車保険に付帯されてるなど、何か一つ契約があれば、家族全員が加入義務を満たしていることになるのです。
ご自身のケガについては、他にも医療保険など準備があることが一般的かと。追加保険料を負担してまで交通事故の補償を増額すべきかどうか、今一度お考えになってみてくださいね。

最後に

あの事故でご迷惑をおかけしました軽自動車のW様、あらためましてお詫び申し上げます。その節は本当に申し訳ございませんでした。被害者であられるにも関わらず、私のケガをご心配くださったことが身に染みております。おかげさまで元気にやっております。

そして、通りすがりのベビーカーを押したママさんには、とうとうキチンとお礼も言えぬまま…。ここでお礼を言わせてください。その節は本当にありがとうございました。また咄嗟の振る舞いに学ばせていただいたことにも感謝申し上げます。

消防署のみなさまには、病院へ搬送いただいただけでなく翌日まで自転車を預かっていただきました。また交番のおまわりさんにもお手数とご心配をおかけいたしました。ありがとうございました。

長文をお読みいただきありがとうございました。



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