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バク転の思い出(その2)

バク転がどうにか出来るようになった頃、家の前の雪道を歩く母を見つけ「みて!」と言ってバク転を披露した。母は「あらっ!」を笑みを浮かべたが、本当に驚いた顔ではなかったので、僕のバク転があまり美しくなかったのだと察した。バク転が低かったのだ。


好きな人に自慢したい。できるだけさりげなく。そして失敗するのは男の常。まず、母への自慢は失敗。

■技工室前の廊下で自滅

(既に「思い出せない💦」でざっと書いたが)中学の「技工室」の外の廊下の曲がり角で、憧れの人がこっちに歩いてくるのが見えた。そこで、彼女が角に現れるタイミングで、さりげなくバク転することを計画。その「角」は彼女が右に曲がり体育館へ行ってしまう所。僕はこっちにいるので気づかれない可能性がある。タイミングが難しい。

バク転が完成していない時期だったが、早く見せたかった。そして、彼女が角に現れるタイミングで、僕はすかさずバク転した。しかし、悲しいかな、失敗して頭から落ち、哀れな姿で廊下に倒れた。「しまった!」と思って顔を上げると、体育館に向かう彼女の後姿があった。

「見られなくて良かった」と安心したかったが、本当は「見なかった振りをしてくれたんだ」と思った。失敗した僕に恥をかかせないように。


■炊事遠足で爆死

中学校では秋に「炊事遠足」があった。食材をリヤカーに積んで南が丘海水浴場に行き、砂浜で、各グループ毎に決めた料理をして食べるのだ。カレーや豚汁が多かった気がする。

向こうまで続く崖の先の右側に素敵な岩場があった。
その崖の先を左に回り込むと海水浴場。
僕たちが写るこちら側の海は、少し入ると急激に深くなるので水泳禁止。

食べて一息ついたころ、太さ15㎝くらいの丸太を見つけた。砂浜にはいろいろ打ち上がっているもので、探すと長さ1.5m、幅30㎝位の板も見つけた。それで閃いた。それをギッタンバッコン(シーソーのこと)にしようと。

「誰がやる?」
「俺やるから、二人はそっちから飛び降りてくれ」となった。

つまり、二人が板に飛び降りた勢いで僕が空中に飛びあがり、華麗にバク宙をやってのけるという算段だ。サーカスなどでよく見かけるやつ。

華麗なバク宙を見せましょう!


この頃はバク転で失敗することはなかったし、それなりにバク宙も出来たので、この作戦は成功間違いなかった。つまり、少し離れたところの憧れの人を意識してたってわけ。

汚名返上だ!」あの日の廊下での失敗は繰り返さない。


「よしっ!」の合図で二人の仲間が飛び降りた。板は「ギッタン」となり、宙に浮いた僕の心は晴れやかだった。

だが、それは瞬時のこと。
飛び上ると同時に板がバキッと折れたのだ。

「そうだよなぁ…、砂浜に打ち上がっている板は割れやすいんだよ…」
そう気づいても、もう遅い。

板が割れたので勢いがつかない。僕はどうにかうつ伏せで着地したけど、顔中砂だらけ。鼻の穴も、口の中まで砂だらけ。これじゃ、砂に身を隠しているカレイだ!

好きな人にアピールするどころの話じゃない。周囲から「またバカやってる」と言うような目で見られながらも、男3人で大笑いした。実に、笑える話はたくさんある。(笑)

華麗にバク宙ではなく、砂に身を隠す鰈(かれい)のようだった。
帰りの様子。坂を押すリヤカーが見える。この砂浜に続く泥道の写真は貴重だ。

■男は哀れな生き物

余談だが、こんな動物の求愛行動を見ても、つくづく男って哀れな生き物だと思う(笑)。


■いまからマカコ?

YouTubeのバク転動画を見て「やはり、何事も適切な指導があると全然違う」と思った。すると、マカコという動きに出合った。初めて聞く名前。これもかっこいいんじゃない!? あの頃だったら絶対やっていたに違いない。

バク転は25過ぎてからはしていないので、もうやれないけど、今でも逆立ちも側転も…たぶん…出来るだろうから、マカコなら今からでもやれそうな気が…。いやいや、体は昔のままじゃないから、無茶しちゃ駄目だね(笑)。

でも、「マカコ」と「まこと」、名前が似ていて、なんか、誘われてる気がする(笑)。

(まこと)

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