僕の中の冒険(2)女スパーマン
流氷遊びはちょっとした冒険だった。しかも、ちょっとブログで書けない部分があるから尚更だ。
小学校の「階段飛び」は結構なチャレンジだった。中学の時の「バク転の練習」は死ぬような気持ちだったので、僕の中の冒険としては最上位に来るだろう。そして、今回の「飛び降り」も同じくらい勇気が必要だった。
野球場には季節に関係なく遊びに行った。ただブラブラ歩き回っているだけで楽しかった。
冬になると、野球場正面にできる雪の吹き溜まり目掛けて飛び降りて遊んだ。時には雪に埋まった脚が抜けなくて大変なこともあったが、それもまた楽しかった。吹き溜まり迄の高さは3メートル以上あったと思う。
空中で前回りして飛んだりもした。頭が埋まってしまうと大変なことになるので回り方に要注意だ。でもこれは、雪があるので大した冒険にならない。真の冒険は雪のない時期に起きた。
その日も友達と野球場でぶらぶら遊んでいた。そして、いつものようにバックネット裏の観覧席上部まで上がり、手すりから下を覗くと、地面に砂が積まれていた。これは初めて見た。多分、工事用に積んであったのだろう。
「飛べるべか…」
「ダメだ。足が折れる…」
なにせ、記憶の中の高さ7mはあるのだから。一般的な2階建ての屋根の高さに相当する。
飛ぶか、いや、ダメだと躊躇していると、全く気付かなかったが、隣に女の子が立っていた。それは中1で同級生だったKさんだった。そして、「何してんの?」とぶっきらぼうに聞いてきた。
「いやさ、下に砂が少しあるから飛べるかなーとか考えててさー」と説明すると、「飛べるしょ」と言ったかと思うと、あっという間に飛び降りた!
「ええーっ! 大丈夫か!!」
物凄く驚いた。だってあの高さだ。
しかし、彼女は無事に着地すると、何事もなかったかのように手を振って去って行った。
女の子が飛んで男の僕が飛ばないなんて。僕は勇気を奮って飛んだ。滞空時間が長かった。当然だ。今まで経験したことのない高さだった。
あれは僕の中でも1,2位を占める冒険だったが、この冒険談にはもう少し続きがある。
僕は彼女に負けた気がしている。もし彼女が飛ばなかったら、僕も飛ばなかっただろうから。しかし、もっと負けた気がしていることがある。これは記憶が曖昧になる前に書いておかないといけない。
それは、彼女が飛んだのは「手摺の上から」だったことだ。
僕には流石にそれは怖すぎて、僕は手摺を跨いでから飛んだ。この差は実に大きい。高さの差も、度胸の差も。
◇ ◇ ◇
彼女は突然隣に現れ、あっという間に手摺の上に立ち、颯爽と飛び降り、そして何も言わずに去って行った。まるでスーパーマンのようだった。
Kさんは今、どうしているだろう…。もし、これを読んでいたら、僕たち以外、誰も遊ばない野球場にKさん(しかも女子!)がなぜ現れたのか教えて欲しい。
(まこと)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?