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[詩]「果てに」

欠けているものがあった


心に穴が空いていた


何が足りないのか


その答えを求めるように


積み重なっていく

ルーズリーフ


目が悪くなるほど


手が黒ずむほど


知識が増える

その裏で


何が出来るかを

考えていた


詠われていく

慰みの詩


突き詰めていく

一人旅


やがて

心は満たされていった


その傍らで

ふと気になった


当然のように

一人じゃない貴方


集団の中で輝く

あの才能


私とは違う

アプローチ


そうやって


心を埋めようとした

貴方のこと


欠けているものがあった


心に穴が空いていた


思えば


はじめから

欠けていたのだろうか


その答えは

今も分からないけど


わたしはひとり


噛み締めるように


ひっそりと生きてきた


今更なんてないけれど


とっくに生き方が

板についていた


長い時の果て


積み重なっていた

ヒエログリフ


壊れそうな昔を

振り返れば


知ってしまう


心の欠片は

既に失われたことを


もう

戻ってこないことを


それでも


この旅の果てで


苦しみの先で


心の空白が

消えていたこと


塗り潰した

黒服で


大雨の中の

セメタリー


濡れた墓石に

傘を差した


先立った命の


多くの屍の果てに

生きている


そんな事実に

手を合わせて


一つの果てを

後にした


私は

これからも生きていく


ただ


未来の犠牲に

目を瞑って

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