移住生活を終える人を見て、色々考えた日

こんにちは。
自分の話ではないのですが、以前に起きた印象的な出来事について書きたいと思います。

この町に都会からの移住者が営むカフェがあります。
そこに同じく都会から移住してきた方が住み込みで働くことになりました。
経営者さんは他にも仕事を持っていてカフェを休業しなければいけない日も多かったので、そこを住み込みさんに補完してもらうイメージだったそうです。

住み込みさんはコーヒーを淹れることが趣味だったそうで、何度か飲み行きましまたが、とてもおいしかったです。
しかしカフェ勤務は初めてとのことで、コーヒーを淹れる以外の業務がなかなかできるようにならないと経営者さんが嘆くようになりました。

経営者さんはフリーランスで複数の仕事を長くやっている人で、部下を育てたりすることはおそらく未経験だったのだと思います。
一方で住み込みさんも報連相がうまいとは言えず経営者さんからの指示への対応に苦戦したり、テキパキ動くことが苦手なのか混雑時は大変そうでした。

ふたりのコミュニケーションもだんだんギスギスした雰囲気に変化していき、住み込みさんの体調不良でカフェが急遽休業になる日も何度かありました。

住み込みさんが重度のアレルギー持ちで体調のコントロールがうまくいかない日があることを、このとき経営者さんから聞かされました。

そして、ふたりいわく「当初から決まっていた予定」とのことでしたが、ある日から住み込みさんがリモートワークの仕事をはじめました。

アレルギーが出ながらも、コーヒーを淹れたり接客をしながら、レジ横のスペースでリモートワークをする日々。
カフェの仕事はどんどん回らなくなり、住み込みさんは心身共にしんどそうな顔を見せることが増えてきました。

清掃に来てくれるヘルパーさんからも「健康でない、笑顔も作れない人が、接客業をやるべきではない」と経営者さんのところに注意があったそうです。

住み込みさんの体調不良が続いたある日、経営者さんは「この仕事ぶりだと邪魔なだけです、出て行ってください」と通達します。
しかし、住み込みさんは「リモートワークの仕事を辞めてカフェに専念するから続けたい」と、話は平行線のままです。

住み込みさんは、旅行でこの町に何度か訪れていて、カフェのファンだったそうです。(特徴的なカフェなので)
このカフェで働きたいということで来て、飲食店や接客業の経験は一切なかったけども、コーヒーの味や知識、彼女がこれまでの仕事で培った専門スキルがカフェ以外の事業にも活かせそうなことなどで、採用したそうです。
休暇はほぼなし、たまの休日も通院などの用事で終わるためゆっくり過ごす余裕はない、住み込んでいるスタッフルームの環境が合わずアレルギーがひどくなってしまった、身体はしんどいし向いてないのも分かってるけど、このカフェが好きなんですよね、と言っていました。

一方で経営者さん側の評価は「アレルギーがあることは聞いていたが、業務に支障があるほどひどいとは思っていなかった」「カフェのような体力仕事に向いてない」「性格的に接客業にも向いてない」「コーヒーの味も最近落ちてきている」「リモートワークの仕事で稼ぎがあるんだから、そっちに専念すればいい」とのことでした。

最初の経営者さんの通達から約1ヶ月を経て、住み込みさんはカフェを出て行き、町内の別の集落のアパートに住みはじめました。

これまでカフェとリモートワークの兼業で休みもほとんどなかった住み込みさんには、身体をゆっくり休ませて、新しい生活を楽しんでほしいと、周りは思っていました。

しかし、カフェの仕事が諦められなかった住み込みさんは、出て行ってからも何度か経営者さんに連絡して「もう一度働かせてほしい」とお願いしたり、そのしつこさに出禁になってからは、他のお店で働くもやはりうまくいかない日々を過ごし、いまは県内の別の町で暮らしています。

経営者さんとは今もよく話をしますが、住み込みさんの話題を出すと一気に顔が険しくなります。もう触れてほしくないという雰囲気です。
ヘルプスタッフは数名いるが、住み込みさんのような従業員を今後雇うことはない、一人でやっていくのがいいと言っていました。

住み込みさんは、住む町は遠方ですがSNSでは繋がっています。
当時やっていたリモートワークの仕事を続けていて、忙しく働いているようです。
ただ、今もこの町の風景写真をアップしていたり、そのカフェのヘルプスタッフの投稿にコメントしている様子を見ると、まだ未練はありそうです。

客観的に見ていると、経営者さんは自分が全て正しいという考え方の人なので住み込みさんの仕事や人間性を受け入れることができなかった、住み込みさんは自分がやりたいことをやるためには手段は選ばない自分本位な人という印象です。
双方に他者に対する思いやりや敬意が足りていなかったと思います(特に住み込みさんのほう)

よく田舎町で聞く、音速で町中にいろんな話が広がるとか、村八分のような話や、盗聴するしないみたいなものは、この町にはありません。
町の産業的に、いわゆる移住者の受け入れは少ないですが、仕事で来るビジネスマンが多く、人の入れ替わりが早いからかと考えられます。
まぁ噂話はみなさんお好きですが、娯楽が少ないので仕方ないですよね。

なので、今回の件も知る人ぞ知るくらいの出来事ではありますが、うまくいかなかったときに町を出ていかなければいけないという、田舎暮らしのしんどさのようなものを感じました。

都会のように、何度でもやり直せるフィールドになってほしいと思いました。

そして、どんな場所や立場であっても、経緯や思いやりは絶対に忘れてはいけないとも思います。

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