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問題は、数多い消火用配管の分岐管に起きた一つのリークでしょう。漏れてよいとは言わないが…「日本はダメ」と言いたい…空っぽになった原子炉の水を冷やす装置などは必要ない。なのでECCSの指針から除かれている。

問題は、数多い消火用配管の分岐管に起きた一つのリークでしょう。漏れてよいとは言わないが、
2018年02月28日

以下は前章の続きである。
石川 
問題は、数多い消火用配管の分岐管に起きた一つのリークでしょう。
漏れてよいとは言わないが、大きく取り上げる問題か。
特別な問題は何も起きていないのだから。 
NHKスペシャル本の著者も良心の呵責を感じたのだろう、本は注水系の抜け道をことさら強調したあとで、次のように逃げ道を作っている。 
〈1号機の注水ルートに「抜け道」がなければメルトダウンを防ぐことができたのか?答えはNOだ。吉田が官邸の武黒からの指示を拒否し、注水を継続していた局面は3月12日午後7時過ぎのこと〉
(P187) 
注水の抜け道以前にメルトダウンは始まっていた。
しかもその後、核燃料は冷やされている。
「公平な検証」なのか

牧 
注水の遅れによってメルトダウンが進展し、溶融炉心が原子炉圧力容器底部を貫通し、格納容器下部のペデスタル床に落下、床のコンクリートを溶かし続けるMCCI(溶融炉心-コンクリート相互作用)を起こしたと書いてありますが、〈コンクリートの侵食は止まることなく、3月23日午前2時半には深さは3.0メートルに達した〉〈「デブリ」と呼ばれる塊になった。1号機のデブリの量はおよそ279トン〉(P188)と断定する根拠は何なのか。 
単に〈SAMPSONの解析では〉としか書いていないのですが、MCCIの現象は欧州を中心に世界的に研究されていますが、まだ十分に解明されておらず、ましてどのぐらいの速さで侵食するのか、反応速度式も明らかになっていない。
それを全て断定している。
一体、どのような根拠を基にしているのか疑問です。

諸葛 
SAMPSONは解析コードですから、きちんと物性値データを入力しなければ答えは出てこない。
高温のデブリの物性値の根拠を示す必要がありますね。
根拠のない偏った見方を、「検証」と称してさも真実であるかのように書いていたら大問題です。

「日本はダメ」と言いたい

奈良林 
非常用復水器(IC)の記述にしても、吉田所長がICがずっと動いていると誤認していた初動対応のまずさが一号機の水素爆発を招いた主因であり、日米の比較を持ち出しながら〈失敗から学んだアメリカと学ばなかった日本〉(P120)などといって、日本ではICの安全設計などについての正しい認識を持っていなかったと断罪します。
ところが、ICは日本原電の敦賀原発1号機にも設置されており、そこでは20回以上も正常に稼働しているのです。
諸葛 
敦賀では落雷が多くありますが、ICの作動によって事故をきちんと防いでいますね。
奈良林 
日米の差で日本がダメだったのではなく、これまで使用する必要があったかなかったかの違いこそが本質です。
「福島原発はダメだ、失敗した」ばかりで、では、同じ日本の敦賀はなぜしっかりと稼働できているのか。
公平な検証であれば、そうしたこともきちんと読者に伝えるべきです。
石川 
本では、アメリカではICは非常用炉心冷却系(ECCS)の一つに位置付けられているのに、東電ではそうなっていなかった。
日本の認識は甘いとしているが(P123)、これがまた不勉強の間違い。 
たしかに米国の炉設置変更申請(1968年11月)において、ICは非常用炉心冷却設備(ECCS)の筆頭に記載されている。
だが、1968年と言えば、まだ原子力発電の黎明期、50年も昔の話。
日本にあった原発といえば、原研のJPDR(動力試験炉)と英国型の東海炉だけ。
軽水炉はlCを持つ敦賀一号が建設中で、ECCSという言葉は米国の安全実証研究計画で誕生したばかりの頃だ。
ECCS指針が世界でできたのは1973年、指摘の68年から5年もあとのこと。 
ちなみに日本では、lCはECCSの設備ではない。
理由は、ECCS指針が原子炉の太い配管が破断した事故に対する安全対策だから、原子炉のなかの水が短時間になくなるところを出発点とする。
空っぽになった原子炉の水を冷やす装置などは必要ない。
なのでECCSの指針から除かれている。
この稿続く。

2024/2/28 in Kyoto

 

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