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【要約&実践】なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる

どうもー、消費財メーカーのマーケターとして働くmotuです。
マーケティングに関する書籍の"理解"から"実践"への架け橋となる記事を投稿していきたいと考え、活動しています。

書籍の内容を"実務"で活かすことができるよう、要約・体系化していくので、ぜひご覧ください。

書評

【再現性】   ★★★★
【面白さ】   ★★★
【おすすめ度】 ★★★★

私の記事では、上記3項目を5点満点で評価しています。
再現性は、筆者が自身の成功(失敗)を体系化して、私たちでも実践できるような形のノウハウとして提供しているかで評価しています。
面白さは、純粋に書籍としての面白さで、読みやすさなども考慮して評価しています。

今回紹介するのは、P&Gマフィアの一人である音部大輔氏の書籍です。
この書籍からは、戦略策定の手順について詳しく学ぶことができます。戦略についての記述は、他の書籍によく書かれている程度の内容でしたが、戦略を立てる上で必要となる、"資源"について細かく書かれている点がおすすめポイントです。それではやっていきましょう!

1. 目的の設定

戦略を組み立て、戦略的に考えるにあたっては、目的を明らかにする必要がある。

1-1. 良い目的

SMACあるいはSMARTという要素を満たしていて、かつなるべく単一の目的に的を絞っているといい。

良い目的の条件
・Specific(具体的)- 数値化する
・Measurable(測定可能)- 測定方法、単位を明らかにする
・Achievable(達成可能)- 実現可能性を測る
過去の実績から帰納的に測るやり方と論理の積み上げで演繹的に測るやり方がある。
・Consistent(一貫性がある)とRelevant(関連性がある)-方向性や整合性の認識
・Time bound(期限設定)- 締め切りを明らかにする

以上の条件に加えて、Focus(焦点、集中)も重要である。

1-2. 目的の再解釈

目的を再解釈することで、以上で設定した良い目的をより深く理解し、戦略をさらに効果的に使うことができるようになる。

目的を再解釈するための方法
・何が問題か?-なぜを繰り返す
・ある場合とない場合-どんな違いや変化があるか
・未来の視点-顧客に提供しているものは何か
・局面で分割する-中間地点での予定値を設定する

難しい問題であっても解決しやすい角度からとらえる。

2. 資源の把握

資源とは、目的の達成のために使えるすべての有形無形の資材、資産、人材である。

資源の種類
①内部資源- 組織内かつ顕在性がある
②外部資源- 組織外かつ顕在性がある
③内部資源になりそうなもの- 組織内かつ顕在性がない
④外部資源になりそうなもの- 組織外かつ顕在性がない

2-1. 内部資源

内部資源とは、社内、組織内、そして自社で保有している資源であり、随時直接的に利用可能なものである。

内部資源の種類
・人材
他の資源に影響を与えることができる
・製品技術、製品やサービス
均質化が進んでいる。意味づけ(ブランディング)が重要
・資金や予算
・営業力
営業力で競合に負けている場合、①ブランディング、製品性能の強化、②狭小なエリア、業態に特化
・製造技術や流通技術
・ブランド
ブランドに関わる体験が便益や意味と一貫性を維持し続けるようにする
・時間
競合と共有している
・人脈
・経験や知識
①知識の獲得を目的にして得られた知識、②副次的に得られた知識、③共有することで得られる知識、の3つからなる。形式知化して再現性を担保することが重要
・過去のプラン

2-2. 外部資源

ブリーフに、達成したい目的を明示しつつ、提供できる資源を明確にし、専門性を鼓舞することが重要。

外部資源の種類
・代理店
・メディア媒体
・取引先
・提携先

ブリーフについては、同著の「The Art of Marketing マーケティングの技法」に詳しく書かれている。

2-3. 内部資源になりそうなもの

埋もれた資源を見出すのに有効な手段の一つは「比較」。製品や組織構造、組織の構成要素などを過去や競合と比較してみる。その違いが強みになる状況を想定する。
競合と比較した時の違いが、潜在的な消費者ニーズと一貫性を持っていれば、資源として活用し、既存の評価基準を変えることができるかもしれない。
コアコンピタンスにも注目。

2-4. 外部資源になりそうなもの

・政府、業界団体、オピニオンリーダー
積極的に働きかけることは不可能ではない。
・競合の活動
・ユーザー(ブランドのファン)
ユーザーからノンユーザーへ与える3つの影響
①直接的な推奨、口頭での伝播
②間接的な推奨、レビューサイトやeコマースでの評価
③使用状況の露出、観察可能性

ここで、観察可能性は、新商品普及のために必要な要素の1つである。

新商品普及の要素
・相対的優位性- 既存のものより良い
・両立可能性- 既存の習慣との一貫性
・複雑性- 簡単さ
・試行可能性- 体験できる度合い
・観察可能性- 他の人の目に触れる度合い

したがって、SNSでいかに語ってもらえるかは重要。

良く広まるゴシップの条件
①誰もが知っているトピックについて、
②まだ多くの人が知らない、ニュース性のある話を、
③それぞれが投影したい自分像と一貫性のある形で、
④誰もがストーリーとして話せるような起承転結のある筋書きが用意されていること

3. 資源の運用

効果的な目的達成のためには、通常複数の資源を組み合わせて使う。

資源運用の方法
①どのような資源があるのか書き出してみる
②書き出した資源それぞれについて、他の資源と比較した時、相対的にどのような特徴を持っているか考える
③その特徴が強みとして発揮される状況、その特徴が弱みになってしまう状況を考える
④それぞれの資源が目的に対して、どのような効用を発揮できそうか整理する
⑤各資源間の相互作用を考える

ここで、資源間の相互作用は、①補完、②相乗、③代替、④相殺、の4つの関係性がある。

①補完
それぞれの資源が固有の特徴を、それぞれに割り振られた局面でうまく発揮できているか考える

②相乗
それぞれの資源の効用を最大化するためには、どのような補助的資源を追加すべきかを考える

③代替
もし現在想定されている資源が入手不可能になったら?と考える

④相殺
達成すべき目的を明確にし、どの資源を組み合わせられるか考え、明確な方針として戦略を書き表し、共有することで回避できる

4. 戦略

戦略とは、「目的」達成のための「資源」利用の指針である。この指針に基づいて、具体的な実行計画が立案される。

<長期的収益目標>を達成するために、<期限>までに<KGI: 収益目標の再解釈>を実現するべく、<優勢な資源>を活用した方針に注力/集中/傾注する。

このとき、①目的を再解釈して戦略の候補案とし、②それぞれの候補案に対して投入可能な資源をリストアップし、③目的に対して「資源優勢」となる選択肢を選ぶ。

4-1. 戦略の構築

拡散的思考によって生まれたアイデアを取捨選択し、論理に従って積み上げていく。

戦略の構築手順
①拡散的思考(目的や資源の再解釈)
創造性を発揮する
②収束的思考(戦略の組み立て)
選択と集中する
③戦略の文章化
・全員が同一の解釈ができるものにする
・士気を高める
・都合のいい話にしない

このとき、いかに競合あるいは過去とは違うことをするか、もしも同じことをするのであれば、いかに違うようにするか、が重要である。そのためには、意識的にいろいろな角度から注意深く視ることが重要。

複数の視点(POV)獲得の技術
①フィルターをかける
・他の学問領域を適用する
・時間軸を変える(過去、未来)
・変数を探して変化させる
②借りる
・コピーを作る(上司、同僚、部下、取引先)
・未来あるいは過去の自分
・競合の視点
③想像する
極端な状態を指定し、その理由となりうるものを見出す
④概念化し一般化する
媒介物によって可能になる。A=C、C=B。
すでに重要だと認識している要素に対して、高い影響力を持つと予想できるものを優先的に分析するとよい。

4-2. 不測の事態への対処方法

①そもそも本当に重大な事態なのかの確認
あらかじめ規定された目的や再解釈された資源に影響を与えるか。もし招くとしたら、どの部分に影響が出るか理解する。
②代替策、緊急策の事前準備
4Pそれぞれについて、最悪シナリオを一つか二つ想定し、事前に行動計画を用意しておいてもよい。
③資源の予備(予算、人員、時間)
時間が最も融通の利かない資源であるため、スケジュールに余裕を持たせておくことは重要。
④競合、その他の不確定要素の将来的な変化を競合相手の戦略に則って予測
-なぜそんなことをするのか?競合の目的を理解する。
-なぜそんなことができるのか?競合の資源を理解する。

一方で、達成すべき目的と投入可能な資源に大きな変化がない限り、当初の戦略に固執することは論理的に正しい。目的と資源に変化が生まれたとき、戦略も変更する。

以上です。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
本日紹介した書籍は以下のリンクにまとめてあるのでぜひチェックしてみてください。また次回!


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