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彼女~赤い糸~

薄々
気付いていた

あの日
ハッキリ言われる前から

ずっと逃げてた
別れたくなくて

ごめんね
さよなら

そう言って
彼はあの子の所へ行った

でも
死んでしまった

次の日
みんなの前で泣き崩れたのは私で

あの子は
ただ立ち尽くしてた

ああ
まだ、私が彼女なんだ

私が
悲劇のヒロインなんだ

心が笑った

その時
左手の小指の赤い糸が
黒い色に変わったのが見えた

糸はボロボロと崩れ
消えてた

「ふーん」

私を支えてくれてた誰かの声

「可哀想に」

彼氏が死んで可哀想?
なんだよね?

そして
ずっと未来に意味が分かる

私は一人で死んでゆく
あの日
糸を燃やしたのは私の心

ごめんなさい

あの子に
あの日言えばよかった

「行くぞ」

あの声
ああ、そっか

あの扉の先には何があるのだろう

あの子に会えたら
彼に会えたら
幸せにってちゃんと言おう

その時
左手の小指に白い糸が巻きついた

まだ
未来はあるのかな








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