ショート3話 文字にもいろいろ
「入る場所」
どこがいい?
( )
ああ、これは落ち着きそうだね。
どこがいい?
「 」
ふん。まあまあ、自己顕示欲強そう。
どこがいい?
。
いやいや、そこには入れないよ。
どこがいい?
ん?なんもないぞ。どこだ?
そうか、いなくなりたいのかよ。
「静粛に」
ノノダさんは生まれつき促音が少なくて、スキップが好きだ。
しゃべるのはゆっくりで食べるのも遅いが、レストランでメニューを選ぶのはものすごく早い。
カツダさんは、濁音とカタカナ成分が多くて、平熱が高い。
すぐにメタファになって壁にはりついたりするが、メニュー選びに半日かけたこともあるとか。
二人が話すと促音と濁音と長音がごたごたになって、やがて無音になるという。
なぜか食事の速度はちょうどよくなるので、よくランチを共にするとか。
「消しゴムが見当たらない」
消しゴムが見当たらない。かけらでもないかと探し回ったが、かすひとつない。
間違えたら嫌なので、ひらがなで書くことにする。
ぜんりゃく。せんじつはおまねきありがと。
えびのさらだおいしかった。
おしゃべりたのしかった。
あなたのこととてもすき、さよなら。
うっかり、本音を書いてしまった。消しゴムがないのもなかなか良い。
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