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50代での初めての転職は、人生最大のいい選択ができた

誰にでも、「これからどうしよう?」と迷うことがあるのではないでしょうか。そんなとき、「他の人はどうしているのかな?」と思いませんか?【L100】自分たちラボでは、「身近にいる普通の働く女性たち」のキャリアや人生についてのインタビューからヒントを探してみることにしました。

今回のお話は、仕事はフルタイムという刷りこみから解放されて、新しい仕事を楽しんでいるまりさん(仮名)のお話です。

まりさん(50代後半)
経歴:大卒後メーカーに就職。様々な部署で約30年間勤務。迷った末に50代半ばでの早期退職を決断。現在は社会福祉協議会で地域福祉コーディネーター(コミュニティソーシャルワーカー)として月に15日勤務。夫と二人暮らし。 

#ライフデザイン #インタビュー #働く女性 #フルタイム #50代の転職 #人生後半 #コンサルタント #福祉  

企業での仕事ってなに?働く意味ってなに?悩みながらも、会社を辞めることは敗北だと思って乗り越えてきたと語られたまりさん。自分に厳しく働いてこられたまりさんが、もう十分に頑張ったのではないか、人生後半は本当に自分のやりたいこと、使いたいなと思う時間の使い方をしていこうと思うに至った過程とは?

―――今回、ライフヒストリーや人生曲線を書いてみていかがでしたか?
印象に残った言葉が書ききれないくらい浮かんできて、人に言われた言葉をいい意味で大事にしているのだなと思いました。曲線は、落ちている時期が長かったと思います(10~30代の頃)。

まりさんが書いた人生曲線

国際的な仕事・社会貢献への憧れ

20代:仕事人生の原点

―――最初に就職した会社に長くいらっしゃいましたが、就職のときは、どのように選んだのですか?
 学生時代、自分の働くイメージ、やりたいことがなかなか浮かびませんでした。就職目前になって、ようやく「国際的」、「社会貢献」出来そうな仕事に興味を抱き、政府系の機関への就職を狙ったのですが叶わず、意図せず株式会社に就職しました。
入社後は希望が叶って国際的な部門に配属されたのですが、学生時代に漠然と抱いていた勝手なイメージと実際の業務はかけ離れていました。会社に根強く残っている男女の待遇の違いにも入社してから気づくことになりました。それでも、強みを持とうと、自費で中国語を学び、実務でも生かすことができました。この先何歳までどうキャリアを築くべきか?というビジョンは全くなかったものの、目の前の仕事をがんばろうという一心で努力していたように思います。

自分に自信が持てたのは、40代の半ば過ぎ

40代:輝いていた時期

―――いい時期というのはどのあたりですか?
いい時期は40代ぐらいのとき。39歳で結婚して、新しい風が入ってきた。タイプの異なる人と暮らすということで、違うものが入ってきたというところは自分にとってプラスでした。
仕事でも一山越えたというか、わからないことづくめだった仕事が、随分と見えてきたときで、仕事が安定し、少し自信が持てたのが40代の半ば過ぎからでしたね。『あなたの仕事の仕方は、本質的価値を追究していると思う』と言ってもらえたことは嬉しかったです。
 
―――それはどういう場面で言われたのですか?
そのときの担当業務は地味な仕事だったのですが、仕組み全容の把握に努めようとして助言を求めた方に、「ルーティン業務として流すこともできるのに、あなたのように、業務全てを把握して説明できるようにと考える人は大事です」と言っていただきました。短期間でしたが、その方の協力を得て仕事の達成感を久々に感じることができたし、その方の仕事の仕方に感動もしました。そんな方から多少なりとも認めてもらったことが嬉しかった。通り一遍の褒め言葉でなく、自分が大切に思い、努力していたものを認めてもらう経験が特別で、印象に残っているのだと思います。

50代半ば、会社を辞めるか全うするかで迷う

50代前半:葛藤と決断の時期

―――50代半ばで人生曲線の谷がありますね。
 今の仕事を続けるか、辞めて新しい仕事をみつけるか、選択に悩んだ時期です。50代半ばで新しい部署に異動したのですが、その仕事が自分で手に負えないように思えて。忙しいし、緊張を強いられることが長くて、うまくできないこと、やらないといけないことが山積みになっていました。それをあと1-2年、または5年、定年まで乗り越えなきゃという気持ちと、新しい選択をする時なのか?という思いと、強く迷いました。
これだけストレスを感じてやっているのに何の役に立っているんだろう?とか、仕事の意味は何だろう?と考えることがあり、だんだん社会的に意義が感じられる仕事がしたいなと感じるようになっていたんです。目の前の仕事がオーバーフローしてしまい、そこから辞めようと決断するまでの期間が底だったと思います。

―――長く勤めた会社を辞めるという決断は、重いことだったと思うのですが、最後に背中を押してくれたのはなんだったのでしょう?
海外に住んでいる年上のいとこから、早期リタイアしてゆったりしている人の話を教えてもらい、必ずしも毎日働くばかりが働き方ではないとは聞いていたのですが、自分としては、辞めてしまう=逃げやギブアップで、自分が何か足りないのだという思いでいました。それが、「全然そんなことはないかもしれない」「それもありかも」とすっと受け止められた瞬間があったんです。

―――迷いの中で、自分が納得できたことって、なんだったんでしょうね?
会社を辞めるのが敗北だという考えが拭えなかったんです。これまでもギブアップしないで乗り越えてきたし、ビジョンもなく勢いで辞めるのは良くないと思っていたし、仕事は努力しなくてはいけないという刷り込みもあった。
辞める決断をしたあとに、10歳くらい上の趣味の仲間のおじさまにポツっと自分の状況を話したら、『上司がやることをやっていないから、そんな会社は辞めた方がいいよ』と言われて、立場が違う人から見るとそう見えるんだな、「他責」にしてはいけないと人事の本などで読んできたけど、ちょっとは他の人も悪いと思っていいのかな、と思ったら心が軽くなりました。
残業時間が長くて産業医と話したときも、私が「もっと頑張らなくては」という言葉を多発していたようで、「これ以上何一つ、頑張らなくていいですよ」と言われ、それで、頑張るのが正しい道というばかりではないと思えたんです。もしかしたらもう十分頑張ってきたのかもしれない。頑張り方は、人で違っていいんだって。

―――だんな様には退職について相談はしましたか?
退職を考える際、夫も働いているということを退職の決め手にしたくない、自立していたいという思いが強かったです。
夫は最初の頃、「退職自体は反対しないが、自分なら次を決めてからにするだろう」という意見でした。そのうち不眠など私の体の不調が続き、内心退職を決断済みで、改めて「辞めようと考えているんだけど」と言うと、「いーんじゃない」という軽めの返事でした。精神的にもギリギリのところだったので、そこで深い議論や、辞めた後のことは決まったか?等の返事だったら、崩壊していたかもしれません。私としては、そのあっさりとした対応に救われた感じでした。

キャリアコンサルタントに伴走されての転職活動

50代後半:転職に踏み出す

―――次のお仕事を選ぶまでについて教えていただけますか?
職を決めてから辞めたのではないので、辞めたあとに、何の分野がいいかな、と白紙から考えました。最終的には福祉の分野をやりたいと行き当たったのですが、自分で探し当てるのは非常に難しかったですね。
在職中に友人に勧められた公の施設である「東京しごとセンター」で、退職後すぐにコンサルティングと適性検査を受けました。ミドルエイジ転職のセミナーでは、60~80代の講師の方が、「仕事を変わるなんて大いに結構。私たちから見るとなんでもできるくらい、まだ若いですよ」と強く訴えかけてくださって、真に受けてみようと思いました。やってみたいこと、思い描く後の人生を書き出すこともしてみて、転職という実践に移る前に、いろいろ考える機会をいいただけたのがすごく大きかったです。しごとセンターでは、具体的に求人広告を持ってきてくれるサービスがあって、自分だと行きつかない仕事も知ることができ、見たことのない世界を見ることができました。  
区にも、しごとセンターがあって、そこの方が、「月に15日だけれど」と言って持ってきてくれたのが今の社会福祉協議会の仕事です。私が長いこと企業に勤めていたので、「福祉といっても、突然小さなところに入るより、組織という点で似ているところの方がソフトに転職できるのではないかとピンと来た」と言ってくださって。そこに晴れて就職することできました。今の仕事は楽しいです。2年目なのですが、興味関心のある分野ですし、社会貢献実感があります。コロナもあって、仕事が決まるまで7か月かかりましたが、コロナが落ち着いたら、しごとセンターでボランティアとして働いてみたいなと思うくらいです。

究めていきたい分野なのかを考えてみたい

今後の自分

―――これから先については、どう考えていますか?
今の仕事は、単年度の契約になっているので、長期ビジョンで仕事をすることは難しいかも。福祉の仕事は面白いので、社会福祉士の資格を取ろうかなと30%くらい考えています。福祉分野で転職できるし、社会福祉協議会で働いているとその資格をとるチャンスがあるので。福祉も、わたしの転職時に伴走してくれたようなキャリアコンサルタントの仕事もどちらも興味があります。
 
―――2つ選択肢があるようなときは、何を大事にして選択しますか?
判断するときは、私にできるかできないかをすごく気にします。能力や適性など。
福祉の仕事であれば、あと少し経験を積めば、自分の能力や適性が自分でも見えてくると思います。キャリアコンサルタントの方は、果たしてできるのか、本格的にやるなら勉強を積んでいかないといけない。これが究めていきたい分野なのか、考えてみたいと思いますし、キャリアコンサルタントの方にも聞いてみたいですね。

同じ場所をグルグルしてしまったらいったん止めて、違うところに相談するとよい

女性たちへのアドバイス


―――今、迷っている女性たちに何かアドバイスやメッセージはありますか?
投げ出したいと思ったり辛いと思う仕事の山も、努力で乗り越えると自信がつくし、知識や経験がつくと人に頼られたりする。そういう成功体験、自分で納得できるような経験は、チャンスがあればした方がいい。仕事には仕事の醍醐味があるので。
私の場合は、過去に乗り越えてきたのだから、投げ出してはいけないと強く思ったのだけれど、場合によってはそうではない。振り返ってみると、今の年齢で転職したというのは、人生最大のいい選択をした、これ以上の選択はなかったと思うんですね。必ずしも過去の自分を踏襲する必要はなくて、柔軟に考え方を変えていいと思います。辞めると違う情報が入ってきて、世界はここだけではなかったとつくづく思います。
同じ場所をグルグルしてしまうようなことがあったら、いったん止めて、違うところに相談したり、違う選択肢を求めたりしたらいいんじゃないかな。そういう時にプロである、しごとセンターのようなところは活用価値があるので、自分を支えてくれる場所として知っておくとよいと思います。

―――今日、インタビューに参加してみていかがでしたか?
自分の通り過ぎてきたことを何十年分もまとめて振り返ることはなかったし、やりとり重ねながら、私自身が思っていた以上に意味があったなと思います。しばらく前までは、フルタイムの方が本物だという思い込みがあって、ゆくゆくはフルタイムの仕事をしようと思っていたのですが、もう(人生)後半なので、本当に自分のやりたいこと、使いたいなと思う時間の使い方、そういうふうにしていこうと、気づきました。
あとは人から言われた言葉が支えになってくれていたと感じました。自分で自分を評価しようと思うと厳しく評価しがちですが、プラスの面で言ってくれている言葉に耳を傾けてみる価値があるように思いました。
(*文中の写真はイメージです)

インタビュアーコメント

ご自身でも「まじめなところが強み」と言われるまりさん。30年以上勤務した会社を辞める決断をするまでの葛藤を、実直に、丁寧に語ってくださいました。
同じ組織環境に長くいることで刷り込まれがちな既成概念から解放されるために、職場以外の人の話を聞くことも有効だと思いました。そして、「しごとセンター」でのコンサルティングを介して、本当に自分のやりたいこと、使いたい時間の使い方、自身の能力と適性を知って、新たな道を究め始められたお話に、わたしも一度「しごとセンター」へ足を運んでみようかなと思いました。

【L100】自分たちラボ からのお知らせ

ライフデザイン研究会【L100】自分たちラボでは、働く女性に対するインタビューを行っています。詳細は『働く女性の人生カタログ』~プロローグ~をご覧ください。

【L100】自分たちラボの連絡先

L100lab.tokyo@gmail.com


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