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工場夜景 幻想の城

海辺に工業地帯がある。

昔からの工業地帯で、一時は公害で有名になった。

今では排出規制などでかなり有害物質の排出は減り、海も川も綺麗になっている。

だが今でも一日中、多くの巨大な煙突から白い煙を出している。

夜、工場の夜景を見に来た。

昼間の喧騒はないものの、あちこちに明かりは灯り、機械の稼働するうめきのような轟音も聞こえる。

海から見ると、あちこちの明かりが排気煙で淡く広がり、海面にはその照り返しが揺らめいて美しい。

まるで、霧の中から浮かび上がった鉄のお城のようだ。

ごつごつとした筋肉のような工場、太い血管のようなパイプライン。

夜でも多くの人たちがこの鉄の城で働いているのだろう。

工場の窓や、入場門のあたりで人や車が動いている。

どんな話をしているんだろう。どんな仕事なんだろう。

この地帯一帯はまるで巨大な都市の心臓。

高層建築物の赤く点滅する明かりが、まるで呼吸しているようだ。

月明かりは優しく、この地を照らし、それに応えるように煙を出し、光を放ち、機械が動いている。

なんだか、未来都市か異星の街を見ているよう。

きっと今夜の夢に出てくる幻想の城。



絵 マシュー・カサイ「工場夜景」 水彩・ペン

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