引きこもり支援に新モデル 家族関係改善で自立へ


 #NIKKEI

(以下一部転載)
8月20日。山口県宇部市の公共施設の会議室に、引きこもりの子供を持つ12人の親たちが集まった。

「息子が盆の墓参りに同行し、墓を掃除してくれた。家事の手伝いもするようになった」

「仕事に出られるようになったのに、また家に閉じこもってしまった。娘は一からやり直しでしょうか」

誰にも言えず、ため込んだ思いを率直に語った。…

「一からやり直しではありません。一進一退を繰り返しながら良い方向に向かっています」。親の肉声に耳を傾け、その都度、助言するのはNPO法人理事長の山根俊恵・山口大大学院教授(精神看護学)だ。…

山根さんは、「引きこもりや暴力・暴言などの問題行動を頭ごなしに非難するのではなく、その背後にある『苦しみ』や『生きづらさ』を理解しようと努める姿勢が大切」と強調する。

親の価値観の押しつけをやめ、折を見て、家事など小さな仕事を委ねてみる。できないのはなぜか。理由を対話で確かめる。焦らず、諦めず、実行してくれる条件を整え、静かに待つ。

「身の回りのことができないのに、外で働くのは無理。家事などの達成の積み重ねの先に、働きたいという気持ちが芽生える」

家族の関係改善の先に、当事者の自立の道がひらける。これが山根さんの方法だ。…

引きこもりの子を抱える親もまた、社会から孤立しがちだ。が、複数の家族が悩みを共有し、ともに学ぶことで子供や、自分自身に対し肯定的になる。そんな効果が観察されるという。

中高年の引きこもりは61万人を超す。科学的知見に基づく支援プログラムの開発、普及に期待したい。

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