多分、多くの人が思っているかもしれない。人生の意味とはなんだろう。
子供の頃描いた夢は、叶わないと十代後半くらいで悟った。
育ったところが、地方の田舎だったから。
やりたいことは、いつも父親が反対ばかりするから。
自分には何も才能が無いと分かってしまったから。
経済的な余裕なんて全くなかったから。
理由ばかりつけて、自分を納得させることは容易だった。

本当にやりたいことは有ったけれど、諦めていた。
なぁなぁと過ごすうちに２０代になった。
自分の出来る範囲内での好きなことは、いろいろやっていた。
スクーバダイビングや海外旅行、英会話のレッスンなどは、自分の予算内、別に好きでも無い仕事の合間にできる範囲内だった。

もっと違う時代、違う国、違う環境のところで生まれ育ったら、自分は幸せな人生を歩めたのだろうと、空想ばかりしていた。
次に生まれてくるときは、やりたいことができる人生にしたいと思った。

毎日が虚しくて、何のために生きているか分からなかった。
自律神経失調症になった。息苦しくなって平常時でも脈がしょっちゅう１００を越すようになり、めまいがした。強迫性障害になった。ひどい胃潰瘍になった。

当時勤めていた会社の５階の窓から外を眺めていたら、ふいに空を飛べる気がした。意識が遠のきかけて、ふと我に帰った。

もう、こんな人生は嫌だと思った。
淡々と時間が過ぎて、気がつけば、もう老齢になっていて「こんなはずじゃなかった」と涙ながらに後悔し続ける日が来ると思った。

今始めなかったら、絶対後悔する。
５０歳になったとき「ああ、あのとき勇気を振り絞って頑張れば良かった。もう今からでは何もかも遅い」と悲しむ自分の姿が見えた。
何かのせいにして、自分を騙すのはやめよう。
次の人生じゃなくて、この人生を変えなければ。
５０歳になった自分が、幸せだと思えるように頑張ろうって決めた。

旅行が好きだったので、世界中を旅したいと思った。
できれば旅行会社で働きたいと思った。
毎年イギリスに旅行には行っていたけど、長く住んでみたいと思った。
音楽が大好きだから、クラリネットをまた吹いてみたいと思った。
自分の足跡として、本を出版してみたいと思った。
犬と一緒に暮らしたいと思った。
外国語を２、３ヶ国語話せるようになりたいと思った。

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２０代の私へ。
今日、私は５０歳の誕生日を迎えました。
傍らには可愛い犬がイビキをかきながら寝ています。
今はイギリスのヨークシャー在住です。あんなに住みたかったイギリス永住です。
２０代の後半で旅行会社に勤めた後、ロンドンの旅行会社にも勤務していました。
旅行で訪れた国は２０カ国以上です。
外国語は、英語以外はあまり話せるようになっていません。フランス語は少し。ドイツ語とロシア語も少し勉強しています。
クラリネットは再開してトリオ結成しています。音大を卒業しました。
本は出版できていません。でも、音楽はデジタル配信でリリースし始めました。
あの頃、こんなことが起こるなんて想像すらできなかったけれど、コロナウイルスという病気が世界中に蔓延して、家の外に出ることもままならない状況です。
それでも、今の私はとても幸せです。
あの頃は、歳を取ったら好きなことはできないと思っていたけれど、それは違いました。
今、仕事でいろんな年齢層の生徒さんと接していて、何歳になっても好きなことをして生きていいのだと教わりました。それだけは、２０代の私には考えられなかったことでしたね。
でも、それ以外、たくさん頑張ってきたのですね。
あのとき、５０歳になって後悔しない生き方を選択した２０代の私、ありがとう。
これからも、自由で幸せな人生を続けていきます。