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ある航空機ハイジャック事件に思うところ

私にしては、今までと全く違うトピックではあるが、私の中で消えない記憶なので記しておきたいと思う。
1999年7月に起こった羽田発札幌千歳行きの便がハイジャックされたときの話である。この事件を覚えている人もいるだろう。
私はこの便に乗っていた訳では無い。
でも、今でも忘れられない。

イギリスへ渡航する為、当時勤めていた旅行会社を辞める直前だった。
その日は7月23日、朝から普通にオフィスで仕事をしていた。
確かお昼より前だったと思う。
本社から電話が掛かってきて、当時勤めていた職場の所長が突然大きな声で「テレビを点けろ!」と言った。
航空機がハイジャックされたことをニュース速報で知った。

本社から私に唯一この便を予約発券した記録があると言われた。

ある日、ある親子がフライト予約の為にやってきた。
4人家族で、夏休みに北海道の祖父母の実家へ遊びに行くということだった。
お父さんと当時5、6歳くらいの男の子が先に飛んで、数日遅れでお母さんと妹がやってくるという事だった。
その男の子は初めて飛行機に乗るんだ!って嬉しそうにしていた。
だったら、料金が同じだから2階のコックピットが近い席取ってあげるね!と私は親切心で予約をした。
その子はとても喜んでいた。
私も心から良い事した。楽しい初フライトになればいいなって思った。

そんなことはすっかり忘れていたこの日、このニュースを見てショックを受けた。
犯人は客室乗務員に包丁を突きつけ、コックピットへ犯人を誘導させていた。
コックピットへ入った犯人はパイロットに墜落しそうな低空飛行を強要したようだ。最後は乗客達で取り押さえたが、パイロットの一人は犯人に刺されて機内で亡くなった。大変気の毒である。
このフライトに乗り合わせた乗客の恐怖は計り知れない。

コックピットに近い席を予約してしまったので、この子には初フライトで恐ろしい事件の一部始終を目撃させてしまった。
その後本社から、この親子の無事が確認出来たと連絡が入った。

このフライトを予約したのは勿論偶然ではある。
でも、親切心で二階席のコックピット近くの座席を取ったのは私だ。
何気なく取った行動で、良かれと思ってやった事が裏目に出ることもある。
あれから20年が過ぎた。
当時5、6歳だった子も今はもう20代の青年になっているだろう。
あの事件がトラウマになって、飛行機に乗れなくなってしまったりしていないことを心から願っている。

多分、誰しもがこういう不可抗力な経験はしているだろう。
過ぎ去った日の心の痛みは、普段は潜在意識の奥底に眠っていても、時々何かのキッカケでチクリと刺すのだ。

読んで下さってありがとうございます💝