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プレゼント 担当:寺橋佳央

プレゼントを貰うのが苦手だ。
そもそも私は自分の気持ちを口や表情に出すのが苦手だ。もう大人だけど。そしてプレゼントを貰うということは、当然だが感謝の気持ちを表明する機会。それはすごくよく分かっている。

更に女性へのプレゼントには、バスグッズかボディケアグッズを贈られる事が多い。わかる。これで疲れを癒してねとの気持ちがとても良く分かる。
しかし残念ながら、バスグッズもボディケアグッズも私にとっては割と香りが強いものが多く、使うのが辛かったりする。とは言え、プレゼントを下さった方はそんな事は知らないし、単なるこちらの都合。ここはちゃんとプレゼントを貰って嬉しい!との気持ちを盛大に表明せねばならない(賢い大人なお付き合いには、時に演技も必要だと思う)。
ここで私は、プレゼントを貰った喜びの気持ちを表に出すに加え、相手を喜ばそうとの気持ちも働き、無駄に自分にプレッシャーをかけてしまう。
だからプレゼントを受け取り、包みを開ける間「喜ばねば、喜ばねば」とドラムロールかの如く、自分の中で唱えている。そしてプレゼントのバスグッズが見えた時、ドラムロールは止まり「喜ばねば!」と私にスポットライトが当たる。
さあ、言うんだ!

!」

ダメだ……。これでは喜びが相手に全然伝わっていない…。
言ってはいるものの、この時私は恐ろしくギクシャクしてるんじゃないかと不安になる。いや。多分だが、実際すごいギクシャクしてると思う。いかん!せっかく貰ったのだから、その気持ちに応えねば!
その後、ありがとう、嬉しいを繰り返し言うのだが、私は最初に完全につまづいたと思い込んでいるので、

これじゃダメだ、これじゃダメだ、これじゃダメだ…

と延々心の中で唱えていたりする。
こんな感じでプレゼントを貰うととても混乱するので、私はプレゼントを貰うのが苦手なのだ。

しかしこんな私でも、貰ってすぐに笑ってしまったプレゼントがある。それが画像のアルパカの人形だ。

これは当時勤めていた職場の友達から貰った誕生日プレゼント。友達は謝りつつ笑いながら、私に差し出した。

「ごめんね。これを見た瞬間、寺橋さんのことを思い出したの。」

なんだそれは?とプレゼントを開けると、出てきたのがつぶらな瞳のアルパカだった。かわいいけれど、なんかマヌケな感じがする。しかも体にぜんまいが付いてる。私はアルパカを手にして、ゲラゲラと笑い「分かるー!」と叫んでいた。
かわいいだけで何にも役に立たないアルパカ。だけどかわいくって、すごく無駄な物(褒めてる)。ゲラゲラ笑う私を見て、友達も「ごめんねぇ。」と言ってゲラゲラ笑っていた。

彼女が笑いながらも謝っていたのは、大人の私(30歳過ぎてた)に何の役にも立たないアルパカを贈る違和感からだろう。しかしそれこそが、このアルパカを見て私を思い出す理由で、くだらなくって役に立たない、愛らしい無駄が私は大好きなのだ。
ぜんまいを回すとアルパカはトコトコと不器用に動いた。その様子にまたまた私達は笑った。

私達はもう大人なのに、そんなマヌケなアルパカを笑っちゃうし、買っちゃうし、貰っちゃう。大人なんだけど、まだまだ手放せない幼い部分。その幼さは、たまに持ち物や趣味に顔を覗かせる。赤の他人にしげしげと見られるとちょっと恥ずかしかったりもするが、そこが共鳴し合うと本当に楽しい。
彼女から貰ったアルパカは、プレゼントとして私の物になったと言うより、笑いあって過ごした証があのアルパカで、それを私が大切に保管していると言う感じだ。

プレゼントをくれた人に向き合い過ぎるのか、向き合わな過ぎるのか、もう大人なのに、プレゼントを貰うといつも右往左往してばかり。
あのアルパカは、ぜんまいをめいいっぱい回すと、そこそこのスピードで進み、その姿は忙しない。が、大して進まない。しかも機械音がまぁまぁ大きい。
右往左往する私と忙しなく進まないアルパカ。アルパカは私に「知らんがな」と言う様にして、進んでないけどどこかを目指して進むのだった。


前回ゲストにビロくん(@creamciderkun)を迎え、お届けしたしりとり手帖。
今回は通常通りオリジナルメンバーの寺橋がしりとりを繋ぎました。
今後もしりとり手帖では、様々なゲストをお迎えして行く予定です。引き続きお付き合いください。
よろしくお願いします。

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