見出し画像

小説「灰色ポイズン」その2

ん?なんでここにいるんだろう...ここはいわゆる巷でいうところの天国ってところのはずなんだけど。あまり生きてた世界と変わらないようだ。
目の周りが乾いた涙の跡でカペカペしてる。天国にいてもこんなにリアルを感じるものなのか。目を開けてみて横を向いたら母さんの横顔が見えた。
どうやらわたしは息をしてる。ここは天国とやらではなくて家の中。

布団の中から辺りを見渡すとそこには、いつも通りの風景があった。そして横には母がいびきをかいて眠っている。わたしはゆっくりと伸びをしてみた。大丈夫手も足も動く。起き上がってテーブルの上を見たらノートの切れ端に書いた兄さんからのメモがあった。

“カナタへ
母さんは心が壊れたらしい
起きたら冷蔵庫の中のサンドイッチを食べて
何かあれば電話してくれ

それから、君はなるべくいつも通りに生活しなさい
グッドラック!
PS:母さんには眠り薬を飲んでもらった。夕方くらいまでは眠ったままだと思う”

わたしは起き上がって辺りの匂いを嗅いでみた。
クンクン 
大丈夫。もう古びたレモンの香りはしない。どうやら兄さんがガスを止めてくれたらしい。
母さんは寝息ともいびきともつかぬ音を立てて眠ったままだった。

壁掛け時計に目をやると10時を少し過ぎていた。昨日母さんと布団に入ったのが夕方の6:30くらいだった。夕飯も食べずに横になったのでお腹が空いてるみたいだ。胃袋がキュルキュルと音をたてて鳴いている。
兄さんのサンドイッチを食べようっと。
キッチンに行き冷蔵庫のドアを開ける。2つの皿がありそれぞれの皿には兄さん特性のサンドイッチがのっていた。
卵ときゅうりにハムとレタスのもの、あとの一つはジャーマンポテトのやつ。

わたしは自分の分のサンドイッチとコップには牛乳ついで、それからブランチをゆっくり食べた。
やっぱり兄さんの作るサンドイッチはおいしいなぁ。このジャーマンポテトの奴もっと食べたい。
今度作り方教えてもらおう。

今日が日曜日で良かった。学校に連絡しなくて良かったから。
担任の石塚先生にしれたら家庭訪問もので面倒くさいことになったかもしれない。本当に学校が休みの日で良かった。

母さんこのまましばらく起きなきゃいいのに。
寝てる間に色々な大人の事情の悲しいこと
ぜーんぶ
忘れてしまわないかなぁ。

今から何をしよう?日曜教会に行っておやつもらってイエスさまのお話を聞かせてもらって他の子ども達と遊んでこようか 
神さま
とにかく今は息しててサンドイッチがおいしいことに感謝します。アーメン!

#毒親育ち #ヤングケアラー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?