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Happy Women's Map 兵庫県 日本女性初の政党党首・野党代表・衆議院議長 土井 たか子 女史 / The Japan's First Female Political Party Leader and Speaker of the House of Representatives, Ms. Takako Doi

-『Peaceful Japan 土井たか子 女の時代・女の政治』

「女性の想いに言論の武器を与えよ、政策決定の足場を与えよ!」
"Empower women's voices with the weapon of expression, provide the foundation for policy decisions!"

土井たか子 女史
Ms. Takako Doi
1927- 2014
兵庫県神戸市林田区(現・長田区) 生誕
Born in Kobe-city, Hyogo-ken

土井たか子女史は、日本女性初の政党党首で野党代表ならびに衆議院議長です。憲法を愛し、国民主権・平和主義・基本的人権を問い質し続けました。今までで最も首相に近づいた女性政治家で憲法学者です。
Ms. Takako Doi, a trailblazing figure in Japanese politics, made history as the first female leader of a political party, serving as both the opposition leader and the Speaker of the House of Representatives. With a deep appreciation for the constitution, she consistently questioned the principles of national sovereignty, pacifism, and fundamental human rights. As one of the most prominent female politicians to come close to the position of Prime Minister, she was not only a politician but also a constitutional scholar.

「神戸っ子」
 たか子は内科開業医の父と、女学校卒業後に教会で幼稚園の先生をしていた母のもと5人きょうだいの次女として生まれます。人見知りをして隅の方で黙って人の話を聞いてる大人しい幼少期から、だんだんと髪を短く刈り上げて男の子の遊び仲間を引き連れるようになります。仲間外れにされている男の子をブランコまで引っ張って行って泣かせたり、手足が不自由な女の子をかばって男の子と取っ組み合いのけんかをして不登校にしかけたり。授業中いつもおしゃべりしながらも正解を答えて先生の癪にさわったり。「落ち着きがない」「一つのことに集中できない」と注意を受けるたか子が唯一じっくり落ち着けるのは読書、それから学校帰りに市電の停留所をどんどん海岸まで下りて蟹を採ったり貝殻を拾ったりする須磨の輝やく海。女学校に入学すると学徒動員で工場に通って弾薬を詰める麻袋を縫ったり、ベアリングの玉磨きをします。やがて焼夷弾尾直撃を受けて家が全焼、家族とともに火の海の中を必死に逃げます。たか子のまわりでたくさんの女性が子供を探しに、あるいは食料をとりに家に戻って亡くなります。逆に、たくさんの男性がいざというときに女性をかばうことなくさっさと一人で逃げ出します。「人間はひとりなのだ。自分自身の生き方を持たなくては!」たか子は強く感じます。

「遅れてきた胸躍る青春」
 敗戦を迎えたたか子は思いっきり勉強をしようと京都女子外国語大学へ入学。無傷の京町で加茂川に復活した花火がドカン・ヒューヒュー異様な音を上げて女友達が学生寮の欄干に駆け寄る傍で、たか子は反射的に目を閉じて耳を押さえます。お昼に鳴るサイレンの音を怖がるたか子を女友達は「けったいやねー」。たか子は寄席「富貴」で桂春団治に魅せられ、洋画専門館で見た「若き日のリンカーン」に震えるほど感動します。合唱にテニスに打ち込みながら、やがて同志社大での講演会「平和主義と憲法第9条について」と、石碑「良心の全身に充満したる丈夫の起こり来たらんことを」で、たか子は弁護士になろうと決めます。親の決めた結婚のために泣く泣く進学を断念する女友達を見送りながら、同志社大法学部入学を果たします。最後の学園祭で手相を見てもらうと、「あなたは男運が悪い。いかず後家になる」「いかず後家って何ですか?」「生涯独身の女ちゅうこっちゃ。」「男の場合は?男やもめにうじがわく言うでしょ?」「寡婦(やもめ)も女のこっちゃ。可哀そうになあ。」「・・・」「あんたは気が強い。自分の意思を通すことですな。」たか子は知らぬ間に女性代表として同志社大の自治会委員に選出され、女子控室・更衣室の確保、学内食堂の自主管理権の獲得、学費の値上げ阻止など学内闘争の指導にあたります。学生運動で火炎瓶が飛び交う京都の町で、たか子は自治会室にこもって口に泡して激論を交わします。

「野に放たれるトラ」
 司法試験のための法学研究科に所属するも「女性だけ離婚後6か月空けないと再婚できないのはおかしい!」「妻の相続分が1/3だけなのはなぜ?」周りを巻き込んで立法政策論に脱線します。学費値上げ反対のために試験ボイコットをして単位に苦労しながらいよいよ卒業間近になると、田畑忍教授が唱える「非武装中立論」にすっかり魅せられます。「理想論」とあざ笑う人を横目に、「現実に追随してパワーポリティクス(力の論理による政治)に屈服するのか、困難はあっても平和憲法を拠り所に世界の現実の方を変革して人類の恒久平和を作り出すのか。」たか子は「国会両議院における国政に関する調査権」を修士論文テーマに選んで5年かけて大学院を卒業。恩師・田畑教授の憲法研究所を補佐しながら、同志社大はじめ関西学院大学また聖和女子大学で憲法学の講義を受け持ちます。須磨の西の裏山で削られた土砂がベルトコンベヤに乗って海を埋め立て、神戸港のふ頭の東にポートアイランド建設が進む中、たか子は神戸市で全国で初めての女性人事委員に任命されます。ある日、神戸市職員の採用試験に立ち会ってカチンときたたか子は、男性受験者に質問します。「結婚しても出産しても辞めませんか?」すぐに貴重な女性の法律研究者として方々の青年婦人部から呼ばれて話をしたり、KBS京都また毎日放送のTV番組に出演したりするようになります。まもなく恩師を通じて社会党から衆議院選挙の立候補を促されると、たか子は平和憲法を徹頭徹尾訴えて当選します。

「おたかさん旋風」
 早速、たかこは唯一の立法機関である国会のありかたについて問い質します。「どうして政府に法案提出権があるのですか?」「主権者は国民であるがゆえに議会制民主主義が重要であるという基本的なことが無視されて、憲法を変える手続法案が与党と霞が関のお役所でつくられて野党不在で強硬採決されている!」すると与党の自民党理事からひとこと「慣例です」。続いて、草の根運動に関わる人々と現地でコミュニケーションして、騒音・振動公害・大気汚染・石油コンビナート災害・食品公害の訴えをすくいあげます。そして女性問題を追求します。「老人問題は女性問題である!」「母系を認めない国籍法は憲法違反だ!」「生活保護費を男女の食費で差をつけるのはおかしい!」「家庭科は男女共修に!」「公害認定患者の医療保障費を、男女の平均賃金で格差をつけるのはおかしい!」「男女雇用機会均等法は、家庭ならびに職場における男女の協同と共生である!」世論の支持を得るとともに法律改正に大きく貢献します。さらに、たか子は国際反核女性フォーラムの実行委員長を担いながら、外務大臣から「非核三原則は国是である。」「核兵器は憲法上持てぬ」という答弁を引き出し、神奈川県非核県宣言はじめ全国の反核運動の気運を広げます。たか子が国会で答弁する間はやじがぴたりと止み、傍聴席は女性が押しかけ超満員。女性運動・市民運動・平和運動などに取り組む女性達が地方議会議員になって政治に直接結びつく大きなうねりが出来ます。

「山は動いた」
 61歳のたか子は女性初の社会党委員長に選ばれます。中曽根康弘首相の軍拡路線を「必要最小限の自衛力が必要最大限の軍隊へ変貌をとげるのは時間の問題」と問い質すも、「防衛費1%枠(防衛費は国民総生産GNP比の1%以内とする政府方針)」は撤廃されます。しかしながら、公約違反をして押し付けようとする売上税導入を「ダメなものはダメ」と徹底批判して廃案に追い込みます。続く、竹下登首相で消費税導入が強硬されると、政府高官の汚職はじめリクルート事件をたゆまず追求、関係した政府高官を処罰して宮澤喜一大蔵大臣を辞任に追い込み、竹下内閣を退陣させます。たか子の指導のもと社会党は全国の女性運動・市民運動・平和運動などと連携して大衆の支持を獲得、参議院議員選挙にこれまでで最多146人の女性候補者を送り込んで大勝利を収めます。参議院の女性議員比率は初めて10%を超え13.1%に。参議院で首班指名を受け、たか子は日本初の女性首相に近づきます。いてもたってもいられないたか子はイラクへ出かけて、サダム・フセイン大統領に平和憲法の大切さならびにクウェートからの撤退が平和的解決であると繰り返し話しますが、3日後に湾岸戦争が開始。海部俊樹内閣の「国際連合平和協力法案」を「平和協力隊という美しい衣装を自衛隊に着せ、併任というこそくな手法で海外に派兵する内容」と批判しながら、「日米安保条約の第一条と第七条には国連中心主義と国連憲章優位が明記されている。しかし、アメリカは国連を無視し、そのアメリカを総理が支持された今、日米同盟は国連中心主義を逸脱している。」問い質して廃案に追い込みます。バブル好景気中の消費税廃止を訴える総選挙では議席を伸ばせず、宮澤喜一内閣に「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法案」を強行採決されます。

「山を動し続ける力」
 たか子は党首を辞任するも女性初の衆議院議長に選ばれます。自民党と連立政権を組んだ社会党委員長・村山富市首相は「自衛隊合憲・日米安保体制堅持」を表明、沖縄米軍基地の再編強を推進、海上基地建設の道を開きます。その過程を議長として複雑な思いで見守るたか子は「300万人の同胞が死に、アジア全体で2000万人が死んだ戦争への深刻な反省の結晶が平和憲法であるにも拘らず、政府の指針にはアジア国民の目を顧みる気配が感じられない。」と問い質し、「歴史を教訓に平和への決意を新たにする決議」を採択させ、「財団法人女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金)を発足させます。湾岸戦争へ参戦したり軍隊内で男女平等待遇を求めるアメリカ女性兵士の報道が続いて「女性=反戦=平和主義」の観念が崩れる中、たか子は求心力を失った社会党を引き受け社民党に改変して党首に就任します。冷戦終結にともなって日朝友好外交窓口が野党の共産党・社会党から与党の自民党にとって代わり、アメリカのブッシュ政権による反テロ戦争にともなって日朝国交正常化交渉がはじまる中で、「北朝鮮労働党から、拉致という事実はないと言われ続けてきたことに対して、社会党・社民党自身がさらに追及をして十分な形で努力してこなかった。」たか子は謝罪会見をします。世論を味方につけた小泉純一郎首相が有事関連法案を提案しながら「憲法論争のような神学論争はやめて常識で行こうじゃないか」「憲法前文と9条の間に隙間がある」「備えあれば憂いなし」と言い放つのに対してたか子は問い質します。「憲法9条は変えなくても解釈で運用面を広げて変えていけばよいということでは憲法は有名無実になる。」「日本の平和にとっての最大の備えは、憲法九条である。卑屈なアメリカ追従外交から抜け出して国際協調によって平和を維持する、自主・自立の平和外交への転換を図ることこそ21世紀に日本が生きる道がある。」

「憲法行脚の旅」
 さらに小泉政権はイラク戦争での米国支援と拉致問題解決を同時に議論する「イラク・北朝鮮連絡協議会」を発足。北朝鮮拉致被害者の家族会・救う会の「日本が危機に陥っている」「米国との協力が必要」の声がイラク戦争とともに大々的に報道される中、有事関連三法(「事態対処法」「安全保障会議設置法の一部改正法」「自衛隊法等の一部改正法」)、続いて有事関連七法(「米軍行動関連措置法」「改正自衛隊法」「外国軍用品等海上輸送規制法」「特定公共施設利用法」「国民保護法」「国際人道法違反処罰法」「捕虜等取り扱い法」)が次々と成立されます。「憲法を日米安保条約を踏み破った超憲法的な法律。民主主義の保証がくずされた。」「戦時立法だ。国民の手足を縛らなきゃ毛頭できない中身を決めている。」たか子は問い質すもやがて選挙に落選。「主権者である国民自体に憲法に対する認識が無かったら、不断の努力で憲法を活かす意味がなくなる。」たか子は憲法行脚の旅に出ます。憲法第9条の「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」は幣原喜重郎首相の平和主義の信念から出たもので、マッカーサー原案にもなかった。日本国憲法には人類の努力が凝集しており、世界のあらゆる近代的な憲法と並ぶきょうだいである。そして、敗戦の翌年1946年の初めての総選挙で総勢466名中39名の女性が衆議院議員となり、今の日本国憲法が草案の段階で議会で審議される場所に女性も参加して、「この憲法を制定しても後に日ならずしてこの憲法を見直そうという自主的判断こそ必要」「この憲法が国民に保証する自由および権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と合議している。たか子は憲法の製作経過ならびに憲法の意義について全国各地で問い質して周ります。たか子はベアテ・シロア・ゴードン女史と対談します。「あなたが弁護士じゃなかったから “女性の権利” について書くことができたんだと思います。あなたの条文を読むと、それが心から出てきたっていうことが分かります。あなたが心から書いたものだから、弁護士みたいな他の人には書けなかった。」

-日本国憲法の製作過程に関する資料
※土井たか子女史は、今の日本国憲法の草案について審議する論争の中身を国会内文書から社会に公表しはじめました。
-『土井たか子マイウェイ』『土井たか子政治とわたし』『We Love 憲法 おたかさん憲法を語る』『Peaceful Japan 土井たか子 女の時代・女の政治』
-衆議院
-社民党

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