ミンチカツ

ミンチカツ哀歌

今日も今日とて、やくたいもないことを戯れに書き連ねております。

数日前、豚挽肉を早く食べてしまわなければと思い、焼売にするか、肉団子にするかなど悩んだ挙句に、トテッと思いついて豚ミンチカツにした。おいしくできた。キャベツは千切りのつもりが少し粗くて五百切りぐらいになったが、まあよしとする。

本来ミンチカツは牛挽肉、あるいは合挽肉と相場が決まっているが、自分ではまずもってそれらの肉では作らない。なぜって、まあ普通に牛さんのお肉は高くて、それならいっそお肉屋さんのミンチカツを買った方が安いからというありきたりな理由からなのだが、ただそれだけではない。

そこには、果たして共感してくださる方がいらっしゃるかどうか不安だが、自分の中では至極正当な理由があるのである。

その理由とはですね。牛挽肉あるいは合挽きだと……

「衣をつける前にハンバーグとして食べてしまうから」

これに尽きるのである。

だっておかしくないですか? ミンチカツの中身ってどう考えても完全にハンバーグでしょう。せっせと挽肉をこねて、塩コショウして、ナツメグなんかも入れて風味をよくして、刻み玉ねぎとツナギの片栗粉、砕いたお麩、卵、牛乳なんかも入れて、整形して空気を抜いて。ここまで手間ヒマかけたらハンバーグにせずにおれないのが人情ってものである。

ハンバーグおいしいし。

それにハンバーグの方が世間的にはミンチカツよりはるかにごちそうってことになってるでしょう。

そこがそもそもおかしいのであると私は声を大にして言いたい。

ミンチカツの地位があまりにも低すぎるのである。中身はみんな大好きハンバーグに相違なく、そこに衣をうやうやしくまとって、からりと油をくぐって華麗に変身した、言わばプレミアム揚げハンバーグ!……のはずが、なぜか世間の値打ちで言えばハンバーグよりも全然格下でしょう。

実情はというと、お肉屋さんのコロッケの横で肩をすくめて「あ、あのう、僕もいますよ……あ、あ、すみませんすみません出しゃばっちゃって」ぐらいの慎ましさでじっと縮こまっているミンチカツたち。値段もせいぜい気張ったところで150円。180円もした日にゃ、国産肉を使ってでもいないと売れ残りかねない。

一方、ハンバーグとくれば国道沿いに何軒もチェーンの専門店が並び、老若男女が大好きで、国民食のひとつとして君臨し、やれ「静岡のさわやか食べた頃ある? ないの? 絶対食べた方がいいに(遠州弁)」などともてはやされている。あるいはちょっと高級めのステーキ屋さんに入ったけど財布が寒いときなんかには「ハンバーグでいい?」。そう、ハンバーグはステーキのカテゴリーの最下位。キン肉マンでいうと超人になる前のジェロニモ、それでもミンチカツより遥かにセレブなステーキの仲間に入れてもらっているのである。

こんな矛盾があっていいものだろうか。いやない。

繰り返します。ハンバーグに衣という付加価値をつけた、いわば豪華プレミアバージョンハンバーグ。それがミンチカツ。なのにコロッケのついでに売れればいいというあまりにもマイナーな扱い。やるせない。

あとですね、ちょっと話は変わるけど、ツナギなし100%挽肉ハンバーグをありがたかる風潮、あれも首を傾げざるを得ない。そっちのほうがたしかに重量あたりの原価はアップして高級になるかもしれないが、食感としては固くパサパサになりがちで、おいしい方向に向かっているとは思えない。ある程度の水分(牛乳、卵黄など)と、それを保持して凝固する成分(卵白や片栗粉のデンプンなど)を入れたほうがふんわりボリューミーになり食感もぷりぷりしておいしいに決まっているのだ。

あまりにも哀しいミンチカツの待遇である。地位向上を叫びたい。

※関西人なので呼称はメンチカツでなくミンチカツで統一しました。
あれなんですってね。関東の人はどうかすると挽肉をミンチと呼ぶこと自体
稀らしいですね。驚き。

ただまあ一個人として正直なところを申し上げると、ハンバーグの方が好きです。


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