先日、先輩に「どうして結婚したいタイプじゃなかったのに結婚とか子育てしようと思ったの？」と聞かれました。

確かに、私は数年前までどっちも怖いなと思っていました。包み隠さず話すと過去に長年付き合っていた人からそれぞれプロポーズを受けた経験が二度あります。そしてそれぞれ違う理由で結婚に踏み切ることができませんでした。

一人目はまだ私が20歳頃で、相手は私よりも年齢も信用も社会的知名度も高い、超富裕層でした。その頃私はサーキットで走るのが趣味で、明確に将来のビジョンを持っていたわけではありませんでした。これはやる気や夢がないのとは真逆で、まだ20歳だからこれから何でもできる!!という「将来」への未確定事項の多さを可能性のように思っていたからです。

何も決まっていないから、逆に何でもできる!!というポジティブな逆説を胸に、持て余した高揚感をさらに加速させ、しょっちゅうサーキットに走りに行っていました。サーキットに行かない日も無駄に四国まで走ったり、栃木まで走ったりずっと一人でドライブをしていました。

そのころは、この先「何でもできるはずであろう自分」のアイデンティティが、結婚することにより「●●さんの奥さん」と固定されてしまうことが何よりも怖く感じました。もし結婚をしてしまったら、これから私が何に挑戦しようが、何を得ようが、私自身の価値には還元されず、私より先に社会的信頼を勝ち取った彼氏の「●●さんの奥さんの暇つぶし」のような扱いを受けるということになってしまう。それは今後の私の人生を濁らせてしまう!!と哲学的な理由で別れることになりました。強引にサーキットの話と繋げるならば、誰かのメカニックにはなりたくない！自分はハンドルを握って走りたい！って感覚ですかね。

またその数年後、20代後半に付き合っていた彼氏からもプロポーズを受けました。その人とは年も近く、話も合うし、育ってきた環境も似ていました。自分としては初めて気を楽にして付き合える相手だったのですが、心のどこかで「この人頼りないな」と思うことが多く、なかなか踏み切れずにいました。この人頼りないと思うのは、決断力がないとかなよなよしているといった性格的なことではなく「悪に憧れる節」があったからです。……漫画やドラマで「あーこいつ絶対早めにゾンビに喰われるな」と視聴者が思うであろう卑怯なキャラのように倫理観の欠如があったので、そこが私には幼稚っぽく見え、結婚に踏み切ることができなかったのです。

これまでどちらかといえば恋愛体質に生きてきましたが、そもそも飽きっぽく、一人の人を長期間好きになることが自分には合わないと感じていたし、執着深い性格でもありません。付き合っていても飽きたら話し合いもせず、メールやラインで別れを告げたり、ドライどころか普通に酷い人サイド、だったのですが、途中からだんだんその繰り返しに、飽きてきてしまいました。

建設的ではない、といいますか人を好きになってもそのうち飽きて適当に別れてを繰り返すうちに「くそ！何回タイムリープしてもまたここに辿り着いちまう！」と出口のない時の螺旋に迷い込んだ主人公のように絶望感を感じるようになってきたのです。

自分の都合で自分一人の楽しみを追求することに天井が見えてきたという表現が近いと思います。サーキットで走ることも、海外旅行に行くことも楽しいのですが、その楽しさがどの程度のものなのか？をある程度予測できるという「つまらなさ」がどんどん湧くようになってきたのです。パチンコ台で例えると「あーこの台MAXまで出ても5000玉かー」という感覚ですかね。哲学者キルケゴールの「美的実存」というのがまさにこの状態なのですが、刹那的な楽しさの先に成長が見えず、だんだん虚しさが募っていくようになったのです。

もともと妊娠して体のラインが崩れるなんて考えられないと思っていたし、子供のことも好きでも何でもなく普通でした。正直、他人の子供を見ても超絶顔が可愛い場合を除いて、可愛いと全然思わなかったのですが（失礼）、そういう価値観とは別に「未知のものに振り回される」という経験も面白いのかもしれない！と思うようになりました。

私は猫を３匹飼っていますが、毎日「なにそれ、そんなの初めて見たよ！今までしてなかったじゃん！！」という斜め上のポーズや行動を見せてくれます。そして毎日、猫たちが見せてくれる斜め上の未知なる行動が愛おしく感じてくるのです。子供がいればそのような「未知なる斜め上」を日常でもたくさん体験できそうだなと思ったので、子供を持つことに前向きになりました。

と言っても全てを子育てに捧げられないと思うので、できる限りいろんなサービスを利用していきたいなと思っています。節約が苦手なので、プラマイゼロになってしまうかもしれませんが、その分働くしかないですね！！ひとまず産むまでしっかり働きます！

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