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書かないコピーライター。

#仕事について話そう
「え?・・・コピー機を操作してお金を、もらうの?」
「いや、文章を書くんだよ。」
「・・・あなたの汚い字で、お金がもらえるの?」
私がコピーライターになったことを告げた時の、母との会話です。
まだコピーライターという職業の社会的な認知が低かった時代ですから無理もありません。私の悪筆や文才を心配した母の、少しあっけにとられたような、困ったような顔を、いまでも思い出します。
確かに、書くことは好きではありませんし、文才があるとも思っていません。「答えを表現する手段」として言葉を選んだだけなのです。
ですから「ワープロ(懐かしいですね)」が登場したときは、思わず快哉を叫んだほどですし、その後の「パワポ」では、自分の考えを短時間に客観的に整理できるようになったことに感激しました。

コピーは「書く」ものではなく、「考える」ものだからです。
ですから、ヘッドラインができたときには、ボディコピーも頭の中でほぼ完成しています。ボディコピーを書き出すとき、何となくゴールが見えているのです。「おそらくこんなことを書くのだろうな」というコンセプトの感覚が、そのまま文字になっていく。このnoteも、そんな感じで書いています。
調子のよいときは、考える速さと書く(打つ)速さがシンクロして快感さえ覚えます。

逆にヘッドラインは「手書き」です。
「言葉の体温」のようなものを指先でダイレクトに感じながら、答えを反芻しています。何回も何回も繰り返し、本当にその言葉(答え)は正しいのかを自問します。
ここまで読み返してみて、「だいたいこんな感じだな」という感覚があります。「書かないコピーライター」というヘッドラインを決めたのと同時に、この文章が頭の中には(多分)あったのです。
「書かないコピーライター」は、無駄な文字を書きたくないだけなのかもしれません。(若いライターの方にはお勧めしません。)


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