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生と性と姓 “SAY”の問題

家族への告白

最初にがんを疑い受診した時から、いつどの段階で家族に話すべきか、本当に迷いました。がんの検査結果がわかるまでは3週間。じりじりと悩むのは自分ひとりでいい。私には20数年来同居している内縁の夫がいるのですが、どこかのタイミングで話さなければなりません。悩んだ末に結果が判明する前夜「実はがん検査を受け明日結果が出るの、黙っていてごめんね」
と打ち明けました。
「がんだったら」という悩みも一晩だけなら付き合わせても許されるはず。夫は「わかった一晩ならジタバタする時間もないよね」と冷静に受け止めてくれました。その晩は安心して二人ともぐっすり眠ることができました。
3歳年上の姉には手術の少し前に直接伝え、高齢の両親には一切知らせないでほしいと頼みました。姉は黙って私のわがままを受け止めてくれました。
姉はほどんとしゃべらず車を走らせ帰ったので、どこかで車を停めて一人で泣いたのかもしれませんが、その日のことはまだ聞く勇気がありません。


告白するタイミング正解は?

Qがん告知は家族にいつ話すのが正解だと思いますか?
A1「体の異変に気付いたらすぐ相談する」
A2「病院に行く前に話す」
A3「診断結果が判明する直前」
A4「診断結果の判明後 がんだった場合は話す」
A5「がんではなかった場合は言わない」
私は最初自分の選択A3が「最高の判断だった」と思っていたのです。
しかし時間経過と共にどれも正解ではない気がしてきたのです。日ごろから生理のことや体の変調を思いやっていれば、そもそもパートナーは気づくはずだと思うのです。我が家はよく「うんこ出た」「すごい立派なうんこ」と
お互い無駄に報告します。それなのに、あまり生理については「きょう生理なんだよね」「もう終わるよ」くらいしか話したことがありませんでした。
50歳を過ぎて閉経が近くなった頃にはもう前回いつだったかさえ自分も忘れるほどで話題にもしませんでした。
担当医師によると、子宮体がんは閉経前後に発症する例が多いそうです。
ですから本当は閉経が近い40代後半から50代の変調をきたす時期に注意を払うべきだったと今になって思います。

生きること、生理と月経と性

最近コロナ禍で急に女性の生理や生理用品、生理休暇の話がテレビや公の場で議論されるようになってきました。暗闇に押し込めてきた生理を、もっと早く解放してパートナーや家族と話せていたら私は子宮体がんの告知でこんなにも悩まなかっただろうと思います。
みなさんも家族や親しい友人、職場で「生理不順で不正出血が続いて…」と言うのは勇気がいるでしょう。人に言えず我慢してもう少し様子を見てなどと、自分で発見を遅らせてしまう例もあるはずです。
私はテレビの報道番組で長年ディレクターをしていて、がん企画をいくつか手掛けてきました。がんの最新治療や抗がん剤の認証問題、患者の社会復帰。どんなテーマでも必ず「早期発見が大事」「がん検診を受けましょう」というメッセージを伝えてきました。
もし再びがん企画に関わることがあるならば、一歩踏み込んで「早期発見のために生理の話をしよう」というメッセージを伝えたいと思います。
生理は女性の月経だけではなく生物として生きることの生理、男女の性についてもまだまだこれから考えを深めていきたいと思います。
今もうひとつおまけに「姓」のこと、夫婦別姓も気になっています。
知人に「内縁関係だと手術の同意書にサインできないって本当?」と聞かれました。いいえ、大丈夫です。内縁の夫も何度も大手術を受けていますが、私は毎回「続柄・同居人」と書いていて、困ったことは一度もありません。
医師や看護師に聞くと、本人が支払いできない場合や医療事故の時の責任者という位置づけなので、戸籍がどうであれ重要ではないと言っていました。
がん告知をきっかけに「生、性、姓、」SAYの問題が私の頭の中で渦巻いて広がり始めています。これまで個別の問題として捉えていた事象が互いに引き寄せ合い大きく動き始めている、まだ形を成していないレアな状態がどう変化を遂げるのか、社会がどう変わっていくのか観察を続けます。

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