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がんは「いい面構え」をしていた

がん告知


2020年2月27日「がん告知」は拍子抜けするほど明るく前向きでドラマで見るような精神的ショックはまったくありませんでした。
医師「組織検査の結果、子宮体がんですね。でもいい面構えです」
私「ええと、がん?」 医師「子宮体がん。でもいい面構えしてるんで」
私「え?いいって、良性?」 医師「ではないですね、子宮体がんです」
悪性なのか良性なのか「いい面構え」の言葉に惑わされてすぐには理解できませんでしたが、私は子宮体がんで手術が必要な状態でした。
「いい面構え」とはいわゆる業界用語で治療しやすい初期の状態<G-1>を指すそうです。
医師は先手必勝ですからと、まず最短で空いている手術日を押さえました。
「ここの病院でどんな病状でも万全で開腹手術できる日とりあえず3月17日手術予約入れちゃう。それから手術までに出来ること全部やる。CTとMRIで徹底的に調べる」医師の熱意を感じました。

信頼すること「漂流者」にはなりたくない

3月5日(木)正式な病名は類内膜がんと診断。CTとMRI検査など判断材料もそろったので、私は医師に基本的な質問をぶつけてみました。
「手術の内容は子宮内膜のがんの部分を切除するの?」
すると医師は…「ああっ、あの子宮と、卵巣とリンパ節も全部切除します
全部摘出です」
あわてて答えたので笑ってしまいました。
女性診療科で一番の若手とみられる医師はがん発見の恩人ではありますが、おいおいそれはダメだよ。手術とは聞いたけれど子宮と卵巣とリンパ節摘出とは一度も聞いていない…還暦間近の50代だからいいものの、まだ出産可能な若い女性だったら、子どもを授かることをあきらめなければならない、大変な決断を迫られるのです。私が落ち着いていて、物分かり良さげな態度で手術の話を進めていたので、おそらく医師の脳内は最短最速で完璧なスケジュールが組まれていたのでしょう。ただ告知の失敗はあっても、熱意溢れる若手医師を信頼する私の気持ちは変わりませんでした。
その後、執刀医である女性診療科の部長から“十分納得できる”丁寧な説明を受けました。よくがん宣告の後ネットで名医のいる病院を探したり、セカンドオピニオンを求めて漂流し続けるという話を聞きます。
抗がん剤がいいとか悪いとか、あの病院は助からないとか、誰が何を根拠に流した情報なのか不明ですし真偽の見分けもつきません。
インターネットの空間を漂流し続けていると、最後に誰を信じたらいいのか、誰が真剣に私の命を支えてくれているのか、自分自身がどうしたいのかさえもわからなくなってしまうだろうと思っていました。
だから私がネット情報を確認したのは、国立がん研究センターの用語解説くらいのものです。たった一つしかない自分の命を預けるのですから、医師や看護師の経験実績に基づく話を聞いて、様々な質問を投げかけて不安を解消して、信頼関係を築きました。

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