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自分らしく生きること

抗がん剤を打って3週目

抗がん剤を打って1週目、頭皮にピリピリと痛みが走りその後突っ張るような痛みに変わりました。そしてきっかり2週目にその日がやってきました。お風呂で髪を洗うと、剥がれ落ちるように痛みもなくごっそりと髪が抜けたのです。最初はこめかみの一束。そして生え際、そして3週目にはほとんど抜け落ちました。

【6月3日 memo】
脱毛が一気に進んだ。
タンポポの綿毛みたいな残りの毛もわずか。
抜け毛がちくちくしてイライラが募る。
午前3時に剃髪。すっきりした。
スキンヘッド最高ちょー気持ちいい。
抜け毛拾いから解放されたし。
男ならスキンヘッドでも驚かないだろうが、
女性だと痛々しいような目で見られるのが嫌。
今はたくさんウィッグあるのに…とかね。
本人はすがすがしいんだからいいじゃない。
スキンヘッドは男の特権ってわけじゃない。


当時のmemoを見ると脱毛のストレスは本当に重たかったのがわかります。
夜中にカミソリで頭を剃っている姿を他人がみたら心配するだろうなと思いますが剃髪で気持ちはスッキリ前向きになりました。

公共の場でも自分らしく

5月18日。白血病を公表している競泳の池江璃花子さんが丸刈り姿の写真を公表しました。
「今のありのままの自分をみてもらいたいという私の気持ちを大切にして下さりありがとうございます」
そのメッセージは眩しいほどに輝いてみえました。
7月4日。池江璃花子さんが20歳の誕生日にプールで泳ぐ姿を見て、絶対に目にゴミが入ったせいだと思うのですが…涙がこぼれて止まらなくなりました。初老女の私にとって池江璃花子さんは本当に特別な存在です。

抗がん剤の投与を受けたある日。病院帰りに近くの喫茶店に入り、スキンヘッドから滴る汗を拭こうと帽子をとりました。
すると隣席の男性が「がんで死んだ母親思い出すから嫌なんだよな」
小さい声でつぶやいたのが聞こえました。
私はあわてて帽子を被りなおしました。
頭皮の怪我や日焼けを防ぐため帽子は必需品ですが、正直なところ直射日光が当たらない屋内なら「スキンヘッドも悪くはないか」と思っていたのです。しかし頭髪も眉毛もまつ毛も抜け落ちてよろめきながら歩く私の姿は、誰が見ても闘病中のがん患者です。
その私を見て家族が苦しんでいたことを思いだしたり、不快な思いをする人もいるのだと初めて思い至りました。
逆に多くのがん経験者は温泉など公共の場所で脱毛や手術の傷あとを見られることに抵抗があると思います。ジロジロ蔑むような目で見られたり心ない言葉に傷ついたりもする。実際に私の知人が温泉地に行った時「せっかくの楽しい気分が台無し」とか「子供が怖がるから傷を見せるな」と言われたそうです。その精神的ダメージからは今も立ち直ることができず引きずっているのだと打ち明けてくれました。

がん患者が考えるジェンダー

最近、多様性の尊重やジェンダーが注目されはじめたとは言っても、スキンヘッドが違和感なく許容されるのはまだ男性ばかりのようです。
例えば職場で薄毛になった初老の女性が
「思いきって剃っちゃったよ」といきなりスキンヘッドで出社したら、痛いほどの好奇の目にさらされるでしょう。
女性はたとえファッションとしての主張でも奇異な目で見られます。
医療用ウイッグのカタログも女性用ばかりで男性用はわずか。男は帽子を被ればいいとされているのでしょう。
一方で女性は抗がん剤の副作用ともなれば自分のため、そして周囲の人への配慮のためにも、帽子やウイッグで身なりを整えるのが「常識」と考える悪意の無い人が多いのだと思います。
しかし。真夏の酷暑で気温40度ともなるとウイッグなんて拷問です。
なぜ女性は数万円もするウイッグを購入してわざわざ苦しい思いを倍増させなければならないのか。その上コロナ対策でマスクも絶対必要です。
悪意の無い常識を変えよう。
私は私。

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