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No music,No future.

言いてぇ……

俺の勝負曲は……

マキシマム ザ ホルモンの……

『ロッキンポ殺し』だって言いてぇ!!

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でも、ホルモンの歌は勝ち負けじゃないんだ。

勝ち負けとか関係ないやん。

だって俺ら友達やん!


……つーわけで、わたしの勝負曲はDEARDROPS(ディアドロップス)の『No music, No future』です。

何も聞かずに、聴いてください。


はい、一瞬で引き込まれたでしょう?

しかし残念ながら、DEARDROPSは架空のバンドです。

てか、エロゲの曲です。

製作は株式会社キッチンガイズファクトリーの、アダルトゲームブランド「OVERDRIVE」。設立者は音楽ユニットmilktubのリーダー、bambooさん。ブランドの代表者がゲーム音楽を担当するという、エロゲ業界内でも少し変わった会社です。

で、このmilktubが『No music, No future』を作詞作曲したわけですが、ゲームと現実をリンクさせようとする試みにより、楽曲はDEARDROPSの名義となっています。

milktubはアニメ『バカとテストの召喚獣』エンディングテーマや、アニメ『有頂天家族』のオープニングテーマなど、おバカで元気なロックが持ち味です。それがDEARDROPSではヴァイオリンと合わさり、ロックとクラシックが融合したような楽曲へと変貌を遂げます。とてつもない音楽性の広さ。

オシャレで上品なnoteユーザーはエロゲなんてやらないでしょーから、わたしが紹介しなければ存在すら知らないまま一生を終えていたことでしょう。よかったね。

作品が気になった方はアプリ版が販売されているので、そちらでプレイすることが可能です。しかし、ご安心ください。本文は『DEARDROPS』をプレイせずとも、内容が分かる構成となっています。

なぜなら、わたしもプレイしたことが無いから。


だって……だって……シナリオが瀬戸口廉也じゃないんだもん!!

瀬戸口さんはフリーのシナリオライターで、サイコっぽい鬱な物語が特長です。例えば自身2作目の『SWAN SONG』は、大災害後の異常事態下に置かれ続ける人々の心理、行動を緻密に描写しています。犯罪に手を染める人間の思考を、すごい具体的に書いているので、読んでいる我々も切迫した気持ちになれて面白いです。

その高い文章力で、小説家デビューもしています。実はわたしも知らなかったのですが、唐辺葉介という名前で何冊か小説を出しているそうです。きっと、サイコサスペンスな物語なのでしょう。

重たい内容を書きがちな瀬戸口さんがOVERDRIVEで執筆した作品、それが『キラ☆キラ』です。どうでしょうか? タイトルからして明るいでしょう?

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ストーリーは普通の高校生がバンドを組んで、文化祭で演奏する王道もの。悪く言えばテンプレだけども、あの瀬戸口さんが甘酸っぱい青春コメディを書いてるってだけで興味あります。

『キラ☆キラ』も『DEARDROPS』と同じく、アプリでプレイすることが可能です。マジの名作なので、気になった方はプレイすることをすすめます。メインルートだけやってれば十分。こちらのパンク音楽も最高です。

ちなみに、OVERDRIVE × 瀬戸口廉也の最新作であり、最終作の『MUSICUS!』絶賛発売中。全年齢版への移植プロジェクトも始動しており、クラウドファンディング実施中なので支援のご協力お願いいたします。



宣伝もしたところで、やっと本題へ。『キラ☆キラ』ではプレーヤーがパンクに詳しくないであろうことを想定した都合上、ちゃんとパンクとは何か初心者へ丁寧に説明する必要がありました。

その経緯で、パンクロッカーの心構えが提示されます。それが「No music, No future」です。「音楽以外、信じない」と。

バンドマンの生活は不安定です。バンド演奏は楽しいけど、とにかく金がかかります。練習するスタジオ代、音を作る機材の購入費、機材を運ぶレンタカー代、ライブのチケットノルマ代、打ち上げの会費など。チケットのチャージバックだけでは賄い切れない経費を支払いつつ、活動を続けるためには多くの時間をアルバイトに割いて日銭を稼ぐしかありません。

金も時間も無くて、先も見えなくて、何も変わらないまま時間が過ぎていく。その間にも同い年の人たちは就職して働き、結婚もして社会的な地位を獲得しているのに、自分はいつまでたっても大人になれない。

なんで、こんなことしてるんだろう?

幸せになりたい。


でも、それでも、自分の人生を変えてくれるのは音楽なんです。

普通に友達できず、普通に仕事できず、普通に恋愛できず、普通に生きられない。そんな普通に馴染めなかった自分の感情が輝くのは、ライブステージでバンド演奏する一瞬だけ。

だからこそ、くだらない筋書きの感動ドラマなんていらない。エピソードの連続性や、因果関係なんて死ぬ程どうでもいい。大事なのは瞬間に命を懸けること。

音楽を信じているから、このクソったれな世界に愛を込めて歌えます。



……とまぁ、ここまで「No music, No future」を語りましたが、わたしは別にバンドマンじゃありません。学生時代にバンドマンを志したわけでもなく、特にやりたいことも無かったので、ただ漠然と高校教師になりたいなぁとだけ考えていました。

でも採用試験には落ちたので、よく分からない一般企業に就職しました。契約社員で安月給だったので、基本的にやる気ありません。やることだけやっていれば問題は無いと思うのですが、どの職場でも自分で仕事を見つける気遣いが求められがちです。

かくして、わたしは中間管理職に呼び出されます。なんで、やる気が無いの?と。正直に、給料が安くて仕事が大変だからと伝えました。すると相手は何を思ったのか、羽柴秀吉が織田信長の草履を温めていたエピソードを出して、我慢すればいつかは報われると諭します。

いや、給料を上げるか、職場環境を改善してくれ。相談内容に対してのアドバイスが見当違いすぎたので、それ関係ないですよね?と指摘しました。

で、担当者はわたしが教員免許を持っていることを思い出したのか、先生と生徒の話をします。例えば勉強でやる気が出ない生徒に対して、あなたならどうやってやる気を引き出しますか?と。

そもそも前提条件が異なるし、状況も把握できなかったので、他に熱中してる趣味とかあるんじゃないですか? 部活とか、バンドとか。生徒個人で悩みは千差万別なので、わたしは答えようがありません。

すると鬼の首を獲ったように、担当者は趣味にばかり時間をかけていたら将来的に困るでしょと。特にバンドなんて不安定なんだから、人生の保障として勉強もやらせないと駄目だと説きます。

おそらく担当者にとっては、仕事と勉強が同義なのでしょう。わたしは話がすり替わってるなぁと思いながら、まぁ一理なくもないと納得しかけたところ、あの言葉が脳裏に浮かびます。

いや、「No music, No future」ですから!

反射的に叫び、担当者は爆笑。どうやら意味が伝わらなかったらしく、最後にはやる気が出ないなら辞めればいいじゃんと言い残して去りました。



この世はリスク化社会です。何事においても人生の選択時、危険が生起する可能性があります。このリスクは避けられないどころか強要される上、個人的に対処しなければいけません。

昭和の終身雇用制のように組織が守ってくれるわけでもないどころか、能力の低さを自己責任として切り捨てられます。バンド活動もしないで大学卒業したわたしですが、社会のどこにも保証なんてありませんでした。退社後も自主都合として処理されたので、社会保険も受け取れませんでしたからね。

真面目に勉強したって、バンド活動したって、落ちる時は落ちます。どちらもリスクが小さいか大きいかの違いでしかありません。

そのことに気づいた時、わたしはリスクが大きくても、自分が進むべき道を選ぼうと決めました。後は勇気だけ欲しくて、DEARDROPSの『No music, No future』を聴きます。

歌い続け 歌い続けないと
埋もれてく、ノイズに。
中途半端な気持ちじゃいつかは
立ち止まる日が来るよ

進むべき道はもう見えてるんだ
No music,No future.


音楽以外、信じない。わたしにとっては、授業もライブみたいなもんです。過去も未来も関係なく、その一瞬に命を懸けたいから、わたしは理不尽な社会にも愛を込められる。

世界 VS 俺。勝負しようぜ。

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