見出し画像

映画『リズと青い鳥』ストーリー解説

どうも、ササクマです。みなさん本文のリンク先から飛んでいただけたかと思います。

何かの手違いで迷い込んでしまった方は、以下のリンクを踏んでいただければ幸いです。

さて、これから『リズと青い鳥』のストーリー解説をしていきたいと思います。別に読まなくても生きてはいけるのですが、もっと本作について理解したい方にとっては楽しめる内容です。では、どうぞ。


※ネタバレ注意
ここから先の文章は、本作のネタバレを含みます。てか、全部を書きました。大丈夫かコレ? 通報されねぇかな? ウィキペディアより悪質かもしれん。通報前にコメントしましょう。全部、読んでからの判断お願いします。では、どうぞ。


物語Aパート


1.導入
森の動物たちにパンをあげるリズ。パンに食らいつくリスの動きがリアル。パンが無くてシュンとするアライグマ可愛い。

少し離れた所で、一羽の青い鳥が止まっている。その美しさに見惚れるリズ。青い鳥は飛び立ち、彼女の周りを旋回してから去って行った。

朝、登校するみぞれ。昇降口前の外階段に座り込む。誰かの規律正しい足音が聞こえるが、彼女は反応せず俯いたまま。次は軽快な足音が聞こえ、みぞれはハッと顔を上げる。視線の先には希美の姿。

二人が挨拶するシーンも無く、先を行く希美。その後ろを一定の距離を保ち、静かに付いて行くみぞれ。

外階段を上り切った所で、希美は青い羽根を拾う。太陽の光に透かして綺麗と喜ぶが、みぞれの視線からは日差しが眩しい。その眩しさが観客から見て、彼女が希美に抱く心象と重なる。

青い羽根を貰うみぞれ。なぜか「ありがとう?」と疑問系。希美が気に入った羽根を貰って「いいの?」という気持ちと、彼女から貰った物は何でも嬉しいという気持ちが入り混じった結果の返答。知らんけど。疑問系の理由は台本にも書かれていない。わたしが勝手に推測しただけだが、終盤にて疑問形の理由が判明?


2.dis joint
校舎に入り、音楽室へと向かう二人。ここでも希美が先を行き、後ろをみぞれが歩く。バラバラな歩調。活発な希美と丁寧なみぞれの動作は対照的であり、このシーンは二人の性格を分かりやすく表している。

また、移動中にスタッフの名前が表示されるが、全く目立たない。部屋の壁や廊下の床、中庭の草花と同化している。スタッフと観客含めて傍観者となっており、物陰から息を潜めながら物語を見届けることになる。

音楽室を開けるのは、鍵を持つみぞれの役目。さっそく朝練を始めようと、楽器の準備をする二人。音出しの最中、みぞれは思わず「嬉しい」と呟く。反応した希美は「私も嬉しい」と言う。カメラの距離は二人の心の距離を表しており、微かに期待したみぞれへ急接近する。その瞳は零れ落ちそう。だが、希美が嬉しいと感じていたのは自由曲の良さであり、判明した途端にカメラが離れる。しばらく同じ画面に映らない。

自由曲である「リズと青い鳥」の話題へ。最初は興味が無いみぞれだったが、物語の冒頭を聞いている内に感情移入し、ひとりぼっちのリズを自分と重ねた。また青い鳥を希美に投影し、自分に話しかけてくれた思い出を反芻する。

しかし、「リズと青い鳥」の内容は、二人が別れる結末で終わる。青いインクの染みがデカルコマニーにより、羽ばたく鳥の姿に見える。結末を聞いて嫌な話だなと感じるみぞれ。だが希美は直感的に「私たちみたいだな」と言う。聞き逃せないみぞれであったが、あっけからんとした希美は「別れるなんて悲しいよね。物語はハッピーエンドがいいよ」と続けて言う。ちょっと嬉しいみぞれ。

音を合わせるため演奏。そこへタイトルが浮かび上がる。リズの文字にみぞれ、青い鳥に希美が重なるよう、観客のミスリードを誘う。ピッチが合わないまま演奏は終了。

希美は本番が楽しみと言う。だが、みぞれは少しでも長く彼女と一緒にいたいので、本番は来てほしくない。代わりに練習は好きか、この曲も好きか尋ねる。どちらも好きだと答えた希美の楽譜には「solo」の文字。

部員たちがぞろぞろ音楽室へ入ってくる。軽快な会話を交わし、希美はパート練へ移動。フルート担当の後輩たちに囲まれる希美。練習はしておらず、お菓子を食べながら可愛いガールズトークを楽しむ。対してみぞれは一人。「本番なんて、一生来なくていい」と呟く。

…………このペースで書いてて終わるのか?


3.日常
街へ仕事に出かけるリズ。パン屋で真面目に働いていると、楽しそうな家族連れを窓越しから羨ましそうに見つめる。

仕事が終わり、一人寂しく帰宅して食事をし、寂しいなーと思いながら眠りにつく。次の日の朝、湖のほとりへ行くと、青い少女が倒れているのを発見する。目を覚ました少女はガバッと起き上がり、興奮気味にリズの名前を呼ぶ。


練習風景。吹部の目標は全国大会で金賞を獲ることだが、みぞれはコンクールに関心が無い。

練習終わり。青い羽根でリード掃除するみぞれ。後片付けする希美と、後輩たちの可愛い会話を羨ましそうに見つめる。そこへ登場する梨々花。ダブルリードの会へ誘うが、自分がいてもつまらないだろうと遠慮したみぞれは断る。

一緒に帰りたいみぞれは希美に話しかけるが、彼女は後輩たちとファミレスに寄るとのこと。なので先帰っててーの意を込め、「また明日ね」と告げる。少し傷つくみぞれであったが、また明日あることに安心。


時間ジャンプ。オーボエの個人練をするみぞれ。オーボエは非常に手間がかかる楽器であるものの、一人作業が苦にならない彼女にとっては性に合っている。逆に楽器経験者からすると、希美はフルートの扱いが雑らしい。そして後片付け中、みぞれは青い羽根を手で閉じ込め、願い事をするように口へ当てる。尊い。

廊下から梨々花たちの笑い声。「さしずめダブルルー・リードだよー」発言は、山田監督が考えた渾身のギャグ。ダブルリードのあるあるネタが思いつかない中、「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のルー・リードが出てきたとのこと。わかんねぇよ。ただ、女子高生がこんな会話してたら最高だなって、照れながら自分のギャグ解説する山田監督が最高に可愛いからBD買って。

みぞれとお近づきになれないことに悩んだ梨々花は、たまたま廊下ですれ違った希美に相談する。「先輩って、鎧塚先輩と仲良いですよね?」と言われた希美は、足をトントンさせながら「と思うよ」と返答。少し含みを持たせていることから、希美にとってのみぞれは友達と言うより、切磋琢磨する好敵手のような存在なのかもしれない。知らんけど。

ちなみに、梨々花が自ら名乗る「鎧、じゃなくて剣崎です」発言は、自己紹介時の鉄板ネタらしい。原作にも無い設定なのだが、誰もそれを説明してくれない。キャストのオーディオコメンタリーで判明した。あえて説明せず観客を置き去りにすることで、わたしたちは彼女たちしか知らないエピソードを想像するため、自然と登場人物に厚みが生まれる。アニメキャラを記号として消費することがない。

梨々花の相談に乗った希美は、お礼にゆで卵を貰う。なぜ、ゆで卵? 青い鳥がテーマに関わっているため、非常に意味深だが台本に説明は無い。オーディオコメンタリーに出演した種﨑さんも、コンビニゆで卵の味比べをしたプチ情報しか教えてくれない。お手上げ。変わった子だなーと思いつつ、希美は彼女を見送る。

おそらく、あなたは卵の殻の中にいますよ、という隠喩か何かだろう。まだまだ未熟な身でありながら、どこにも行けず自分だけを守ろうとしている。そんな希美の状態を表しているのではないか? 知らんけど。


4.そばにいて
再びリズパート。すっかり元気になった青い少女は騒がしく、賑やかな雰囲気でリズも楽しそう。幸せに暮らす二人だったが、青い少女は洗濯物のハンカチを飛んで取ろうとしたり、人間にしては少食すぎたり(小鳥なので)したため、リズは次第に彼女の正体に気づく。

ある日、リズは「どうしてここに来たの?」と彼女に尋ねる。彼女は「リズが一人ぼっちだったから」と、「一緒にたくさん遊びたかった」と答えた。突然、立ち上がって丘を駆け出す少女を、リズは思わず叫んで引き止める。「お願い。ずっとずっとーー」

「そばにいて」と、本を読みながら思わず声に出してしまうみぞれ。下校のチャイムで我に返り、図書委員から「鍵、閉めるんですけど」と、速やかな退出を命じられる。みぞれは音楽室の鍵を開けられても、図書室の鍵は閉められない。


朝練が終わって教室への移動中、低音パートの「大好きのハグ」を目撃する希美とみぞれ。「相手の好きな所を言い合いながらハグするの、中学の時に流行ったなー」と懐かしむ希美。みぞれがやったことないと言うと、希美は手を広げて待つ。戸惑って赤面しつつも、手を伸ばすみぞれだったが、直前で冗談交じりに止める希美。カメラがみぞれにUPされ、やだった?の表情。希美は笑いながら「ごめんごめん」と、何事も無かったかのように先を行く。

教室に戻った二人。別クラスの希美を見送るみぞれは、夏紀に話しかけられても気づかない。ようやく教室へ入ろうとしたところで、担任教師に呼び止められる。進路希望調査所を白紙で出したらしい。

数学の授業。2と3、4と5のように最大公約数が1以外の共通した約数がない関係、そのような二つの数字、これを「互いに素」と言う。お互い隣合わせにいながら、共通点が見つからない関係性って、みぞれと希美の二人と似てるよねって話。のぞみぞれ。山田監督は作品制作のコンセプトを決める際、数学や物理に関する事柄がインスピレーションに繋がると述べる。

体育の授業でバスケ。夏紀のプレイを見学しているみぞれであったが、交代の時間になっても動けない。おそらく、バスケで突き指などの怪我をしたくないのだろう。だが、自分からは言えない。

見かねた夏紀がサポートし、連続出場する。気にするなと親指を立てても、みぞれは申し訳なさそうに膝を抱えるだけ。夏紀は夏紀でコンクールメンバーに選ばれるかギリギリだったはずだが、そんな不安は感じさせないほど気丈に振舞っている。

放課後の音楽室。練習前のフルートパートは、またお菓子を食べながら恋話に花を咲かせる。突然、後輩から「のぞ先輩はデートしたことありますかー?」と質問され、希美は動揺してしまう。

生物学室にて、水槽のミドリフグを眺めるみぞれ。ミドリフグは熱帯魚として人気があるらしい。淡水で飼育可能だが、成長するにつれて海水の環境が必要だとか。その上、牙が伸びると餌が食べられなくなるため、飼育には牙を切る手間がかかるとのこと。この世話がリードを削る作業とも似ている。また演出意図として、フグはハグを連想させるだろう。

目を閉じるみぞれは、白昼夢を見る。揺れるポニーテール。両手を広げ、今にも空へ飛んでしまいそうな希美の後ろ姿。すると、閉じた目に強い光を受ける。気づいたみぞれは起き上がり、向かいの棟にいる希美を発見する。希美も気づいて手を振ると、自分のフルートが光を反射し、みぞれをちらちらと照らしていた。少し興奮気味の希美を見て、嬉しくなったみぞれは笑う。だが友達に呼ばれた希美はしゃがんでしまい、笑い終わったみぞれが視線を戻すと既にいなかった。

ありふれた日常。特別なことなんて何も無いはずなのに、その刹那を生きる彼女たちの青春が輝いて映る。アニメ映画史に残る伝説の名シーン。

時間経過。全体練習の休憩中。それぞれで復習していると、後輩たちがフルートのソロは誰か噂話をしている。「たぶん、のぞ先輩だよねー」「うまいもん」との声が聞こえ、満更でも無い希美。俄然やる気を出し、みぞれと目を合わせて「がんばろーね」と口パクする。コクンと頷くみぞれ。


5.進路
リズパート。夜、綺麗な月が出ている。明日も晴れて、たくさん遊べると喜ぶ二人。一緒のベッドで寝る。だが月光が落ちる頃、少女はベッドから抜け出す。暫くして鳥の影が飛び立つ。ふとリズが目を覚ますと少女がいない。起き上がろうとするも、窓の外から青い鳥が戻ってくるのが見える。慌てて寝たふりすると、そーっと少女がベッドに入って来た。

朝食。もうじき寒くなる。少女は「冬になったらどこへ行くの?」と質問するが、リズは「どこへも行かないわ」と答える。青い鳥は渡り鳥。不思議そうな反応をする少女と、不安になってきたリズ。

森で動物たちにパンをあげるリズ。その横で、少女は飛んでいる小鳥を羨ましそうに見ている。その様子を目にしたリズは、険しい表情で何か考え込む。


また生物学室でフグを眺めるみぞれ。新山に呼ばれて驚く。彼女は音大の先生で、コンクール前の臨時講師として去年から指導していた。腰を据えてお話しする二人。なんでここにいるのが分かったのか聞くと、新山先生は「鎧、じゃなくて剣崎さんに教えてもらったの」と答える。どうやら梨々花ジョークの影響を受けているらしい。

本題に入る前、新山先生はコンクール自由曲の話題を振る。だが、みぞれは自由曲が好きじゃない。それを知らないまま解説を始める新山先生。フルートとオーボエがリズと青い鳥を表している。第3楽章のソロの掛け合いは、きっとリズと少女の別れだと告げられ、みぞれは希美が退部した時のことを思い出す。自分に相談しないまま、希美は突然いなくなった。

だから反射的に、みぞれは「知らない」と言う。「私には、青い鳥を逃すリズの気持ちがよく理解できません」と、つい本音を漏らす。それを聞いた新山先生は、本題へと話を切り替えた。


音楽室で練習中の希美。向かいの棟の生物学室で、みぞれと新山先生が面談しているのを見かける。気になった彼女は渡り廊下で待ち伏せし、何をしていたのかみぞれに聞く。会えて嬉しいみぞれは、「フグにごはんあげてた」と笑顔で言う。

まるで「リズみたい」だと言う希美に、みぞれは「うん」と同意。「はまってるの? フグ?」「うん。可愛い」「今度私も行っていい?」とお願いされたみぞれは幸せすぎて興奮し、パンフレットを握る手に力が入ってしまう。

音大のパンフレットに興味津々な希美。何の気なしに音大を受けるのか聞くと、みぞれは正直に新山先生から貰ったと話す。立ち止まる希美。表情が見えないまま「ふうん……」と呟き、軽い調子で「ここの大学、受けようかな」と言う。その言葉を聞いたみぞれは嬉しすぎて、私も受けると宣言した。

この希美の音大受験発言は、みぞれへの対抗心からではなく、単純にみぞれと離れたくないから出たものだと思われる。そういう解釈もアリって話なので、真意は謎。或いは両方で自覚してない説。


物語Bパート


6.嫉妬
音楽室で優子と夏紀がスケジュール管理に頭を悩ます横で、おもむろにピアノを弾き出すみぞれ。会計係である希美も側にいるが、そつなくピアノを弾くみぞれに注目してしまう。

台本のト書きにて「みぞれは何でも持ってるなぁ」と、嫉妬を自覚し切れていない。みぞれとしては、そこにピアノがあるから弾いているだけ。やりたいとか、やりたくないとか関係なく、生まれながらにして音楽の才能を持っている。また、音大に向けてピアノを練習中でもある。

受験生らしく志望校の話題に移った時、なぜか希美はみぞれが音大を受けることを喋ってしまう。素直に喜ぶ優子と夏紀。だが受験の理由が希美も受けるからと聞いた時、空気が凍り付く。たっぷり間を空けてから、希美は「みぞれのジョーク」と笑い飛ばす。

聞き逃せない優子は、希美が本当に音大を受けるのか確認する。聞かれた当人は「まぁね」と曖昧な返事。重くなった空気を緩めるように、夏紀はあがた祭へと話を逸らす。「みぞれー。一緒に行こうよ」と誘う希美。みぞれは「夢だろうか……」と放心状態になってから、喜んで誘いに乗る。流れで優子と夏紀も一緒に行くことに。

それで話はまとまるはずだが、わざわざ希美は他に誘いたい人はいるか、みぞれに尋ねる。イラっとする優子を、夏紀が茶化して有耶無耶にする。もちろん、みぞれは希美がいればいい。その返答に満足したのか、希美は根拠の無い安堵を感じる。

本人に自覚が無いだけで、みぞれは密かに皆の人気者だ。その彼女と一番仲が良い自分は、周囲に対して優越感を得られる。また他に友達がいないみぞれに対しても、さらに希美は優越感を抱く。みぞれが自分に執着する限り、自分は特別な存在でいられるのだ。知らんけど。


別の日。霧吹きみたいな優しい雨が降っている。パート練習教室へ歩く梨々花。途中でフルートパートの会話を盗み聞き。先輩の呼び方が可愛いと思い、さっそくみぞれのことを「みぞ先輩」と呼ぶ。突然で驚くみぞれだったが、その呼び方を了承したことで距離が縮まる。

練習後、オーボエを掃除する二人。みぞれの青い羽根を見た梨々花は、大絶賛して羨ましがる。希美に貰ったと言うと、「やっぱ仲良しですねぇー」と返され、そう見えるのなら嬉しいみぞれ。これはチャンスだと思った梨々花は、再度アタックしてダブルリードの会へ誘うが、またも断られて撃沈。だが確実に前進している様子。


時間経過。ひまわりが咲く。図書室にて本の返却が遅れたみぞれは、後輩の図書委員から怒られる。無言を貫くみぞれの元に、希美が助け船としてやって来た。彼女は「はいはい。わかりましたー!」と軽くあしらい、みぞれと一緒に廊下へ出る。

「あんなしつこく言うことないじゃんねー」「本返すのって何か忘れちゃうよねー」と文句を言う希美に同意し、みぞれは「うんうん」と嬉しそうに頷く。さらに希美は「『リズ』なら私が借りたやつ貸したのに」と言うが、突然みぞれは「それダメなんだけど、又貸しになるんだけど」と手のひら返し。当然、希美は「え? どうした?」と動揺しつつも、すぐに「はいはい。わかりましたー!」とあしらう。笑い合う二人。

……実はこれ、みぞれのジョークだったらしい。わかんねぇよ。あまり親しくない人からしたら、ちょっと険悪な雰囲気になる所だが、希美はちゃんとジョークだと看破できた。やはり、みぞれの理解者は希美なのだ。その独特なコミュニケーションの間に、他人が立ち入る隙は無い。


7.才能
時間ジャンプ。オーボエパート練習教室。楽器の手入れをするみぞれ。ここで豆知識。オーボエとフルートは木管楽器だ。奏者の唇の振動によらない方法で発音される。オーボエはリードが2枚必要かつ、リードの出来で音色が大きく変わってしまう。水に濡らして開きを微調整するなど、非常に繊細な楽器。対してフルートはエアリードなので、面倒なリードの調節は必要ない。

黙々と作業するみぞれの元へ、梨々花が現れる。丁寧な手つきに感心していると、みぞれの方から「今度、教える」約束をした。非常に嬉しい梨々花だったが、机に突っ伏して泣き始める。部内のオーディションに落ちたこと、先輩と一緒にコンクールに出たかったことを伝えた。みぞれは驚きつつも、梨々花に胸を打たれる。


放課後、部活前の準備。少しでも会場に近い環境を作るため、音を吸収する毛布を敷く。その最中、2年生の葉月とサファイア(本編の主要キャラ)が「ハッピーアイスクリーム」の話をする。同時に同じことを言った瞬間、先にハッピーアイスクリームと言った方が、アイスクリームを奢ってもらえるルール。実際にあるゲームらしい。

後輩の可愛い会話に癒されるみぞれ。そこへ希美が椅子を運んでくる。窓を開けて伸びをした希美は、みぞれをプールに誘う。もちろんみぞれは行くが、他の子も誘っていいか聞く。希美は動揺するも、すぐに持ち直して了承する。


時間ジャンプ。オーボエを練習中の梨々花。スマホの中のプール写真をみぞれに見せる。プールに誘ってくれて嬉しい梨々花は、ゆったり幸せそうにみぞれと演奏を続けた。

「おいおいおい、水着姿を見せろ」と要求したスケベ男性諸君。残念ながら、この物語では学校の外にある出来事に触れない。なぜなら、学校全体が鳥籠として機能しているからだ。

しかし、ご安心めされい。彼女たちの水着写真、ちゃんと用意してあるよ。こっから先は有料にしたいくらいだが、そんな意地悪はしない。わたしを信用しておくれ。ぐへへへへー。

画像1

眼福、眼福。みぞれの水着姿は貴重。清楚、清楚。


んで、音楽室。合奏練習をしているが、指揮者である滝先生の表情が険しい。希美に対して、ちゃんとオーボエの音は聴いているか確認する。同じくみぞれに対しても、フルートの問いかけに答えてくださいと注意。


時間経過。教室にて、みぞれと優子が会話している。梨々花のリードを削るみぞれと、彼女が後輩の世話をしているのが嬉しい優子。みぞれが音大を受けるのは嬉しいが、その理由に懸念があった。希美が音大を受けるから、自分も受ける。それでみぞれは大丈夫なのか心配しつつも、優子は彼女の考えに寄り添おうと思う。

そこへ、優子を呼びに来た麗奈(本編の主要キャラで、実力至上主義)が現れる。用事が済めば去ればいいものを、自由曲が気になっていた彼女は「みぞれ先輩と希美先輩、相性悪くないですか」と爆弾発言。みぞれの実力を信じているからこそ、真正面から切り込む。だが、みぞれは彼女と目を合わせられず、悲しそうに俯く。

思いをぶつけた麗奈はその場から離れる。心配した優子であったが、みぞれは自分を責めた。「違う、希美は悪くない。窮屈なのは、私が青い鳥を逃がせないから。だって希美は、今度いついなくなるかわからない。私の手から、希美を解放するなんて絶対できない。私がリズなら、青い鳥をずっと閉じ込めておく」


一方、別教室で喋る希美と夏紀。模試を何個受けるかの話になるが、希美はみぞれと同じ音大を受けるのに何も話を聞いていない。むしろ夏紀の方が詳しい。逆にみぞれの方からも、自分について何かを話さない。それを知った希美は、「みぞれ何か私によそよそしくない?」と言う。

即座に否定する夏紀だったが、続けて希美は言う。「私さ、1年の時に1回部活辞めたでしょ? 今となっては昔の話だけどさ、その時のことまだ根に持ってたりしないかな。みぞれって思ってることあんましちゃんと話してくれないからさ、いまいちわかんなくって。ソロのところも息合わないし」

夏紀は愚痴を聞かされつつも「私から見れば、二人ともフルートとオーボエのエースって感じでかっこいいけどな」と、率直な感想を言う。それに気を良くした希美は、さらに口を滑らす。「私さ、リズが逃がした青い鳥って、リズに会いたくなったらまた会いに来ればいいと思うんだよね」と。それを聞いた夏紀は「リズの決心が台無しじゃん」と笑うが、希美は「でもハッピーエンドじゃん?」と返す。


希美が退部した理由は、入部当時の3年生と対立したからだ。年功序列の悪習が蔓延していたため、下手糞な先輩でもコンクールでソロを吹ける。そんな環境に嫌気が差し、多くの新入部員が辞めたのだが、その時に希美はみぞれを誘わなかった。理由は特に無い。強いて挙げるなら、貴重なオーボエ奏者であるみぞれは3年生と仲が悪くなかったから。

で、一年後。吹部が関西大会出場となった時、ひょっこり希美は復帰しようとしてくる。現金な奴(笑)。その間も彼女は、社会人クラブか何かでフルートを続けるくらいには、音楽が好きだ。音楽が好きな自分が好きだ。結局、彼女にとって吹部はステータスの一種でしかない。コンクール予選敗退の弱小ではかっこう悪いが、まぁまぁ強い部活ならかっこうつく。そんくらいなもん。いや、知らんけどね?


希美は自分を語らない。誰かに自分を語らせる。それが悪口とならないのは、本人の明るい人徳あってこそ。だが、彼女を慕っているのは主にフルートパートだけ。もしかしたら他パートの部員は、途中入部した希美のことを快く思ってないかもしれない。特に麗奈や久美子なんかは、心の底で見下してそう。

だから希美は周りを囲う。支持者である後輩(南中出身)たちに愛想を振り撒き、自分を持ち上げさせる。だが良い先輩を演じるがゆえに、本音を曝け出せない。希美はひとりぼっちのリズで、フルートパートは動物たちだった。

上記の内容、別に誰かが親切に教えてくれたわけじゃない。わたしの勝手な推測だ。希美は自分を語らないからこそ、我々が想像で補填するしかない。

すると、どうなるか? 我々は自身の体験を鏡のように投影して、無意識に希美の深層心理へと重ね合わせようとする。そして感情移入した結果、自分だけの希美像が完成するのだ。本作のレビューの出来は、どれだけ自分の希美像を語れるかに左右されるだろう。みぞれとなれ。


物語Cパート


8.愛ゆえに
音楽室。コンクールが近づき、滝先生の知り合いである橋本先生と、新山先生が助っ人に来る。さっそく吹部の合奏を聴くが、まずそうな表情をする橋本。視線の先はみぞれと希美であり、二人とも淡々と吹いている印象。

正直、わたしでは演奏の良し悪しがわからん。作曲者の意図を汲み取るならば、ここは決別の覚悟を持って飛び立つのだろう。しかし、この段階ではみぞれも希美も本質を理解しようとしていない。


練習後。廊下を歩く新山の後ろを、希美が追いかける。軽く挨拶する二人。希美は「私、音大受けようと思ってて……」と話を切り出すが、期待していた新山の返事は「頑張ってね。私で良かったら何でも聞いてね」だった。みぞれのことはスカウトしたのに。ショックで呆然とした希美は、廊下に立ち尽くす。

この場面、辛すぎる。自分は特別だと生きていたら、凡人だと思い知らされた瞬間。胸が痛い。だが、新山先生にも悪気は無いだろう。なぜなら彼女は、希美の演奏を知らないからだ。

希美は今年からコンテストメンバーになったため、去年の夏合宿に参加すらしていない。それで覚えている方が無理あるだろう。対して、みぞれにはマンツーマンで指導していたからこそ、才能を見抜けた。贔屓では無い、はず。


別の日、外は大雨。オーボエとフルートのソロの掛け合いは改善するどころか、前より悪くなっている。

時間ジャンプ。部活終わり後も、みぞれへ熱心に個人指導する新山。それを見ていた希美はみぞれと目が合うが、わざとらしく目を逸らす。

時間経過。廊下を歩く希美を、みぞれが呼び止めた。「何か、怒ってる?」と聞かれ、希美は「怒ってないよー」と軽く返事する。「じゃあ、してくれる?」と、みぞれは両手を広げハグを待つ。何ともできない希美は、「今度ね」と言い去ってしまう。今はまだ、大好きが言えない。


別の日。吹部の倉庫内にて、希美と優子と夏紀が話し合っている。ソロどうするの? みぞれと何かあったの? と心配するが、希美はみぞれに対して抱く嫉妬の感情を隠し続けている。

すると、外からユーフォとトランペットの音が聞こえた。リズ第3楽章のソロパートを、久美子と麗奈が吹いているのだ。つい注目し、聴き入ってしまう三人。たまたま、みぞれも同じ場面に遭遇した。楽しそうに演奏する後輩二人を見て、希美は自分が本当に音大へ行きたいのか悩む。水草の黄色い花が咲いている。

ちなみに吹部経験者からすると、他人のソロを練習するのはご法度らしい。声優で例えるなら、他の人のセリフを練習しているようなもの。喧嘩を売っていると捉えかねないほど挑発的な行為だが、それを咎める者はいない。


生物学室。ビーカーや、試験管などのガラス製品が映り込む。これは画面越しにいる観客の視点であり、まるで付喪神のように成り行きを見守る。またガラスは割れ物注意で繊細なため、自然と空気に張り詰めた緊張感が発生。ちなみに、不規則な試験管ホルダーは番号が互いに素。

ソロについて新山に相談するみぞれ。リズの気持ちを理解できない。「好きな人を、自分から突き放したりなんか、できないから」


一方、希美も自分の気持ちを吐露し始める。「フルートは好きだけど、そもそも私、プロになりたいのかなぁって。仕事にするのと楽器続けたいは同じじゃないし。普通大学に行った方がいいんじゃないかなぁって」

勤めて明るく話す彼女であったが、相談に乗る優子の表情は険しい。「それ、みぞれは知ってるの?」「知らないよ? なんで?」と、希美は無関心を装う。真に受けた優子は怒気を荒げる。「なんで、って……。一緒の大学に行こうって言っといて。なのに、プロになるのは違うからやめます。って何?」

優子を落ち着かせる夏紀。叱られた希美はどんな顔したらいいのか判らず、口元を笑う形に。優子は大人しく座ったものの、続けて彼女を非難する。「1年の時だって、みぞれに黙って部活辞めて。やっぱりやりたくなったから……って戻って来て。どれだけみぞれを振り回したら……!」

熱くなってきた優子を、再び夏紀が止める。その間も希美は笑顔を保とうとするが、笑っていられない。「近くにいるからって何でもかんでもみんな話すわけじゃないもんね」と、夏紀はフォローに徹する。


一方のみぞれ。新山のアドバイスを受け、もし自分が青い鳥の方だったらと考える。

絵本パート。昨日まで二人で幸せに暮らしていたのに、青い鳥は突然リズに別れを告げられる。「あなたは自由になるべきよ。そのしなやかな翼で、どこまでも高く飛べるはず」と。だが、少女は受け入れられない。どうして別れなければいけないのか、リズは問いに答える。

「わたしは貴女を閉じ込める鳥籠だわ。あなたには羽がある。あなたには、どこまでも広がる大きな空があるの。あなたから、その翼を奪ってはいけないわ。さぁここから出て、高く遠くはばたいて。その、美しいあなたの姿を、どうか私に見送らせて」

「これが私の愛の在り方。愛しているわ」

リズではなく、青い鳥の気持ちを想像した途端、みぞれは手に取るように理解し始めた。「リズの選択を青い鳥は止められない。だって青い鳥はリズのことが大好きだから。悲しくても、飛び立つしか、ない」

「青い鳥は不幸だった?」と聞く新山。みぞれは興奮気味に「わからない。でもリズに幸せになってほしいって思ってる。それだけは、きっと本当」と答えた。

「それが、青い鳥の愛の在り方。飛び立つしか、ない」


倉庫で話し合う希美たち。今まで隠していた、誰にも言えなかった本音、みぞれに対しての劣等感を打ち明ける。自分も進路希望調査書を白紙で出したのに、新山先生が声をかけたのはみぞれだけだった。

みぞれと希美。卵が割れたかのように、両断される画面。どちらもみぞれをリズに、青い鳥を希美に重ねていた。そして二人同時に「でも今はーー」と言うが、その後のセリフは口パクとなり聞こえない。台本のト書きには「わたしが」「みぞれが」とある。


絵本パート。画面いっぱいから、たくさんの青い鳥が一斉に飛び立つ。まるで凸凹の画用紙に、色鉛筆で着色したかのような青空。空を見上げたリズは、舞い降りてくる青い羽根を拾い、いつまでも少女のことを想う。

「私があの子を愛するあまり、美しい翼を奪ってしまった。あの子はどこまでも飛んで行けるのに……。ああ、神様……どうして私に」

「籠の開け方を、教えたのですか?」

鳥籠である学校から、外の世界を眺める希美。藤棚に座る彼女の姿と夕日は、額縁に入れて飾っておきたいくらいの美しい風景だった。


9.本音
次の日。音楽室での全体練習。みぞれの方から第3楽章の通し演奏を提案する。驚きながらも、嬉しそうに了承する滝先生。さっそく始める。

みぞれが吹くオーボエの音は、まるで全員を導くかのような力強さに満ち溢れていた。おかげでメンバーのポテンシャルが引き出され、いつも以上の緊迫感を持った合奏となる。

だからこそソロ、オーボエとフルートの掛け合いにて、実力差がはっきりと明らかになってしまう。感情が乗っていくみぞれに対し、希美はかろうじてついて行くのがやっとだ。みぞれが希美の手から離れた瞬間である。

演奏が盛り上がり白熱する中、希美は踏ん張りが効かなくなり手を下ろしてしまう。一粒の涙が落ちる。彼女は震えながらも、最後の気力を振り絞ってフルートを吹く。

みぞれのラストスパート。希美から貰った青い羽根をお守りに、学校の外へとオーボエの音を響かせる。デカルコマニーで描かれた青い鳥が飛び立った。


演奏後、部員たちから囲まれて賞賛されるみぞれ。だが、彼女は希美のことが気になっており、探していると向かいの生物学室にいるのを見つけた。

生物学室。ガラス棚の剥製。同じくビーカー。息が止まったみたいなコンセント。同じくファイルのカットから、放心状態の希美へ。そこへみぞれが入って来ると、慌てて彼女は涙を拭った。笑顔を取り繕う。だが、その口から出た言葉は自虐だった。あくまで自分を守る。

「みぞれさ、今まで手加減してたんだね。私のレベルに合わせてたから、今まで全力が出せなかったんだ」「みぞれ昔っからうまいもん。ずるいよ、みぞれは。ほんと、ずるい」

みぞれには、希美の言っていることが分からない。その間にも彼女の自虐はエスカレートし、どんどん惨めな言葉を選ぶが、本当は早く否定してほしかった。すごいと言ってほしいから、言葉を止められない。

しかし、理解が追いつかないみぞれは、続く希美の言葉を強制的に止めた。「聞いて!希美は、いつも勝手。1年生の時だって勝手に辞めた。私に黙って……」

「昔のことでしょ?」と言う希美を一蹴し、さらにみぞれは思いの丈をぶつける。「昔じゃない。私にとってはずっと今。私は、ずっと希美を追いかけてきた。希美に見放されたくなくて楽器も続けてきた。私のいちばんはずっと希美。希美と一緒にいたいからオーボエも頑張った」

「希美といられれば何だっていい」

「そんな大げさなこと言わないでよ」と、聞き流す希美。だが、みぞれは自分の気持ちを偽らない。「大げさじゃない。全部ほんと。希美が、私の全てなの」

「私、みぞれが思っているような人間じゃないよ? むしろ軽蔑されるべき」と希美。その言葉を受けてもみぞれは首を振る。「希美は、私の特別。希美にとって何でもなくても、私には全部、全部特別……!」

なんでそんなに言ってくれるのか分からない希美が苦笑していると、みぞれは両手を広げて大好きのハグを要求する。ハグはフグだ。両手が棘で、言葉が毒。希美はお互いを毒し、毒されるのを恐れていた。戸惑う希美をよそに、みぞれは強引に抱きつく。気圧される希美だったが、手を優しく彼女の腰へと回す。

感情が止めどなく流れるみぞれ。「希美がいなかったら、何にもなかった。楽器だってやってない。希美が、声かけてくれて、友達になってくれて、優しくしてくれて、嬉しかった」

「……ごめん、それよく覚えてないんだよ……」と、希美はトボけようとする。どれだけ褒めても謙遜する彼女に、みぞれは自分の想いを伝えたい。

「希美の笑い声が好き。希美の話し方が好き。希美の足音が好き。希美の髪が好き。希美の、希美の全部」

「みぞれのオーボエが好き」

希美は、フルートの実力を認めてほしかった。自分にも才能があると信じたかったが、みぞれは希美のフルートが好きとは言ってくれない。

無言になる二人。お互い、ほしい言葉がかすらない。

しばらくして、希美は何か糸切れて笑ってしまう。笑いながら気持ちを整理し、力が抜けるように息を吐く。そしてみぞれに「ありがとう」と告げ、生物学室を出て行った。

この「ありがとう」は感謝としてのサンキューではなく、もうけっこうですのノーサンキューのニュアンスらしい。ほしい言葉が貰えないのなら、もう諦めるしかない。そう割り切った希美は、特別な才能について意固地になるのを止めた。

廊下を歩く希美。中学時代、みぞれを吹部に誘ったファーストコンタクトを思い出し、少し顔がほころぶ。まるで雛のようだった彼女が成長して嬉しい。肩の荷が下りたように深呼吸し、彼女は歩み続ける。


エンディング

レンズゴースト。画面に円い光の帯が写り込む。太陽の強い光を受け、青空を飛んでいる2羽の鳥。

図書館。またみぞれと図書委員が揉めている。そこへ助けに来た希美が借りた本は、普通大学の入試対策本だった。

みぞれは音楽室へ向かう。対して希美は図書室内を歩く。なびくスカート。音楽室へ入り、オーボエの練習をするみぞれ。図書室の机にて、受験勉強を始める希美。歩み道は違えど、応援している。


青空に飛行機雲。希美は校門前で、みぞれの帰りを待っていた。彼女は嬉しくて小走りで駆け寄る。

希美はみぞれを、学校という名の鳥籠から出す。帰りにどこかへ寄って、何を食べるか相談。自分の意見が言えているみぞれ。だが、なぜか疑問系の「ありがとう?」は変わっていない。

そしてオープニングとは対照的に、希美が先に階段を降りている。ふと振り返った希美は「みぞれのソロ、完璧に支えるから」と言う。今度は自虐ではない。「今は、ちょっと待ってて」と、丁寧に自分の心を解く。

対するみぞれも、オーボエを続けると宣言。音楽をやっていく限り、希美は自分のことを好きでいてくれる。だからもう、本番が来ても怖くない。

「本番、頑張ろう」

二人同時に同じことを言って、みぞれは覚えたてのゲームを使ってみる。

「ハッピーアイスクリーム!」

しかし、そのルールを知らない希美は、みぞれのことが分からない……。単純にアイスが食べたいのかと思う。

互いに素である二人であったが、最後の最後だけ歩調が合う。

不意に振り返る希美。ビックリのみぞれ。

「dis joint」の「dis」が上書きされ、「joint」となる。

ハッピーエンド。



……お疲れ様でした。

本作『リズと青い鳥』のストーリー解説は以上です。引き続き映画評を楽しみたい方は、以下のリンクから戻ってきてください。

よろしくお願いします。


いただいたお金は、映画評を書く資料集めに使います。目指せ3万円。