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泣けるビジネス書 『ファンベース』

この本には、光がある。

道は自分で見つけないといけないけれど、道の先には確かに光がある。
光を、希望を感じる本でした。佐藤 尚之さん著書の『ファンベース』を読んだ感想です。

「コミュニティに関わるなら、ファンベースは絶対読んでおいたほうがいい。」そんな話を何人もから聞いたことがあったので、本の存在は知っていました。でも長らく積読状態でした。

もっと早く読めばよかったと思う気持ちもあるけれど、悩みを抱えている時に読んだからこそ心に深く刺さりました。だから読んだ時期が、今でよかったのかもしれない。カテゴリ的にはビジネス書に入るのですが、読みおわった時には自分でもびっくりするくらいに泣いていました。

泣けるビジネス書ってめずらしいんじゃないですかね。


ファンベースとは?

短期的でマスに向けて行う従来の広告とは違うアプローチ。ファンをベースとし、自社の製品を大事にしてくれるファンを大切にすることで、中長期的な売り上げや価値を伸ばしていく施作です。

詳しくは本書を読んでもらいたいのですが、従来の広告では、メッセージは届けにくくなってきたということから始まり、ファンベース施作の有効性が順序立てて書かれています。つまり、私がやっているコミュニティもファンベースなんですよね。

この本を読んで私は一つ自分の誤りに気づきました。私はコミュニティ=利益率が悪い事業だと思っているし、人にもそう説明します。ただ、このファンベース理論でいけば、中長期的に見れば売り上げは増える。だから、コミュニティ事業は「短期的に見れば」利益率が悪いのであって、中長期で見ればそうとも言い切れないということがわかりました。これは大きな発見でした。


私がやってることは無価値なのでは?

仕事としてコミュニティに向き合うようになって、1年半が経過しました。周りから見れば、「がんばってるね」とか「すごいね」と声をかけてもらえることが多々ありますが、ことコミュニティに関して、私は私自身に何一つ満足していません。むしろ不甲斐なさしか感じていない。

その理由の多くが、コミュニティやコミュニティマネージャーが提供できる価値について、言語化できていなかったからです。特に、コミュニティとは時間がかかるものであり、手離れがよくない。だからこそ、ビジネスで考えると、理解されないことが多々あります。そうなると、利益にならないことをがんばっている自分=無価値であると思えてしまい、自分がやってることに自信を持てなくなりました。

だからこそ、ファンベースの中のこの言葉は、心に光を灯してくれました。

時間がかかるのではない。じっくりと「時間をかけたい」のである。手間がかかるのではない。真摯に丁寧に「手間をかけたい」のである。 手離れが悪いのではない。楽しいから「手を離したくない」のである。効率が悪いのではない。できるだけ長く「労力をかけてつきあいたい」のである。
『ファンベース』より

この考え方、とっても素敵ですよね。私は手間をかけたいし、手を離したくないし、労力をかけてコミュニティとつきあいたい。それを理解してくれる人と歩みたい。


コミュニティ運営で大事にしたい、響く言葉3つ

この本は五章までは、ロジカルに具体的な話が多いのですが、

六章 ファンベースを楽しむ

の章は非常にエモーショナルです。いや、書かれていいる内容は引き続きロジカルなのですが、心に響く箇所が多く、全てのコミュニティマネージャー必読です。私はこの章を読んで涙腺が崩壊しました。読書会をして分かち合いたい気分です。それくらい、さとなおさんは、コミュニティをやっていたら起きること、感じることを全てお見通しだったんですね。その上で、力強く励ましてくれる。辛いなと思うことがあるたびに読み返してます。これからも読み返すでしょう。

引用が多くなって申し訳なく思うのですが、響いた言葉を紹介させてください。


①コミュニティ運営の経験者は少ない、トライアンドエラーを楽しもう

インパクト強く目立って話題化するのが得意な人は、地道で丁寧なコミュニティ運営には向いていないところはある。そして、例えば広告業界は、そういうのを得意とする人材を長く採用してきた。だからコミュニティ運営を敬遠する人が多かったりする。  そもそも、一般的にほとんどの人がコミュニティ運営をやったことがない。経験値のある人が少なすぎるのだ。  それは逆に言うと初心者だらけ、ということでもある。つまり「いろいろ失敗しても恥ずかしくない」ということだ。だからファン・コミュニティの運営などにおいて、いろいろ試行錯誤することは何も恥ずかしいことではない。指導してくれる人がほぼいない状況だからである。トライも、エラーも、楽しもう。

『ファンベース』より

私もそうですが、がっつりコミュニティのお仕事をしている割には経験年数は多くありません。仕事ではなくコミュニティ運営やっていた期間を入れたとしても3年くらいです。

コミュニティ運営自体のノウハウも経験者も少ないんですよね。そんな中でやっているのだから、手探りであって当たり前。失敗を恐れずもっと挑戦しようと思えました。


②ファンベースとは環境づくり、じっくり環境を整え育てよう

ファンベースとは、そういう「環境作り」が主だと考えてほしい。  あなたの周りを見回してみると、そういう「お客さんをお迎えする環境作りが上手かつ得意な人」がいると思う。  一見、人見知り風だけど、いろいろ気配りができて相手の気持ちになれる人。その場が楽しくなるように、裏方的に細やかな動きができる人。実は、つきあいがよい人や社交性がある人より、そういう人のほうがファンベース施策に向いている。

『ファンベース』より

先ほども書いた通り、コミュニティはとにかく時間がかかるんです。コミュニティ運営をやっていると日々の小さなタスクが無数にあります。まるで公園の芝生の水やりのように。誰かがやらないと枯れてしまうから必要だけど、それなりに労力がかかり、しかも気づかれないこと。

しかも本来コミュニティマネージャーの価値はそこではなく、コミュニティの価値を向上するための、施作を考え実行することなんです。とはいえ、日々のタスクも大事で、日々コミュニティを整えているから、居心地のよさを作れるわけです。でもそれってなかなか見えないし、気づかれないし理解されにくい。辛いな、悔しいなと感じたことが何度もあります。

だからこそこの部分が響きました。環境づくりをがんばって何が悪いのだ。気づかれなくても、大事なことだと胸を張って言える。私はじっくりと環境を整える。それも大事なコミュニティマネージャーの価値である。


③キレイゴトを楽しもう

実際にファンベース施策を始めるとわかることだが、なんだかマザー・テレサみたいな気分になることもまた多い。大衆(マス)という塊ではなく、人間ひとりひとりを相手にする分、いろいろなことが起こるのだ。  また、上司から業績への影響を問われたり、日々の数字に現実的に向き合っていると、ファンベースなんか単なるキレイゴトに思えて、空しく思える日もあるかと思う(実際には売上に直結しているのだけどね)。  でも、あえてキレイゴトを言うが、あなたは人生において何を大事にするのかということを試されているとボクは思う。 (中略) キレイゴトを楽しもう。キレイゴトなくして何の人生か、とボクは思う。

『ファンベース』より

誰だって、自分のやっていることに誇りを持ちたいんです。それは私もそう。自分のやっている仕事でビジネスとして寄与できたら嬉しい。というか、そうありたい。それはコミュニティマネージャーとしての私も日々考えていることです。

しかしながら、現実はそう簡単にはいかなくて……。自分の力が及ばないこともあるし、できる限りのことをやっても理解されないこともある。それでいて、コミュニティにおいて公平で中立的な立場でいることも求められる。そんな状況に疲れてしまったこともあります。

だからこそ、ここを読んだとき「なんで全部わかるんだろう」って気持ちとともに泣き崩れました。今もうるっとしてます。

「私がやっていることって意味あるのかな?」 これからもそう感じることがあるかもしれません。でも、意味はあるし、キレイゴトかなと感じてもそれをやりぬくのが役割である。ファンベースを読むことで、ストンと納得できました。


いろいろ愚痴めいたことも書いてしまいましたが、やっぱり私はコミュニティが好きです。これからも関わり続けたいと思う。私はコミュニティでの出会いで人生が変わったから、同じくコミュニティで人生が良くなる人の応援をし続けたいです。コミュニティをもっと好きに、もっと愛していこうと思える本でした。


コミュニティに関わる、全ての人にお勧めします。

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