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通訳者にはなれず挫折した私は、デザインの力を翻訳するライターになった。

中学生の時、通訳をする人になりたいと思っていました。

当時洋楽を聞くことが好きだったので、彼らのインタビューを通訳している人たちを見ては「かっこいいな」と心密かに憧れていました。それから、英語が得意だったので、もしかしたら自分もなれるかもしれないという浅はかな理由もありました。

けれども、高校生になり他のことに興味を持ったので、通訳を志すこと自体を諦めます。英語に関しても、留学させてもらったのにもかかわらず(バナーの写真参照)、努力が足りずに伸び悩む始末。後に結婚し新婚旅行で訪れたハワイでは、「This one please.(指差しジェスチャーつき)」で全ての会話を通したと言ったら英語力のなさが伝わりますでしょうか。以降は特になりたい職業はなかったけど、親の勧めで教員を目指そうかなと考えていました。


40歳になった今、私は通訳者にはなれませんでした。学校の先生にもなれていません。何にもなれず挫折し続けた私ですが、一冊の本の制作を通して変わりました。私は、肩書きでいえば、ライター・編集者ですが、つまりは経営者やクリエイターの言葉の翻訳者だと思っています。

そんな私が、言葉の翻訳者として、生まれて初めて1冊の本作りに携わりました。デザイナーの前田高志さんの著書『勝てるデザイン』です。

『勝てるデザイン』は、デザイナー向けの本ですが、これまで専門的で権威的だと思われていた「デザイン」をデザイナーじゃない人にも伝えるための本でもあります。

このnoteは、企画・執筆など編集協力として本作りに関わった私の目線で綴った『勝てるデザイン』について書いてみます。



2017年春 デザインって、すごくない?


前田さんの出版計画は、2017年に遡ります。

デザインのすごさを初めて知ったのがこの頃です。前田さんのデザイン会社NASUで、広報として働いている今の私からすれば至極当たり前なのですが、当時はまったくデザインのことを知りませんでした。デザインを知らないと言うより、デザイナーを知らなかったの方が正しいかもしれません。35年間グラフィックデザイナーの存在を知らなかったんです。

デザインに触れる機会は、もちろんありました。ただ、会社の名刺や封筒は、印刷会社の人がちょちょちょといい感じにしてくれると思っており、そこの労力を考えたことがなかったんです。なんかテンプレートがあってそこに当てはめているのだろうと。今思えば、死ぬほど失礼な話ですよね。日本中のグラフィックデザイナーさんに謝りたいです。

それに会社の年賀状とか、社内のポスター、社員証、ちょっとしたリーフレットなどは、めちゃくちゃ不遜な話ですが私や他の事務員がエクセルとかパワーポイントで作っていました。今見返しても全然良くないけど、そもそもいいものを知らないし、これ以上よくなる選択肢も持ってないから、それでいいと思ってました。会社の経営陣も同様の意見でした。

でもこういう中小企業って、死ぬほど多いんじゃないでしょうか?

この程度のデザインリテラシーで、ブロガーとなった私は2016年に前田さんにブログのコミュニティで出会います。前田さんは、人生で初めて出会ったデザイナーです。デザイナーさんと聞いて、ふぅんと思ったけど、多分あんまり仕事の内容を理解してなかったはず。

当時の私のブログは雑記で、少し家族の話が多め。だからブログのタイトルは「はらぺこかぞく」で、ビオレママのアイコンジェネレーターの画像を作っていました。色などはカスタマイズしていましたし、普通に満足していました。ただ、前田さん曰く「もっとよくできるよ」とのこと。そのもっとよくできるの意味がわからなかったので、お願いしたところ予想を超えるもっと良くなるが。

これが

こうなった!

何これ!すごくない? 

「これってイラストを書いてくださったのですか?」
「私以外家族に会ったことないのに、激似なんですけど、なんでわかるんですか?」 
「背景は肉ですか? つまり肉ってことは、はらぺこに合わせてる?」

 などなど前田さんに質問責めにした記憶があります。もっとよくなるってこういうことかと分かったからです。そこからは、ビジュアルに関しては、前田さんのおすすめを全部取り入れようと決めました。ブログのヘッダも変えた方がたくさん読まれたし、プロフィール写真も撮影を依頼したら仕事が増えました。

前田さんに撮影してもらいました!

名刺もそう。

個人事業主時代の名刺、めちゃよくない!?

これまでの社会人人生でも、名刺交換をすることはそれなりにありましたが、名刺交換でこんなに会話が生まれたことはありませんでした。これは、名刺のデザインがそうさせたんだと思います。



2017年冬 デザインの素晴らしさを一刻も早く世の中に伝えたい


デザインってすごい。

前田さんとの一連のやりとりを経て、そう感じるようになりました。私のいいところでもあり、めんどくさいところは、自分がいいと感じたものは広く知らせたくなるところです。


「この素晴らしさを一刻も早く世の中に知らせないと人類の損失である!」

そう思ったので、

「前田さんは本を出した方がいいですよ!」

根拠のないお勧めを繰り返しするようになりました。いや、100パーセント純粋にお勧めだけで言ったわけではない。

私は、当時ブックライティングの仕事をしたいと考えていました。いろいろアプローチもしていたけど、実績0だし、実力もまだまだ。なんせWEB以外で執筆をしたことがなかった状態ですし、そもそもどうすればブックライターの仕事をもらえるのかもわからなかった。だからこそ、もしも前田さんが出版することがあれば、日頃から発信の仕事をお手伝いをしている私もなんらかで関われたらいいなという気持ちがあったことは正直に告白します。



2018年初夏 人生初の出版企画書


2018年には、前田さんの本の出版企画書を作りました。さらっと書きましたが、人生初の出版企画書で、右も左もわからなかったから、ググりまくって考えました。

今見返すと、ただデザインの素晴らしさを伝えたいだけで、前田さんらしさが少ないですね。考えが浅い部分もあって恥ずかしい…。前田さんも「他のデザイナーもできてることだからなぁ」と言っていた記憶があります。ただ、このnoteを書くにあたり久しぶりに読み返したところ「デザインの民主化」「デザインはデザイナーだけの特権ではない」などは、後の勝てるデザインにもつながってますね。

前田さんがロゴを作った関係で、WORDSの編集者 竹村俊助さんにも企画書を見ていただく機会があったのですが「この内容をnoteに書いてどれだけ反応があるか? を試してみた方がいい」とのことでした。

それから、2018年の夏頃には、前田さん個人に出版社さんからアプローチがありました。結果的に出版には至りませんでしたが、前田さんも私も本を出してみたい熱が高まった時期でした。



2018年秋、2019年春 『マエボン』『NASU本』インディーズ出版で手応えを感じる

出版したい熱は、オンラインコミュニティ前田デザイン室での出版にもつながります。前田デザイン室で2018年の秋に作った雑誌『マエボン』や2019年の春に作った書籍『NASU本 前田高志のデザイン』の制作を通してです。

私はこの2つの本の編集長を務めました。と言っても、本はおろか、紙の仕事をしたことが一切なかったので、メンバーのみなさんに助けてもらいながら、なんとか形になりました。

『マエボン』の発売日のイベントにて

嬉しいことに、この2冊はそれなりに反響がありました。まず『マエボン』は、オンラインサロン出版の先駆けとして、青山ブックセンター本店や銀座 蔦屋書店、代官山 蔦屋書店、紀伊國屋書店 梅田本店、梅田 蔦屋書店などなど大手の書店でも取り扱っていただいたという異例の事態に。

有名なビジネス書の隣に『マエボン』が並ぶ異常事態

続いての『NASU本』は、内容はもちろんですが茄子型の形状がユニークだったためデザイン雑誌『アイデア』や『ブックデザイン365』でも紹介いただきました。

そういえば、『NASU本』の中身は『勝てるデザイン』に通づるものが大きく、プロトタイプと言ってもいいかもしれません。

コミュニティでのインディーズ出版では、それなりにインパクトを残せた。やっぱり次はメジャー、つまり商業出版を目指したい。と考えるようになります。前田さんはもちろんですが、私のほうが前田さん以上に商業出版に憧れていました。この時期の前田さんは「インディーズ出版でインパクト出せたし、出版してまで世の中に伝えたいことはない」とも言っていいた気がします。でも私は、どうしても本を作る仕事がしたかった。

仕事で本を作りたい気持ちがあまりにも強く、でも辿り着けない悔しさを抱えていたので、前田デザイン室でこんな企画を提案しました。前田さんの講演レポートを書籍風の文体に変えたマガジン「前田が行く」です。

マガジンの中の記事は、前田デザイン室のメンバーで執筆したもので、それなりにバズった記事も生まれました。



2019年夏 「綾さんが僕を編集してみて」

本を出したい気持ちはある。(特に私)でもこれと言った企画がない。この時、私はフリーランスのライターだったので、実は前田さんの本以外の挑戦もしていました。でも結果は散々でした。個人で本作りのライティングを少し受けることができたものの、諸事情で執筆ページは当初の予定より大幅に少なくなったり、テストライティングを受けたものの連続で落選したり。

箸にも棒にもかからないってことは、要するに私はブックライターの仕事は向いていないのかもしれない。この方向で努力しても無駄なのかもしれない。でもやっぱり本を作りたい願望は諦めきれませんでした。

そんなとき、流れを変える出来事が起きました。あるサービスがローンチし、そのイベントの存在をSNSで知りました。そこには各界の著名人の名前が連なっていました。そのことについて前田さんと会話していたとき、前田さんがふと漏らします。

「俺もここに呼ばれたい……、デザインの代表で呼ばれたい。いやぁ、でもデザインの日本代表と言ったら、もっと大御所がいるから僕が呼ばれるには……(ゴニョゴニョ)」

「いや、でも普通の人は、そもそも大御所のことを知らないですよ。それに前田さんはコミュニティとか新しいことをしているから、今までとは違うタイプの新しいデザイナーなんですよ」

「新しいデザイナーって、つまりなんだろう? じゃあ、綾さんが僕を編集してみて」

そんな会話が『勝てるデザイン』の元となる記事を生み出す発端でした。当時の私なりに前田さんのことを書いたnoteがこれです。とはいえ、前田さんが加筆もたくさんしてくださっています。

このnoteは、それなりにバズって(一度記事が消失した憂き目にあいますが)、noteのおすすめにも入るし、noteさんから編集者さんへのお知らせメールにも掲載されたとのこと。『勝てるデザイン』を読んだことがある方ならわかると思いますが、3章に掲載されている「興味を奪え」の元の原稿となっています。

さらにバズったのは「それは、デザイン案ではない」ですね。これは、完全に前田さんの執筆なので私は関わっていません。ただ、このnoteが広く読まれるようになってから、「僕だから伝えられることがある、やっぱり出版だ」と前田さん自身の心境の変化を感じました。



2019年冬 『誰も言わないデザインの話』


もう一度出版を目指そう。

前田さんと共に企画書を作ります。「興味を奪うデザイナー」が前田さんは違うデザイナーであり、「それは、デザイン案ではない」が誰も書かなかったことを書いている。これらを踏まえて、仮タイトルは『誰も言わないデザインの話』でした。

はじめには、前田さんが書きましたが、目次案は私も考えました。すでに前田さんのブログやnoteの執筆の仕事をしていたので、それらの記事を使ったりヒントにできそうな要素がたくさんあったからです。これが実際の出版企画書です。

前田さんは、この年の春、レディオブック株式会社のCEOであるYUGOさんの書籍『やりたくないことはやらなくていい』の装丁を手がけていました。そこで、この書籍の担当編集である幻冬舎の片野さんと知り合います。

そのご縁で、この企画の相談も片野さんにしました。幻冬舎で、デザインの本。しかも前田さんは当時無名の著者。それでも出版できるためには? 片野さんが親身になって相談に乗ってくださった結果…

出版が決まります。2020年2月の話です。やったー!


2020年春 チーム『勝てるデザイン』誕生

こうして、前田さんの書籍企画は動き出しました。

幸運なことに、私はこの書籍に取材・執筆として関わることになりました。2020年の4月からフリーランスのライターではなく、前田さんの会社NASUに入社し、広報とコミュニティの仕事をするようになります。

入社インタビューにて


NASUに入って最初の仕事は、勝てるデザインの原稿の執筆でした。ずっと憧れていいたブックライティングの仕事、しかも尊敬している前田さんの本でそれが実現するだなんて、最高に幸せでした。

とはいえ、どうやって進めていいのかわからなかったのも正直なところです。普段WEBライターの仕事をしている私にとって、原稿とは長くても1万文字でしたから。でも書籍は違います。本にもよりますが、10万文字以上はありますもんね。

片野さんからの指示は「まずは仮の目次に沿って粗くてもいいから原稿を描き切ってみて」とのことでした。そこからは、前田さんに連日取材をする日々でした。取材して原稿にまとめる。足りない箇所はまた取材、その繰り返しでした。

雑ではあるけど一通り書き切ったとき、片野さんより追加で入れたい原稿の概要を伝えると共に私の原稿を細かくチェックしてくれました。後に片野さんが「随分辛辣な赤入れをしてしまったけど…」と言っていたのですが、とんでもない。

今では、私も編集者としてライターさんの原稿をチェックすることもあるのでわかりますが、これってめちゃくちゃ大変なことです。ちなみに私は、事細かく赤入れしたことはあんまりありません。それは優しさではなく、時間と手間を考えてしまうとある程度はお任せして、どうしても直すとしたら自分で直して事後報告することが正直多いんです。だから、私からすれば、手間でしかないのに時間と労力をかけて赤入れしてくださった片野さんには感謝しかありません。

片野さんからの追加取材と執筆が必要な項目の伝え方は、業務的に「〜〜の要素を追加して」という感じではなく、原稿を見た上で足りてない要素をさりげなく聞き出してくれる感じでした。私には見えていない完成形が、まるで片野さんの頭の中にあるかのように感じられたので、驚いたことを覚えています。

ちなみに冒頭の「あの日フェラーリは僕のデザインを愛した」は、長野のザ・サウナで執筆合宿を行ったのですが、朝食での会話がきっかけでした。この原稿を片野さんに提出したとき「書籍の原稿にちゃんとなってますよ。短期間ですごく成長している」と言われて嬉しかった記憶もあります。

2020年夏、ザ・サウナにて執筆合宿

他にもフォントの話や時短の話も追加することになります。前田さん曰く、これらの項目は最初は書きたくなかったそうです。理由は、そんなのデザイナーなら誰でも知ってるし、僕がわざわざ語ることでもない、詳しい人はもっといると。

でも、勝てるデザインは、デザインを広く知ってもらう本だから、今思えば初歩的なことも必用なんですよね。片野さんは、その辺を見据えて目次に入れてくれていたことに後から気が付きました。私は、編集者さんとがっつりお仕事するのが初めてだったので、全てのことが新鮮で刺激的でした。前田さん、片野さん、私。この勝てるデザインチームで何かをやるのがとにかく楽しかったんです。

『勝てるデザイン』は、当初の予定では2020年の11月に発売でした。ただ、この本にはとにかく多くの人が登場します。人が好きで人に囲まれている前田さんらしい。

全員に広報チェックをしていたので、それなりに時間を要してしまい、2021年に発売することになりました。でも、そのおかげで原稿をよりよくする時間が生まれました。


2021年1月 10回以上書き直した原稿

2021年の1月、本作りが佳境に差し掛かかりますが、なかなか完成しない原稿がありました。最後の項目「デザインは、デザイナーだけではない」です。

この原稿は、多分10回以上書き直しましています。何にこだわったのかというと「フィナーレ感」です。映画が終わりエンドロールが流れる前のあの余韻、それをうまく出すために何度も書き直しました。

最初は「あなたはすでにデザインを武器にしている」という見出しでした。種明かしをすると、す本文の後に来る「おわりに」の原稿は先に前田さんが書いていました。書籍に掲載されている内容そのままで、エモーショナルな熱い内容です。映画に例えるなら、おわりには監督のメッセージである。では、本文の最後の項目もフィナーレ感のあるものにしなくては。おわりにむけて続くような、でも湿っぽいものではなく、未来にむけて希望を感じる終わり方がいい。イメージはありました。でも当初の原稿はそれを伝えられていませんでした。

最初の原稿では、デザインの力を信じで活かしてきた私の話と、とあるクライアントさんのエピソードで構成されていました。デザインをすでにしているという実例の意味で書いたのだけど、内容に広がりがないし、私が出すぎること関しては身内褒めにすぎないと。片野さんはやんわりと、でも決してOKを出さなかったことに感謝しています。

そこから、前田さんと話し合い、幾度となく書き直しました。何を伝えたいのか? 話を聞いた上で出てきた言葉が「デザインはデザイナーだけのものではない」です。


デザインと非デザイナーの橋渡しの本

「デザインはデザイナーだけのものではない」この姿勢は、前田さんとの仕事のやりとりでも表れています。前田さんと仕事をするまでは、私はライターだから文章だけ書けばいいと思っていました。でも前田さんは違いました。

ある時は、取材場所を探している時相談したら「どういう記事にしたいの?」と聞かれました。それは「カメラマンさんの考えることでは?」 遠慮からそう言いました。でも「記事を作るライターならトータルで考えた方がいいし、こうしたいという考えはくらいは持つべきでは?」 と言われたとき、ステージが一つ上がりました。決して悪気はないけど、自分の職務範囲や限界を勝手に決めていたよなぁと。

「爽やかな雰囲気ですかね」と苦し紛れに答えたら、「じゃあそういうイメージで部屋を選べばいいじゃない」と言われました。当たり前すぎる話ですが、そういう思考すらありませんでした。バナーも写真も、自分でする、できるは別としてこうありたいのイメージは職種関係なく持つべきが前田さんの考え方で、そのおかげで視野が広がり視座が引き上げられました。

この本を読んでいただければわかると思いますが、デザインをもっと広義で解釈しています。

デザインとは、「可能性や選択肢を増やし、その中から最適なものを選び取る」という行為の繰り返しによって成り立っています。
服を買う時
家具を買う時
友達にプレゼントを贈る時……
たいていは、友達のことを考え、たくさんの可能性を考慮しその中から最大効果を発揮する最適なものを選びますよね。
それは完全に「デザイン」と言えます。
そうなんです。デザインってデザイナーが表面上を美しく、かっこよくしたりするものではありません
もっと日常にも潜んでいます。デザイナーじゃないあなたも、生きている中で知らず知らずのうちにデザインしています

『勝てるデザイン』より

デザインは、誰でもやっていいし、すでにやっている。あなたもわたしも。

それから、デザイナーと非デザイナーとか関係なく、デザインの力を使うことであなたの人生をもっとよくできる。これこそが、デザインの力で人生が変わった私から『勝てるデザイン』で伝えたかったメッセージです。

デザイナーか、デザイナーでないか、は関係ない。
デザイナだけで作るのではなく、デザインの力を必要としている人とともに作り上げていく。
「勝てるデザイン」はデザイナーだけでは実現できないのです。

『勝てるデザイン』より


2021年3月 言葉の翻訳者として、わかりあう幸せ


こうして2021年3月17日『勝てるデザイン』は、幻冬舎さんより出版されました。

発売日は、アイコンを変えたり、前田さんがnoteを出したり、クラブハウスで宣伝したり、イベントをしたり。できる限りの努力を最大限にしました。その甲斐あって、現在4刷の重版となっています。

この本で私ができたことは、編集ではありません。強いて言うなら企画とライティングですが、まだまだ未熟で、編集の片野さんと前田さんにたくさんお世話になりました。でも前田さんの言っていることをわかりやすく伝える=翻訳はできていたと思います。

冒頭の話に戻りますが、私がなぜ通訳に憧れたのか? 今ならわかる気がします。私の喜びは、人のことをわかること、そして自分のことをわかってもらうこと。そう、わかりあうことに何よりもの喜びを感じているんです。

編集者の箕輪さんが以前「紙は一冊作るのに1年以上かけます。そうやって長い時間をかけて築かれていっく著者との関係性は必然的に太くなる」と言っていました。私が望んでいたことはこれです。紙の本を作る行為そのものよりも(もちろん本を作るのも好きです!)一つのものをじっくりと時間をかけて作り上げる行為が最大の幸せなんだなと。

『勝てるデザイン』の制作を通して、それを実感しました。私が前田さんの言葉を翻訳し、言葉を紡ぐ。前田さんが、らしさを加える。それを片野さんが洗練したものにしてくれる。このやりとりは刺激的なのに、居心地がよかったです。

『勝てるデザイン』発売前日のイベントにて

余談なんですが2021年の2月から3月、30年に一度の仕事運が訪れると信頼している占い師さんに言われていました。この期間といえば『勝てるデザイン』の発売日。ああ、これがラッキーな仕事運だったんだとすぐ理解しました。

正直に告白すると、そのあとちょっとだけ「30年に1度の運気を人の本で使ってしまった」と思ってしまいました。でもすぐにそんな考えは吹き飛びました。だって翻訳者とは、翻訳する人がいて、その人に選ばれてはじめて成立する仕事ですから。


前田さん、熱意しかなかった私を本作りのパートナーに選んでくれて、ありがとうございました。

片野さん、未熟さゆえ手間をたくさんかけてしまったにもかかわらず、根気よく向き合っていただき、ありがとうございました。


私は通訳者にはなれませんでした。
教員にもなれませんでした。
いわゆるライターともちょっと違う。

すごいと言いたいのではなく、むしろ逆でライターになりきれてないとよく感じるから。コミュニティマネージャーの肩書きで仕事もしているけど、これもなりきれてないとよく感じる。

挫折し続け、何者にもなれていないけれど、「言葉の翻訳者」というたった一つの役割に辿り着けました。

その答えが『勝てるデザイン』の本に詰まっています。願わくば、この本がかつての私のようにデザインを知らない、デザインに興味がない人の手にもたくさん行き渡り、その人たち全てがデザインの力で勝てますように。


『勝てるデザイン』の編集協力者目線から見た、アナザーストーリーはここまでです。お読みいただきありがとうございました。




さいごに

『勝てるデザイン』は、読者が選ぶビジネス書グランプリ2022のリベラルアーツ部門にノミネートされています。

作っている立場の人間が「いい本です」というのは当たり前の話ですが、でもやっぱりいい本なんです。掛け値なしで言い切れます。

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